「迷惑かけるわね……」
「構わん。もう慣れた」

「とりあえず、貸し１つだ」
「ありがとう、感謝するわ」


はっ、と目が覚めた。
別れの地から歩き出す前日の、日常の一コマ。
歩き続けた。数十年、数百年か。わずかそれだけの時間が、思い返せば随分と長く、遠く感じる。
時には立ち止まり、悩み、真っ直ぐに歩き続けた道。


「こういう夢を見るときは、ロズから連絡があるとき……」

しかし、この世界にきてからどうしても連絡はとれない。
ゆえに、迷っても仕方ない。考えても仕方ない。連絡がとれるようになれば、向こうから来るのだから。

水を飲み、考えるのをまたやめる。
気が付かない、夢の意味。
獣の、神の感性が、人に重なりつつあるのだと。

地下牢は、くらーいくらいくらい

地下牢は、こわーいこわいこわい

地下牢は、くらーいくらいくらい（以下エンドレス）

唐突に話し掛けられたためか、全身白ずくめの少年は少々慌てるような様子で応えた。

自分の手を添えるようにして差し出すと、その上に色取り取りの球体達がふわふわと漂ってきた。

意味を察したのか、思いっきり引いているようだ。