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レイヤ・センドウ

山奥で隠遁していた錬金術師。
ユカラとマグノリアの兄でサクラの師匠。
とある事情であと1年持つかもたないかの命。

サクラとのデートで浮かれているようだ。
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そうこうしているうちに、すこしづつ日が沈み、屋台が出たりしはじめた。

「なかなか、面白い衣装の人間もいるな。…全然関係ない衣装の人間もいるが…」

なんだか向こうの方でなしがどうとか叫んでいる黄色い着ぐるみの仮装が居たが、華麗に見なかったことにした。

「個性的な人が多いですね。あたしはやっぱりちょっとありきたりで地味でしょうか？」

「そんなわけがあるか。サクラが１番良いに決まっている。」

…つるっと普通に口から出てしまったが、何を恥ずかしい事を口走っているのだ！俺様は！？

「いや、サクラの衣装がこう、サクラに１番映えているという意味でだな。」

「えっ…！？あ、な、なるほど…一番を選べたのなら、良かったです…えへ。」

なんとか誤魔化せたようだ…誤魔化せたのか？誤魔化せた事にしておく。

「そ、その通りだな。ほら、屋台が出ているぞ。何か食いたいものなど無いか？今日はデートに誘ったのだ。奢ってやるぞ。ありがたく思え。」

「デ……じゃあ、チョコバナナとか…」

何故か顔を赤らめたサクラが小声でチョコバナナを催促してくる。
…そんなにチョコバナナが食いたかったのか？

「ふむ、チョコバナナか。わかった、買ってやろう。親父、チョコバナナ２本だ。」

チョコバナナを屋台の親父から買い、1本をサクラに渡す。

「ありがとうございます。…はむっ。美味しいです、えへへ。色々あるけどこういうところにくるとつい甘いものを選んじゃうんです。」

凄く美味しそうにチョコバナナを食べるサクラ。
よっぽどチョコバナナが食いたかったのか。買ったかいがあるな。

「美味そうに食べるものだな。」

そして、自分のチョコバナナを一口食べ…自分が甘いものがあまり得意ではなかったことを思い出す。
…よし、サクラにもう1本食べて貰おう。

「…サクラ、どうだ。食べかけだが、もう１本いるか？」

「え？でもそれはレイヤ先生の…あ、もしかして甘いのあまりお好きではないです？
それだったら遠慮なくいただいちゃいます。」

「う、うむ。ノリで買ってしまったが、そんなに得意ではないのだ。よろしく頼む。」

「お任せ下さいっ。………ん、美味しいです。」

何故かサクラが一瞬躊躇したが、やはり食べかけはまずかっただろうか？
だが、美味しいと言っているのだしあまり気にしない事にする。

「ん、そろそろ何かパレードがはじまるようだぞ？」

「パレードですか！？わぁ、すごく楽しみです！王国のパレードもとても豪華で良かったんですよ。」

さすがに、王国のパレードと比べてやるなよと雑談している間に、ハロウィンのパレードがはじまった。
仮装した人や馬に乗った人がランプを持って通って行く。
ハロウィンだけあって、普通のパレードとは少し違った趣だ。

「わぁ…ハロウィンだからか、音楽もちょっとムードが違って不思議な感じですね…！」

瞳を輝かせながらパレードに見入るサクラ。
錬金術以外でもこんな顔をするのだな、とふと思った。

「…楽しそうだな。やはり、錬金術以外でも楽しそうな顔をするのだな。」

「え？やだ、当たり前ですよ、ふふっ。錬金術以外にだって楽しいこと好きなこと沢山ありますもの。」

「それはそうだな。だが、こう、なかなかデート場所というと思いつかなくてな…サクラとは錬金術の話ばかりしていた気がするから、だが喜んで貰えたなら考えたかいがあったな。」

結局、一晩徹夜で考えたからな。徹夜したかいがあったというものだ。

「錬金術の話だってあたしは嬉しいですよ？話題を共通できるってことだけで、嬉しいんです。
勿論こうして関係ない場所に連れてきてもらえるのも、とても嬉しいです…。」

「そ、そうか。…錬金術の話なら、部屋でもできるからな。今度からは、関係ない場所にもできるだけ連れて来てやろう。ありがたく思え。…そろそろ花火のようだ。」

このパレードは最後に季節外れだが花火を盛大に打ち上げるらしい。

「はい…期待しちゃいます。花火はどの辺からあが…」

サクラがそこまで言った時に、ドーン！と花火があがり夜空に大輪の花が咲いた。

「…綺麗」

「…そうだな。この季節だと空気が澄んで居て、より花火が映えるな。」

ふと、周りを見ていると周りのカップルらしき男女が抱き合ったりこう、なんだりしているのが見える。

（そこよ！そこで抱きしめるのよ！）

という、兵庫の咆哮が聞こえた気がした。

「…サクラ。」

それに従ったわけではないが、自然に、サクラを抱きしめていた。

「…っ」

サクラはびくりと身体を震わせたが、抵抗はしてこなかった。

「こ、こういうものなのだろう？デートというのは。兵庫が言っていた。…気がする。」

「………あたしの勘違いじゃなく、これがレイヤ先生の気持ちって思っても…いいんでしょうか？」

サクラが抱きしめられながら、確かめるように聞いて来た。
俺様の答えは、１つしかない。

「何を勘違いしてるのかは知らんが、サクラを抱きしめたいと思ったから抱きしめたのだ。今、抱きしめたかった。」

「…嬉しいです。」

サクラも、そっと俺の背に腕を回して来た。
…いかん、柔らかいサクラの身体を抱きしめていると、こう…。

「…こ、これ以上兵庫が言うような事をやると媚薬を飲んだ時のようになりそうだ、きょ、今日はこれぐらいにしてやる、ありがたく思え。」

「はっはい、お手柔らかにお願いします…っ」

ちょうど、花火も終わったようだ。名残惜しいがサクラを腕から離す。
…名残惜しいが。

「…花火も終わったようだな。…か、帰るか。」

「あ…次のデートも、楽しみにしてますね。」

「うむ、任せろ。」

そのまま、手を繋いで宿へと帰路へついた。

俺とサクラの関係が少し変わった…ような気がする、大事な大事な1日だった。