俺様は猫である。
名は無い。
俺様の下僕どもが俺様をネコサンとかノラとか呼んで崇めるから、寛容にも返事をしてやっている。ニャン。




某ニッポン国の某北関東地域のとある妖怪一族の隠れ里にて

人に紛れて生きる妖怪一族の何名かの携帯端末が一斉にメール着信した。

ある者は、メル友の一人からのメールが来たかと、普通に見て。
ある者は、久しぶりな珍しい人からの着信だと、同年齢の姉にもひと声かけてから見て。
ある者は、何故自分のメアドがあの女に知られてるんだと、戦慄と共に嫌々見て。

驚きの度合いこそ違えど、その内容に興味を抱いた。

『同族さんから連絡が来たわよ』と、あっさり簡単に知らせるメール文。
でも彼女が態々自分らに知らせる時点で、その同族が誰を表すのか明確であり。

一人は、元気そうでなによりと軽く流し。
一人の姉は、最初メールの意味が解らずきょとんとしてたが弟に説明されて、やっぱ一揆に参加すればよかったと大騒ぎし、弟に謝られつつ宥められ。
一人は、内容の真偽と詳細の確認は後回しにして、まずは自分のメアドをあの女に流したのは誰なのかを調べるべく動き出しだ。

倒しても美味しくなさげな腐った敵に、猫とっても不満そうだ。

聞き逃さなかった。

多少という程の知恵はまだないような気はするが。

蛙が舌先を伸ばして軽く素振りをしている……。
その先端は針の様に鋭く、ムチの様に唸りを上げながらしなっている……。

スズメよ、気にするのはそっちじゃない、黒猫の影の方だ！！
・・・と突込みしたくなるほどに間の抜けた質問である。
そして間の抜けた質問をしたその直後に、黒猫の影が襲い掛かる！

驚きのあまりに　また　あの面妖な姿に変身するスズメ。
慌てふためいて飛び上がり、紙一重でクロの爪から逃れると、そちらを見ながら謎の鋭い歯をガチガチ鳴らす。
威嚇しているのか、興奮しているのかよく分からない。

"ねこ"を三回言う辺りに動揺が見て取れる。

ものすごくおずおずと突込みを入れたのは、セイレーンの女性。
セイレーン。
つまり。人間と鳥を足して二で割った種族である。

このスズメ、エンブリオ持ちだった。

喋らないと思っていた猫が喋りだし一瞬驚くが、すぐに平常を取り戻す。
恐らくは自分自身も喋る動物だからだろうか―

カリスマ的な防御姿勢を取ることさらに数分、

そーっと顔を上げてみる。

黒猫が居ないことに安心して起き上がろうとする。

コートの不自然な重さに気付いたようだ。

カリスマ的な防御姿勢に戻った。

（つんっ！）

・・

・・・

・・・・

（軽く避けたノミを恨めしそうに見つめている）

（つんつんつんっ！）

（ひょいひょいひょい）

（┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛・・・・）
（高橋名人も真っ青の１６連打だ！）

・・・・・

だがしかし、全くノミは捕れず、後に残ったのは、所々毛がむしられたクロの背中のみ・・・

猫は咥えていた鴨を解放する！

鴨は葱を振り回しながら 猫から逃げ 敵陣へ突っ込んで行く！！

プツッ…ピー・・・・・・・・

猫は、戦い疲れてへばった鴨を捕獲した。ガブリ。