剣の道に生きる、所謂達人と呼ばれる人と比べると、アタシなんて到底及ぶものじゃない。
剣客とか言ってるものの、真剣を握った事はそんなに多くは無い。たぶん、片手で数えられるぐらいしか持ったことはなかったと思う。剣豪の一番弟子、って言うと聞こえは良いけれど、お師匠にはアタシひとりしか弟子がいなかったりするだけで、それで剣の指導を付きっきり教えて貰えるかというと、全然、まったく、これっぽっちも無い。いつも好い加減で、剣も仕事も生活も全部が適当な道楽者だから。
　…少しくらいは教えてくれたっていいじゃない、って思うけど、全然働いてくれないし。悲しいくらい腹が立つけど、そんな剣の師だからまともに指導を受けた試しが無くて、剣の腕前は無かったりするのよね。だから構えも見様見真似、我流で誤摩化すしか出来ないのがアタシのやりかた。狐の子らしく、上手く化かして騙すってね。

　………なんて、我ながら情けないやり方よね。