［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「かつて、私はこことは違う世界を旅して……失敗したわ。そして私の旅のきっかけになったのは、その以前にゾルと彼女がまた別の世界を旅した事に由来する」

「……貴方の世界の組織がどうなっているのかわからないけど。……ただあの日、帰り道で行き倒れていた彼女とこのゾルを拾って……保護してから、旅を続けているわ」

「なるほど」

「成功させましょうよ、旅。単純な話じゃないですか。やるべきことは変わらないし、これからは僕も目的を共有できます。だから大丈夫ですよ」

「なんというか、他人事じゃない気がするんですよね。行き倒れて保護されて……それは、心細いことです」




　目が覚めるまでのことは覚えていなかった。夢も現もなく、目覚めた瞬間に生を受けたかのような錯覚すら感じる。
　真っ暗だった視界に急に光が差すと、白さだけが目に残った。それが広く続いており、何らかの板であり、白く塗られた天井のことだと認識するまで、数秒の時間を要した。まだ眠っている脳をよそに、照明のまばゆさが容赦なく降り注ぐ。冬眠を終えて地上に這い出てきた虫たちの気分だった。生きるため、捕食者が待つ外に出る。

「……目は覚めた？　それならまずは一安心ね」

　声だ。それも、恐らくは女性の。五感への刺激から得られる情報量が著しく少ないのは、状況が理解できていない証拠だった。脳の機能に何らかの損傷があるのかもしれない。
　声色からは敵意を感じない。言葉遣いと穏やかな口調は、少なくともここが地下の収容施設で、声の主が敵対勢力のゲリラではないことが伺えた。体のどこかに激痛が走っていたり、薬物の気配を感じることもない。彼女の言葉通り、一安心と言ったところか。
　起き上がろうにも四肢に力が入らない。指先が軽く動いただけ、小さな呻きが漏れただけだった。仕方なく首だけ動かし、なんとか目線だけで声の主を見やったところで、眼鏡が無いことに気づく。視界はぼやけていたが、直感が囁いた通り、それは白衣を着こんだ女性の姿に見えた。椅子か何かに座っている。他には誰もいない。医者だろうか。ならばここは病院か──

「安心していいわよ。私は医者ではないけど……確かに白衣だけども、ここも病院ではないのよね」

　どうやらそんな目をしていたらしく、何となく察したのだろう、女医ではなかった女性は苦笑したようだった。病院でもなければ医者でもない白衣の者が大手を振って暮らしているところといえば、研究室が相場である。つまりここはどこかの研究施設で、彼女はそこの研究者ということになるか。白は汚れなき厳粛さと、清さからくる不寛容を思わせる。収容所よりは安心できるにしろ、研究所にもあまり良いイメージはなかった。例えば、人体実験であるとか。

「そんな怯えなくても大丈夫よ……ここは安全な研究をして、ああ、いや、まあ、とりあえずは大丈夫だから」

　声はどんどんと近づいてくる。ぼんやりとした輪郭が、少しずつ鮮明な像を結べるような距離にまで。
　こちらを安心させようとしてくれたのだろう。言いよどみながら目を逸らす素振りからは、逆に不安を感じてしまうところではあったが、少なくとも誠実であろうとする姿勢は伝わってきた。目を逸らしたのが安全な研究とやらの部分だったことは、今は気にしても仕方がない。
　その頃になると、手足の末端に力が入るまで回復していた。寝かせられたベッドの中で手を数回握り、感覚を確かめる。一気に上半身を起こすのは無謀なので、肘を支えにゆっくりと上体を持ち上げる。視界が安定したことで、やっと意識も鮮明になってきた。記憶はないが、横になっていた時間が長かったのだろう。背骨か腰から生じた痛みに身をよじる。
　制止するような小さな悲鳴と、気遣わしげな声が続いた。

「ああ、無理しないで。私の帰り道で倒れてて、そこから三日も寝てたのよ……発見者が私で良かったわね。そんな状況では中々難しいでしょうけれど、今は休むことだけ考えなさい」
「分かりました」
「あ、意外と聞き分けがいいのね」

　表情こそ見えないが、彼女は彼が即答したことに面食らったようだった。舌は問題なく回る。運動機能の不調を取り戻さんと、彼は言葉を続ける。

「ええ、まあ……実はですけど、なんで今ここに居るのか、全く思い出せなくて。だからとりあえず考えないことにしました」
「外傷はなかったし、恐らく一時的な記憶喪失ね。焦らずゆっくり休むこと……ええと。あなた、名前は？」
「白長須とか、偽黒初とか、ヘルデスタイクーンとか、そんな偽名名乗ってたのは思い出せるんですが……」
「本当の名前は思い出せない、あるいは本当の名前が何なのか分からない……と」
「そういうことになりますか？」
「いや、聞かれても困るのだけれど」

　思い出せた偽名が本名だったとして、ヘルデスタイクーンではないといいなと思った。
　複数の名前がパッと浮かんできたのも疑問だが、それ以外は何も思い出せないというのも不自然ではあった。無自覚に嘘をついているのかもしれない──聞けば自分は、身元も素性も分からない行き倒れだという。嘘をつくつもりはなくても、本来の記憶がねじ曲がり、虚構となって表面に浮き出ている可能性は否定できない。
　それでも彼女は疑う素振りを見せなかった。こめかみをトントンと叩き、何やら考え始める。

「……うーん、そうね。丁度良いから黒の方で名乗りなさい。偽黒初。ふさわしい名前よ」

　そう言って、彼女は何かを手渡してきた。受け取るために差し出した掌へと、馴染みのある重さが乗せられる。名前以外にも覚えていたもの。感じる重さは、彼の眼鏡のそれだった。自分がどうやって倒れていたのかは分からないが、上手い具合に倒れたらしく、レンズには傷一つついていない。

「渡しておくわ。無いと不便だものね……」
「助かります。命の恩人の姿がはっきり見えないまま、命の恩人と会話するのもアレですし……それで、あなたは？」
「私？　ああ、遅くなっちゃったわね。私の名前は──」

　それ以来、好きな物に白が追加された。白い服、白い家、そして白衣。




　かくして、数奇な運命の巡りあわせにより、彼こと偽黒初は『いいひと』なる組織の一員として迎えられることになった。
　彼の命を救った研究者である茅芽笹子の部下として。開発薬科、茅芽研究室所属の助手として。同僚のマーキュロクロム──汞朱理の存在もあって、彼は一人ではなかった。形式上は先輩でも、世話を焼くのはもっぱら彼の仕事だった。
　自分が今居る世界への理解も、暮らしていくうちに深まっていくものだ。上の街と下の街の対立や、組織内部での権力闘争など、厄介な問題も無いわけではなかったが、過去を失った者にとって、詮索もなしに受け入れてくれる組織はこの上なくありがたかった。自分が受けるその庇護が、ひとえに上司のおかげだということも。いつしか彼は、己の人生が幸福であると感じるようになっていた。
　一度だけ、尋ねてみようとしたことがある。何故、あの日彼女は彼を助けたのか。彼に居場所を与えたのか。今でも与え続けているのか──自分がどんな答えを欲しているのか分からず、踏み出せなかった。
　以来、彼は機会を逃し続けている。




　ある時、上司に尋ねられたことがある。運命と必然について。
　科学を愛し、論理を好む上司がそんなロマンチストだったとは知らなかった。冗談交じりにそう答えると、彼女はばつが悪そうに笑った。
　他の言葉を待つような眼差しに耐えかねて、持論を説いた。「偶然も起こってしまえば必然と言えるし、必然も後から見れば偶然だったと言える。必然と偶然に違いはない。全部をひっくるめて運命と呼ぶなら話は別ですが」と。
　その言葉に満足したのか、彼女は目を細めて微笑んだ。なるほど、と前置きして。

「もし、運命があるとして」

「今この瞬間が、運命で定められたものなのか。それとも逆らった結果なのか」

「どっちだと思うかしら？」

「運命の分岐点がどこだったのかなんて、誰にも分からないわ。二週目でもあれば、話は別かもしれないけれど」




　巨大な組織には、光の届かない暗部があるものだ。比喩的なものばかりではない。彼と上司が居たのは、物理的に光が届かない暗部だった──本社の地下にあるこの部屋は、今はほとんど使われていない。組織の成長と共に社屋が広がり、かつて華やかなりし頃は本社ビルだった建物も、今となっては更迭された不良社員が社史を編纂させられたり資料を整理させられたりする窓際専門棟となっていた。普段から人が寄り付かず、寄り付く人も組織への忠誠心は高くないため、格好の密会場所として重宝がる者も少なくない。だからこそ解体を免れていると揶揄する声もあり、組織の歪みを象徴するものの一つだ。

「嘘はつきたくないから言っておくけれど……最悪の場合、これが今生の別れになるかもしれないわ」

　切り出したのは上司だった。伏し目がちな表情は、決断の重さを噛みしめているようにも、決定的なしくじりを悔いているようにも見える。今生の別れを告げるためのロケーションとして、薄暗く埃っぽい部屋というのは最適に思えた。
　更迭の日、別れに立ち会うのは上司だけだった。人払いまでした計画だ。他に人が居る方が不自然というものだろう。大人数で旧社屋へ向かえば、それなりに目立つ。上司の元で共に働いてきた同僚（人払いされた当人）の姿がないのは、少々寂しくもあったが。
　帰還条件はただ一つ。使命を全うすること。どんな手を使ってでも研究室に戻ってくることまでが、彼に与えられた主命だった。

「僕は戻って来ますよ。約束します。僕が今まで──」
「嘘をついたことがありますか、でしょ。まあ、手酷く裏切られたってことは無かったわね」
「そうでしょう。そうなんですよ。だから笹子さんは安心してこっちでの仕事をやり遂げてください」
「……力強い言葉ね。そういうの、普段から出してもらいたいものだわ」
「未来に期待ですね。あとは後で話しましょう。僕が帰って来てから」

　帰ったら、尋ねてみようと思う。聞けずにいたあのことについて。
　青のシグナルは常に灯っている。踏み出すのが怖いのは、最初の一歩だけだ。

ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

ItemNo.11 腐肉 を破棄しました。
ItemNo.24 腐肉 を破棄しました。
ItemNo.30 腐肉 を破棄しました。
ItemNo.36 腐肉 を破棄しました。
ItemNo.37 腐肉 を破棄しました。

Dr.笹子(831) から ものすごい木材 を手渡しされました。

ItemNo.29 バラのくんせいにく を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

ユイ(975) から 300 PS 受け取りました。

麺屋の龍人(1595) から 強靭な皮 を受け取りました。

命術LV を 30 DOWN。（LV35⇒5、+30CP、-30FP）

響鳴LV を 35 UP！（LV0⇒35、-35CP）
合成LV を 5 UP！（LV53⇒58、-5CP）

Dr.笹子(831) により ItemNo.17 お肉 から料理『苦肉之計』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 6 5 2 = 13 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 技巧料理！［ 3 2 3 = 8 ］成功！料理の強さが増加！
　⇒ 苦肉之計／料理：強さ141／［効果1］攻撃14 ［効果2］防御14 ［効果3］増幅14

レオン(974) の持つ ItemNo.13 精霊の祝福 に ItemNo.19 ものすごい石材 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 5 5 5 = 15 ］通常付加
レオン(974) の持つ ItemNo.18 精霊の加護 に ItemNo.23 ものすごい石材 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 2 6 3 = 11 ］通常付加
Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.44 防汚白衣 に ItemNo.3 駄物 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 1 4 2 = 7 ］通常付加

紅(933) とカードを交換しました！

フォトン・ジュッテ （ソードブレイカー）


リザレクポーション を研究しました！（深度0⇒1）
変幻自在 を研究しました！（深度0⇒1）
ハデスポムグラネイト を研究しました！（深度0⇒1）

コールドウェイブ を習得！
アウェイクニング を習得！
ケイオティックチェイス を習得！
ディスオーダー を習得！
ドロール を習得！
浮声切響 を習得！
カオス を習得！
スーパーパフォーマンス を習得！
スペシャルタイム を習得！
エレクトリックパレード を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

偽黒初(77) は 黒水晶 を入手！
Dr.笹子(831) は 黒水晶 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 黒水晶+1 を入手！
Dr.笹子(831) は 生命の宝石+1 を入手！
Dr.笹子(831) は ビーフ+1 を入手！
麺屋の龍人(1595) は すごい羽 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 光小晶 を入手！

チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『シモヨメ区 Q-16：チェックポイント《苺畑》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は シモヨメ区 Q-16：チェックポイント《苺畑》

MISSION!!
ツクナミ区 K-2：チェックポイント《小集落》 を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ツクナミ区 K-2：チェックポイント《小集落》

［826 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［447 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［491 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［198 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［402 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［323 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［246 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［182 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［103 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［145 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［141 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［277 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［35 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［147 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［77 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［93 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［67 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［43 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［66 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［55 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［0 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［0 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［0 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　　　･････ヴオオォォォ･･･ッ！！

　

　

　

チャットに響く走行音。

　

　

　



　

　

　　　ヴォンヴォンヴォンヴォンッ

　

　




　

アルメシアがバイクで登場する。

　

　

　








　








　

　

　







　

　

　　　――ザザッ

　

　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！