---白雪の手紙---
そちらはそろそろ葉も色づく頃と存じますが、いかがお過ごしでしょうか。
私白雪は元気です。船が破損し、積み荷も沈んでしまい、辿りついた土地での生活を送っています。
こちらは多様な方々がいて、私程度では普通の人でしかないと言ったところです。
あの村の狭さがよくわかりました。
荷物を何も持ちだせなかったので、当初は無一文で手紙も出せませんでした。
ですがようやくおちついてきたので、こうしてお手紙致します。

私は現在中央の都市の近くにいます。
こちらでは現在、新王の政策が気に入らないと蜂起した人々が活動しています。
新王に反感があるのは私も同じ。
私にもできることを商人の娘らしく手伝ってみようと思います。

そうそう、友人もできました。
エンブリオが幾人かと、なんと異界の方々です。
異界にも私達の地域と似たようなクニがあるそうです。
あ、クニとは私達の村のもっと大きな集団のことらしいです。
「集落」より大きい「村」より大きい「町」より大きい「都市」より大きい「クニ」より大きい「世界」と言った感じなのだそうです。
クニの中には都市も町も村も集落もあるそうです。
とても興味深い。世界がそのままクニであるメルンテーゼにはない概念です。
もう少し何か書きたいところですが、余白もなくなってきました。
ここらで筆をおくことにいたします。
どうか息災で。


----------------

溜息とともに白雪はことりと筆を置く。

何かしていると独り言が多くなりますね、と苦笑し手紙を読み返す。
今日もテントの外からエンブリオたちのわいわいとはしゃぐ声が聞こえる。

笑みがこぼれる。エンブリオと接していると自然とこぼれる。心地よい。

この穏やかさが日常になりつつあることに驚きが少し。嬉しさが大半。
白雪の夜は今日もにぎやかに、しかし穏やかに過ぎていく。
手紙に書いた友人の一人が白雪のテントに突撃するまでは。

六花は　にげだした。

しかし　まわりこまれてしまった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だーんなー！

隣ではヒュフが楽しそうにくるくると踊っている。