「………」
「………」
何度見ても違う。
角度を変えても違う。
そんなことはわかっているが再び角度を変えてみてみる。やはり違う。
はーーっと盛大なため息をついた。そう、ぼくは契約するエンブリオを誤ってしまったのだ。
僕はエンブリオに嫌われているのだろうか。
ここで今回は僕の人違いならぬエンブリオ違いだろ、というツッコミをした奴にはもれなく新しい装備でセレナーデの刑だ。
明日はスーノと2人でチームらしい。
正直そんなことどうでもいいくらいにはショックだったのだ。
何度見ても変わらない者は変わらないのだからと自分に言い聞かせその日は眠りについた。




翌朝。
今日はとてもいい天気だ。けれど砂地。迂闊に食べ物を持っていくと砂だらけになる。
そんなことを考えているとスーノが百面相をしながらこちらに近づいてきた。
何をやっているのだろうか。悪い物でも食べたのだろうかと怪訝な顔をしていると、しどろもどろになりながら話しかけてきた。

「よ、よう、フィー。ええと…」

何でどもってるんだこいつは。私の大事に取っておいた秘蔵のサンドウィッチでも食べたか。
そんなやつにはおいしくない草でも叩きつけてやる。
「何、急にそんなしおらしく。気持ち悪い」
怪訝な顔をしながらそういうと本人は唖然とした顔をした。
意味がわからない。悪いことがあったからそんな顔してるであろうに、何故唖然とするのだ。

「人の顔みて気持ち悪いたぁ何事だこんにゃろう！」
「だって気持ち悪い態度だったもん」

おう、逆ギレとはいい度胸じゃないか。怒りたいのはこっちだ。あの卵サンド、今日食べるつもりだったんだぞ。

「お、お前なあ…今日一日は俺と共同戦線はるって解ってんのか…」

またあきれられた。あきれたいのはこっちの方だ。
そういえば今日はスーノとのチームだった。
昨日何か考え事をしていてすっかり忘れていた。せっかく楽しみだったのに何もしこめていない。

「あーーーそうだった。楽しみにしてたんだよ」
「げ。」

思わず身構えるその姿に笑いが出そうになった。
やっぱりスーノは良い反応をしてくれる。

「お前、何か企んでねえだろうな・・・？」
「べっつにー昨日はそんな暇なかったし」
「ほう。昨日そんな暇がなくても今日思いついたからって実行すんじゃねーぞ・・」
「………ﾌｯ。ま、がんばろーねーー」

そう一言残して手を振りながら去る。
そこまで言われると何かやらないといけないという使命感にかられるじゃないか。
とはいえ特に何か思いつくわけでもなく。ま、残念ながら実行せず終わるかな。
そうだ、今夜は秋刀魚にしよう。私が食べたいし。ラザラスに言わないとな。
……と思いながら食料を見ると何故かサンドウィッチがそこにあった。
…………なんであいつあんなに気持ち悪い態度だったんだ………
ますます意味が解からない。
セロテープに混乱付加能力でもあったんじゃないか。
そんなことをおもいながら静かにその場を後にした。



「なんだあの黒尽くめ。暑くねえのか砂漠だろここ」

ところ変わってここは砂地。
目の前には黒づくめの人。
卵サンドは忘れた。泣いてない。
暑いとか寒いとかそんなことよくわからないけれど、わかることはただ一つ。
この人すっごいうるさい。だまってくれないかな。

「眠っていてもらうだってー。ほら、スーノ布団いきなよ」
「こんな暑苦しい場所で誰が寝られっかよ。ほれ、お前こそ寝ていいんだぞ？ん？？」

意外だった。どこでも寝れる図太い神経してそうなのに。

「僕寝る必要ないし？スーノってどこでも寝れると思ってた意外ー」
「ばっかやろうどこぞのお前と違って俺は繊細なんですーーーー繊細だから傷ついたなーあー傷ついたこれじゃ戦えねえなあ」

頭の後ろで手を組んで拗ねたように踵を返すスーノ。
繊細って言葉を言い聞かせてやりたくなった。

「そうか、ならば君の今日の夕飯の肉もなしってことだね」

その背中に澄ましたように言い放った。


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