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"人ではないもの"たちの寄り合いは、無情な組織ではなかったが、生命を何よりも重視する集団ではなかった。

誰にも見咎められぬ隠遁を望むものには、そのための隠所を。
人間として紛れ込む共存を望むものには、そのための擬装を。
そして、人と相入れず覇を望むものには、そのための説得を。
説得をも無視し、頑なに聞かぬものには、そのための排斥を。
それが、寄り合いの行動方針だった。

多くの人間を死なせ、脅威を与えたわたしが排斥されなかったのは、
ひょっとしたら、わたしの起こした事件が風化しなかった場合に、
犯人として差し出す為に必要だったからかもしれない。

それでも、その後１年が過ぎ２年が過ぎても、
かの大事件を起こした"人ではないもの"を狩り出せという大きな動きは起きず、
わたしは既に、スケープゴートとしての存在価値もなくしつつあると自覚していた。
誰に強制されるでもなく。
ただ庇護され何の役にも経っていないことに、耐えられなくなっていた。

しかし身体能力も頭脳も常人と変わらず、力も碌に扱えないわたしにとって、
出来ることは、身体を張ることくらいだった。
だからわたしは、説得者になった。
相手に在り方を問い、敵対を示されたならば無事では済まないかもしれない、そんな役に。

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何度目かの試行を終え、カメルは嘆息とともに鍬を離す。


エンブリオは主に戦闘によって相手の力を認め、その力の一端を貸す。
そのプロセスに選り好みは基本的に無く、エンブリオは己を打倒しえた相手には等しく力の契機を与える。

とはいえ。

彼らも意志持つ生命体である以上、息が合うか否か、という問題はやはり、存在するのだった。
エンブリオ自身に拒否されているとは感じないが、
波長が合わないとでもいうのだろうか。自分の裡での呼びかけには殆ど反応がなく、

あるいは同行者のように、明確な方向性を持ったアイテムに契約をさせることで、
このような問題は回避できたのかもしれない。

しかし自分には自己の延長とできるほどの愛刀はもはや無く、扱うべき立場にもなかった。

どうしたものか、と考える。
限りあるネクターを節約するため、エンブリオを解約し野に放つという手段もあるが、
カメルたち一揆勢としても、戦力を選り好みしていられる状況ではなかった。
捨てるには惜しいが、扱える方策もない――

いつの間にか、セイレーンの隣に露がいた。

そう、息が合う合わないといった相性はやはり、存在する。
露に、逡巡の気配がある。何か、言いたいことを言い出せずにいるらしい。
内容は容易に想像できた。
直接"試し"を受けてこそいないが、露も一行の一人として戦場にいたのであるから――

戸惑いの気配。
それはすぐに得心と、首が折れんばかりに首をぶんぶんと縦に振る動作になる。

戦うことに賛成した訳ではないものの、
戦場にいる以上は、身を守る力を得ることまで、妨げる訳にもいかず。

カメルは、露のあまりの張り切りぶりに、無茶をするくらいなら提案するのではなかったか、と苦さを噛み締めつつも。

いつも所在なさげにしていた目に当面の目的が灯ったことに、小さく安堵した。

ひらりと身をひるがえし後ずさる。

そういいながらごそごそとカバンをあさる