「なあぁんでオレの日誌を勝手に読むんだよっ！」


戦闘後。
ねこっぱちに甲斐甲斐しく絆創膏を貼られたり軟膏を塗られたりしながら、九は頬を膨らませた。

「イチジクの日誌じゃなくて営業部の日誌なんですけど。」
「うるせぇ！オレが書いた日誌に、オマエ、また落書きしただろーっ！」
「あれは、落書きじゃないでしょ！ボクが補足説明したんだよ！(*˘︶˘*)」

偉そうに胸を張りながらも、ぺたぺたと絆創膏を貼る手際がよい。
右腕の処置が終わって、九は左腕を差し出す。

「オレが書いた文章に線とかひいてただろ！」
「イチジクが消し忘れたのかなと思って。」
「消し忘れてねーよっ！大事なところだったじゃねーか、ちんちくりん！」
「そうかなぁ、その割には途中で終わってたじゃない。」
「ちゃんと読んでるんじゃないか！」
「そりゃ読まないと補足できないでしょ。(*˘︶˘*)」

赤面して噛みつかんばかりの九に、当然のていでねこっぱちが言う。

「覗き見しやがって・・・変態ねこ！」
「ちょっとー！ボクは変態じゃないよ！」
「じゃあ勝手に覗くなよ！」
「変態とは、動物の正常な生育過程において形態を変えることを表すってMAKAIPEDIAには書いてあるｎ」
「それはもう昨日聞いたよ、阿呆！」
「わかってるなら二度も説明させないでよね。」

足の擦り傷に軟膏を塗りながらねこっぱちが肩を竦めれば、九の眉間のしわがますます深くなる。

「じゃー・・・えーと・・・そうだ、スケベ！オマエなんかスケベだ！」
「はぁ？！」

一瞬、軟膏を塗る手を止める。

「スケベネコウモリ！バーカバーカ！」

何故か勝ち誇ったように言う九に、ねこっぱちは深いため息をつく。

「やれやれ・・・イチジクは相変わらず子供みたいだね。」
「何だとスケベネコウモリの分際で！」

むっとする九をねこっぱちは「あのねぇ」と諭す。

「男は皆スケベなものです！(*˘︶˘*)」

イチジクは鼻先に突き付けられた指を乱暴に振り払う。

「ぬぁぁぁにが男だ！ちんちくりんのでこっぱちのくせに妙な開き直り方しやがって・・・」
「うんうん、わかるよ〜。まぁ、確かにボクくらい可愛いとスケベとは無縁に見えるよね。その気持ち、すごくわかるよ。(*˘︶˘*)」

小馬鹿にした九を全く意に介していないらしい。
九は、ますますあきれた表情になってしまう。

「スケベなのと可愛いのは関係ないだろ。つーか、一言も可愛いって言ってないだろ。」
「でもね、イチジク。いくら可愛かろうが素敵だろうがデキル営業マンだろうが、男は誰しもスケベな狼さんの一面があるんです。(*˘︶˘*)」

腰に手を当てて偉そうに述べる。
駄猫蝙蝠の分際で狼とか言うな、と九が毒づくが、聞いていないようだ。

「九郎とか勝雄とかもさ、イチジクってば、パーティメンバーだからすぐ油断しそうで不安だよねぇ・・・。」
「おい、何の話だ？！」
「まぁでも、ボクはとても可愛いしね・・・うん、大丈夫かな！(*˘︶˘*)」
「だから何の話なんだよーっ！！！」

九のいらいらがマックスを迎える。

「つまり、イチジクだけでは危なっかしいからボクが傍にいたほうがいいし、日誌も補足するのが当たり前って話。」
「・・・・・・まったくそういう話じゃなかった。オレは不愉快だ。もう、オマエとは話をしない！」

苦虫を噛んだような顔の九を見て、ねこっぱちは若干肩をすくめる。

「よし、じゃあ、丸く収まったところで、鍋パーティの具材探しにいこっか！イチジク何食べたい？」
「全然収まってねーだろ、って言うか、オマエとは話さないって言ってんだろ！」
「ボクはさ、お魚とかいいと思うんだけどどうかな〜？」
「しらねーよ！ってか、話さないって言ってんだろ！聞けよ！」



その後も鍋の具材について語るねこっぱちと、オマエとは話さないという九の押し問答が30分ほど続いたという。