Day/10.0

　最近、森でユニコーンが目撃されているらしい。
　エンブリオ契約がどうこうという話題も聞くが、その話題もだいぶ沈静化してきている。
噂好きの人々に飽きられたとかそういう話ではなく、目撃できる頻度がそもそも減っているらしい。
　つまるところ、これからそれを探しにいこうという話になっているのである。

（……ユニコーン、ねえ）
　
　処女だか乙女だかにしか心を許さないが女装男子でも別に構わないらしいという生態にのっとり、
遭遇率増加の名目でふたりに着る服でいじられているアキトを見ながら、
アリスシアは胸中で溜息をついていた。これがユニコーン絡みの話でなければ自分もアキトで遊べたのだが。

（まあ、あのユニコーンじゃあないとは思うけど）

　アリスシアの知っているユニコーンは３種類居た。
　見えないやつと、遭遇自体が危険なやつと、普通のやつの３種類。
　見えないやつはそもそも目撃報告になりえないし、
危険なやつは目撃した者が無事に帰ってこれるかが怪しい。
となると消去法で普通のやつである。まあ、普通のやつも結構危険なのだが。
　
（そうよね）

　考えてみればなんてことはない状況に過ぎない。
　うつむいて自然と下に向いていた視線を上げる。
　と、セーラー服を抱えたロロムと目が合い。

「シアりんはどんな感じがいいと思う？」
「一番短いの」

　聞かれてアリスシアは即答した。

(火薬マナフラムを受け取ると―)

喋るキーホルダーの言葉をさらっと無視する様子に一抹の不安を抱きつつ

あまり深く考えずに杖を振ったら、初撃が地面へ直撃

目を閉じ、呼吸を調えて神経を集中させる。
早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。
大鍋が魔女の前に立った。

　

そう言うと目を閉じ、早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。
大鍋が彼女の前に歩み出た。