城門に辿り着いた途端、妙な筋肉ダルマと戦うことになってしまった。
この世界の住人と言うのは、人の話を聞かずに強制的に物事を進行をしようとする文化があるのだろうか。
もしそうならこの先少々不安だ。
既に成り行きで、「一揆」とか言う攻城戦に参加することになってしまっている。
入り口でこれでは、この先一体何に巻き込まれるか知れたものではない。

幸い相手は本気で倒しに来ているわけではなかったが、参加することになってしまったのは「一揆」
となれば、兵士だの番人だのが、本気で排除しにかかってくるのだろう。
戦闘は避けられない。

初めての戦闘でコイツの能力は少しだけ見ることができた。
影を伸ばし、相手の影や身体と接触することで、相手の魔力のようなものを削り取ることができる。
そしてそれを削り切ると、その影響は肉体にも及ぶ。

あの筋肉ダルマのラルフは、直接こちらの肉体にダメージを与える技を放ってきた。
致命的なダメージこそなかったが、もし相手が魔力量に長けていれば。
魔力を削り切る前に、こちらの体力が尽きてしまうことも有り得るかも知れない。
アカメのような、力を与えてくれる「エンブリオ」をもっと集めるか、コイツを成長させなければ……。

先ほど二人から貰った、エンブリオの力の源となるもの。ネクターの花弁を取り出し考えこんでいると、
すぐそばに火の玉が現れた。

恐らく火の力を持つエンブリオだろう。
コイツなら、魔力を削ること無く直接相手の肉体にダメージを与える事ができそうだ。
渡りに船とばかりに、火の玉にネクターの花弁をふりかけた。
ついでにアカメにも花弁をふりかけておく。

エンブリオの契約と成長。これでおれに与えられている力も増していくのか。

しかし、こいつら。
実体はないし喋れない。
仲間の居ないままこの先を行くのは力量的な不安もあるが、喋る相手がいないと言うのは辛い。
1人でいると考えこんでしまう。
考えこむとテンションが下がる。
テンションが下がるとモヒカンザコでは居られないのである。

このおれを、モヒカンザコたらしめる存在が必要だ。
ヒャッハーと叫ぶ同類か、
恐怖と暴力で支配してくる素敵なボスか。
はたまた地獄の果てまで追いかけてくる謎の拳法使いか。

考えこんでいる場合ではない。
オオカミの遠吠えと同じように、モヒカンザコも叫ば無くてはならない。
仲間を求めて、まず叫ぶのだ。
ザコは群れなくしてザコたりえないのだから。

しかしその叫びは、どこか物淋しい余韻を残すのだった。