必殺技が発動！効果増幅Lv.42!!
腕を挫いで十字に固める！
Critical Hit!!
Critical Hit!!
Critical Hit!!
フローラに 1767 のダメージ！

▼フィンの連続行動！ 通常攻撃！
フローラに 122 のダメージ！

　そのようなわけで、フローラは某所へ湯治に来ていた……。

　同行したフィンヴェナハと個室風呂を借り、水着着用の上で湯に浸かる事にしたのだ。

　風呂は元々好きな方、そして珍しい異国型の湯屋。フローラはすっかりこの空間を気に入ってしまった。フィンヴェナハが先に行くと言って湯船を去ってからも、まだまだ堪能するつもりでいる。

　メルンテーゼに来てからは、川の水で身を清めていたのだ。もちろん、それでも汚れは充分に落ちる。しかしこの温かい湯に肩まで沈み、ほぅと息をつく安らぎは水浴びでは得られない。

　そのフィンヴェナハに十字固めをキメられた事は、既に忘れているらしい。

　彼女は不思議な人だ。赤い髪、金の眼。尖った耳は、おそらく人外の証だろう。
　この世界をうろうろと彷徨っていたフローラに、声を掛けてくれた数少ない者の一人。
　初対面で髪や服を物珍しそうに見られても、特段嫌ではなかった。フィンヴェナハの瞳には、相手を真っ直ぐに見つめたいと思う気持ちが宿っている。そう、感じる。
　不慣れな者は、目を逸らしてしまうかもしれない。睨みつけてしまうのかもしれない。しかしフローラはそうはしなかった。彼女と同じ視線を持つ人を、元の世界で幾人か知っていたし―――フローラにはどことなく、フィンヴェナハが親しみ易かった。

　どのあたりが、と問われても明確には表せない。
　ただ、強く凛々しいのに、どこか寄る辺なき陽炎のような気配を、彼女の背に感じる時があるのだ。

　フィンヴェナハが出ていく直前に寄越した言葉を、思い出す。

　……もしも、お前が追い縋る者に、付いて来るなと言われたら―――

　おそらくはその正体が、フローラの感じた親和に繋がるのであろう。だが、彼女の背景を考えるより先に、フローラは自分自身の気持ちを確かめる事を優先した。フィンヴェナハの苦悩は、彼女と彼女の"追い縋る者"の問題だ。そしてフローラには、フローラと……。

　そのまま、湯の中で膝を抱える。
　いつしかフローラは、"考える事"を思い出し始めていた。
　忘れた方が楽だったその作業を続けるのには、意味があった。

　メルンテーゼを去る時が、いつか……必ず来る。

見る間に消沈して行くフローラの姿に、一定の満足を示し。
掴んでいた腕を離して、その動作を自由にしてやろうと。

しかし、その余裕も僅かのこと。
己の出身を聞かれるや、中空へ視線を逃して思案の仕草。

ちらり、視線をフローラへと戻し。
その有様を、上から下へと素早く観察して。