さて、これからが本番だ。
全くもってこのような幼稚な連中といつまで過ごすか…
利点は捻り出せば存在する。
仲良しこよしの連中と言うのは綺麗事大好きの『絶対正義様』だからな好かん。
己の価値下でしか相手を見ぬ独善は反吐が出る。
俺から言わせて貰えばこの世は全て悪で、悪と評される中に『正義』が掲げられる。
善というのは悪が大多数に認定されて成り立つ。
大衆の中に常に善など有り得ない。
この世界に来て間もない時こそ混乱もしたし情報収集や整理する時間が欲しかったが、
私にとってそろそろこの上っ面パーティと言うのは不要になりつつある。
都合を見て消えるのが、いいか。

そうだな…消える前に色々と遊んでからとしようか…
先ずは、だ。
あのダークエルフの娘で遊ぶとするか…
母親を探して冒険とは、泣かせる話じゃないか。
いい育ちのいい人達が聞いたら涙流して協力してくれるだろうさ

――褐色肌のダークエルフ『フランツィスカ・ゼス＝アルヴィート』

親子揃ってどういう顔をしてくれるか楽しみだな…
そうだな、娘にはとことん堕ちて貰うのもいい
色々と世話になったからな。しっかりとお礼をしなければならない。
感謝を込めてな。

示す先の場所を見て首を捻らせる。
特に抵抗を抱くような店の外観でなければ素直に提案に従うだろう。
むしろ先導するように、……まるでデート、かのような状況を何処か楽しむように。

店員に案内されてテーブル席へと案内されれば、改めて相手の手帳を指差すが――、……相手の手帳に何か、を書くのも申し訳ないかと、そばにおいた鞄から、自分のノートとペンを取り出し。
ぺらぺらとページを捲れば他者とのやりとりにも使った形跡が色々見られるだろう。

文字、ではなくて、主には絵でのやりとりだったが。棒人間とか。ウサギとか。

先ほどと同じく、手帳を見せてほしいというお願いを。改めて。

私は思わず身振り手振りが一緒になって、ついつい大げさに反論してしまう。
そしてひとしきり反論し終わると大きく息を吐いて聞き直した。
　

目をまたたかせて、あらわれた女性のような不思議な存在を見ます。
もぞもぞ、とフードの中でなにかが動きました。

なにかを考える仕草をしますが、裁縫箱を渡されると、手にとって中を確かめはじめました。

待ち針、裁縫用の針、糸切りバサミ。
一つ一つを手にとり、指に乗せて、目を細めてみていきます。

溜息を一つ。

木箱のフタをそっと閉じて、唇に指先をおいて、考える仕草をみせてから。
一度小さく頷いて。

購入を決めたようです。

何かを問いかけるというよりも、感想を口にするように、そんなことを口にします。

フィーリと紹介された少女こそ、少女が最初に見た人だった。
その身体は確固たる色は無く、向こう側の景色が見えさえした。
しかし、それは決して存在感が無いと言うことでは無かった。

彼女はまるで深淵に立つ不気味な怪異そのもの。
私がこれから身を投げ出すのを待っているかの様だった。

……でも、それでも私の決意は揺るがない。
脚本家が私に用意したシナリオがこんな物だって言うなら―――

受け入れてやろう。
その先に何があったとしても後悔だけはしない。

だって……

そうして、少女は鎖をあっさりと受け入れた。

2人の態度は特に変化がない。
名前の理解などは比較的どうでもいい事象なのかもしれない。

軽い笑い声を上げつつ、自らの服を叩く。

その態度は相手の様子を伺っているようにも見えるかもしれない。