何かが近づいてきてるらしい。
「うぃすぷさん、向こうを照らしてほしいですの。」
メイもそれに気づいてたみたいで。
その先には、ヒエンとミニドラがいたんだ。

「……かーこちゃん、メイちゃん、ただいま……。」
「帰還した。」
「おー。おかえりー。」
「ヒエン、ミニドラさん、おかえりなさいですの。」

戦闘中に出かけてたんだけど、ちゃんと戻ってこれたみたいだ。
シーヴィスがいろいろと用意して。報告会となった。

「それで、状況はどんな感じですの？」
「……ユニコーンにはにげられた。だけど……。」
「だけど、ってことは、何か見つけたかー？」
「うん。ね、ドライアドって、しってる……？」
「ドライアドと言えば、樹木の精霊のことですの？」
「……たぶんそれ。あんまりちかづくと、にげられるから……。」
「帰途、印は付けておいた。」
「把握したですの。お疲れ様ですの。」

ユニコーンがいないのはざんねんだけど。
ドライアドかー。契約できたらいいかも。

「かーこ、どうするの？
　ドライアドが必要なら、明日もこの森を散策しても良いと思うの。」
「そうだなー。気になるし、行ってみるかー。」
「……きになる……？」
「ん？ヒエン、どした？」
「……あ。かーこちゃん、これ……。」

そう言うと、ヒエンは服を取り出したんだ。
はじめて見る服を。

「おー？ありがとなー。」
「……ヒエン、これは何ですの？」
「……かーこちゃんの、服……。」
「かーこ、頼んでたものなの？」
「いや、僕はおぼえがないなー。」
「そう……。ヒエンの独断ですの？それとも、マスターですの？」
「……ちがう…………。」

目をこすってから、ヒエンは首をふって。
じゃあどうしてってきこうと思ったら、ヒエンが僕たちのうしろを指して。

『あちゃー。作戦失敗ね。
　ドキッ、森のなかでビックリドッキリ急接近☆という素敵な計画が。』
「マスター……。」
「はいはいちゅんた、怒らない怒らない。
　ヒエンは寝てていいわよ。」
「…………うん、ねる…………。」
「ヒエン、おやすみー。」

ヒエンが寝たからか、メイはちょっと小声になった気がする。

「で。マスター、どういうことですの？」
『とあるカナちゃんからの依頼でね、服を作製してもらうように頼んだの。』
「カナ？えっと？」
『ヒエンのオリジナルよ。』
「あー、そっか。そうだったなー、忘れてた…。」
「かーこ、しっかりするの。数日前のことなの。
　でもマスター、作製するならかーこでもできますの。」
『それで、足りる？』
「えっ？どういうことですの？」
『この世界では道具の種類と質がものを言うわよね。
　一揆を始めたものたちも数多くいて、現状も解っているでしょう？』
「それは……、その通りですの。
　でも、だからって……。えっ？かーこ？わわっ、ちょっとかーこ！」


後から話をきいたんだけど。途中で僕は倒れたらしい。
マスターによると、原因は魔力不足だって。
あまり多くは契約しつづけられないみたい。
確か、10体までとか？そんなことを話してたようで。


「かーこ！もう大丈夫なの？」
『平気よ。ただ、もうちょっと確認してるから、そのまま聞いてなさいな。』
「おー…。」
『この話はおしまい。でも、困ったわね。』
「何か、嫌な予感がするですの。」
『あのね、大会があるらしいのよ。申し込んじゃった。テヘッ。』

大会。うん、そういうのは見た気がする。だけど。

「かーこはダメですの。
　さっきも倒れたばかりなのに、無理はさせられないの。」
『そうなのよねー。ヒエンも無理だし、誰かいない？』
「そんな物好き、いるわけがないですの。」

この時、うぃすぷさんがとてもキラキラしてたんだ。

「お？でばんだお？」
『あらー、うぃすぷちゃんじゃない。出てみる？』
「マスター、うぃすぷさんで勝てるはずがないですの。」
『ふふっ、抜かりはないわよ。
　簡単簡単。かーこちゃんのをそっくりそのまま、ね？』
「うぃすぷさんはそれでいいですの？」
「やってみるおー！」
『はい、決定ね。もちろんかーこちゃんに負担がかからないようにするから。
　ただ。傍からその動きを見て、今後の参考になさいな。』
「わかったー。」
『それじゃ、またねー。あと、ちゅんたは例の件を考えておくのよ？』
「了解、ですの。」


こうして、うぃすぷさんが代わりに出場することになったんだけど。
どうなるのかな？

辺りを見回しつつ、案山子の一行が歩いている。