きょうのいっきはもりにすすんでみた猫たちでしたが、めのまえでおこっているできごとにはただただとまどうばかり。
いったいなにがおこっているのかというと――




ことのはじまりは、いちばんまえをあるいていた猫がきゅうにたちどまったことからでした。
なにかきになるのか、みみをぴくぴくうごかしながらしきりにあたりをみまわします。


「どうした？何かあったのか？」


ししょーがやってきて猫にたずねます。
すると猫はひとさしゆびをくちもとにあてました。なにかがききとろうとしているのかしずかにしてほしいようです。
すこしおくれてセバスチャンもやってきましたが、猫のおねがいにきづいたのかだまったままです。
ししょーもだまってそれにしたがい、みみをすませてみます――が、きこえるのはかぜときぎのざわめきばかり。


「何も聞こえねェぞ？」


『ん…たしかにきこえたはずなのです…』


なにがだよ、とししょーがたずねようとした、そのとき。
ふたたび猫のみみがぴくりとはんのうし――そのままとことこあるきだしました。


「おい、待てって！！」


あわてて猫をおいかけるししょー。
セバスチャンもそれにつづきます。


どんどんさきへいく猫でしたが、なんどかとちゅうでたちどまってはみみをすませます。
そしてまたあるきだすのくりかえし。
だんだんとこえにちかづいているようです。

もしかして、まえに猫のようすがおかしかったときのよぶこえといっしょなのだろうか、ししょーはそうかんがえました。
しかしそのかんがえはどうやらはずれのようです。
だいぶすすんだころ、わずかにですがようやくこえらしきものがきこえてきたようなきがしました。

しかもどこかできいたような――

それにきづいたとき、猫のあるくスピードはだんだんとはやくなっていき、やがてかけだしていきました。


もりのおく。
そこにはいかにもあやしいかんじのたてものがたっています。

そのまえには、とおせんぼするようにたちふさがるももいろのかみのおねえさん。
それにたちむかうようににらみあう、どこかでみたことのあるきつねさん。
そして――


「……？！　ロク君！　どうしてこんなところに？！」


いつも猫にやさしくしてくれる、くろいおおかみのおねえさん。





『…セリィ、おねえさん？』

小さくため息を漏らした。

紙とペンを受け取ると、サラサラと名前を書いてみた。

フルネームを書こうとしたが、途中でイライラしてきてサインを破り捨ててしまった。

なんだかすごく鼻息が荒くなっている。

同じか、似た世界の人だろうかと、首を傾げ。

ふかふかの暖かな手に包まれれば、僅かに目を細めて。
それからあ、と声を。

なにがおこっているのか、まだよくのみこめていないようです。

ぐったりしたようすのあいてのおねえさんをみつめています。

どこからどう見ても、くし形のこんがり揚がったフライドポテトだ。