目が覚めると、薄暗い列車の中にいた。

私はたった一人で、列車にしては大きめの椅子に深々と座っていた。
見渡すと全ての窓に、赤茶けたカーテンがかかっていた。
そういえば、何かするべきことがあった気がする。
―――に行くのに、この電車では間に合わない。

しばらくして列車が止まったから降りてみると、
昔どこかで見たことのある、けれど少しだけ違う駅の景色だった。
何をしにどこに向かっているのかとんと思い出せない。
けれどあの畦道を行けば大丈夫。それだけは分かっていた。

雨に濡れた道を歩く。左手には大きな土手が見える。
右手には古びた民家があって、お婆さんが玄関の前でしゃがんでいた。
さらに行くと、道端に割れた硝子製の瓶が。また進んでモックのゴーグルが。
そういえば列車の中にトランクを忘れてきたような。別にいいけれど。

そうして何となく歩いていると、一瞬だけマルムベリィの顔が視界一杯に見えて、
目を瞑ったら昔通っていた学校の、どこかの水中にいた。

私は水底から、水面近くで人々が泳いでいるのをぼうっと見ていた。
周りは白い石膏の床と壁で覆われていて、とても静かだった。
少しだけ泳いでみたが、進んだ先にすぐ壁があって思うようにいかない。
諦めて背中に床をつけて、深呼吸をした。休むにはちょうどいい場所だった。
徐々に辺りが暗くなって、私は夢の奥底に沈んでいった。

ベアトリスは近づいて、そっと頬に触れてくる。