［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「頼まれて欲しいことがあるのだけれど」

　この世界は二つの人種で構成されている。支配し奪うことに抵抗のない者、抵抗できずに奪われ支配される者。
　彼──偽黒初の住む世界は単純だった。上の街を抱き込んだ巨大な資本が、己の肥大化のために下の街から搾取する。何らかの縮図のような、戯画的な単純さ。もっとも、上の街に所属する彼にとっては、この上なく暮らしやすい世界だった。巨大な資本の側に属することの利点は、環境の良さに尽きる。
　暮らしやすい街には、高度な文化と適度な余暇が用意されているものだ。仕事熱心ではない彼は、同じく仕事熱心とは言えない上司に誘われて、チェスに興じていた。勤務時間中の怠慢を謗るものはない──研究室には、彼と上司の二人だけ。

「切り出すタイミング、ここであってます？」
「ええ、まあ……駄目だったかしら。これでも何日か悩んだのよ」
「何となく気づいてはいましたが……珍しいですね。僕に頼み事をするために悩むような頼み事があるだなんて」

　茶化してみても、上司の表情は変わらなかった。眼鏡の奥から見せる眼差しが、彼女の決意を物語っている。
　考えてみれば、朝から様子がおかしかった。このチェスも三ゲーム目で、おまけにこちらが二連勝していた──いつもなら勝敗は逆になる。時折見せるこめかみを指で叩く癖が妙に多かったのも気になっていたが、深くは考えずにいた。
　いつもは見せないような、対面するものを威圧するほどの冷たさを湛えた笑みを浮かべ、上司が続ける。

「前置きしておくと、本当に厄介な話よ。だから人払いもした……払える人なんて、朱理くらいしかいなかったけれどね」
「……もしかしてこのチェス、なんか知略を巡らせてる人が微笑みながら『チェックメイト』って最後に言うタイプの演出用の奴ですか？」
「そんな意図は無くて……でも、その陳腐さは似合いかもしれないわね。世界の命運を握ると言ったら信じるかしら？」
「僕が握っていいんですか？」
「計画があるのよ。かつてないほど大規模な、世界侵略」

　彼が黙れば、他に声を上げるものはいない。静まり返った研究室に、チェスの駒が固い音を響かせた。監視の目の届かぬ場所を探せば、必然的にここになるのだろう。内緒話をするなら私宅よりも安心できる。周囲に人気があり、壁も厚い。

「とある筋からリークがあったの。軽く調べてみたら、裏付けになるきな臭い動きがいくつも出てきた」
「うちがきな臭いのは──」
「いつものことよ。私だって普段なら無視する……自分の身に危険が及ばない限りは」
「及んだんですか」
「ええ。正確には、及ぶ対象が自分の身である可能性が高い。と、これ以上聞けば、逃げられなくなるわよ」

　問われているのは覚悟だろう。聞けば後には戻れない、上司の話を聞く覚悟。本題を切り出さないのは、彼女がそれを見極めようとしているからか。
　喉が渇いていることに気づいた。蛇口から注いでコップ一杯の水を飲み干すのを、一言も発さずに上司は待ち続けていた。席に戻り、小さく首肯する。説明を始めた上司の表情は、いくらか和らいだような気がした。


　この世界は二つの人種で構成されている。
　それは嘘だ。確かに世界は二つの人種で構成され、社会システムが完結している。支配し奪うことに抵抗のない者、抵抗できずに奪われ支配される者、この二つだけが社会とされる。
　二者の外側に、どちらでもない者がいる。統計上のその他に分類される彼らは必然的に一枚岩ではあり得ず、故に社会が彼らを相手にすることはない。支配と被支配の構造に反旗を翻す者、自らが支配者側であることを意識せずに生きる者、対立する権力の弱体化のため支配と搾取に非人道のレッテルを張る者など。時に利害が一致しても、勢力としてのまとまりはない。
　どちらかといえば、彼もまた、その他に分類される。今日の彼が上の街で安寧の日々を過ごせている、彼が偶然にも上の街に行き倒れており、比較的まともな感性を持った人間に保護されたからに過ぎない。助けたのは社会でも会社でもないため、社会、ひいては世界そのものに興味も関心も無かった。

「ピンとこないんですよね。世界の命運とか、スケールのでかい話って。それって結局は、それで損益が生じる人間にしか関係がないじゃないですか」
「利益にも規律が必要よ。秩序ある活動によって、収益の持続的な享受が……って、この前会った信託の人の言葉だけど」
「なるほど、一理ありますね」
「一もあれば多い方よ。成功しなければ大義名分も生まれないような暴挙の前ではね」

　説明を聞くにつれ、彼女の力学がこの問題をどう扱おうとしているのかが次第に鮮明になっていく。一介の研究者が独力で扱える代物ではないことから、同調者が組織内に一定数存在することが伺えた。それが派閥間闘争にせよ、利用しない手はない。敵の敵を抱き込む根回しは、上司というよりはさらにその上司のやり口にも思えた。となれば、彼もまた反対派の同調者なのか。敵の多さを考えれば、心強い仲間と言えなくもないが。

「世界に対する冒涜よ。倫理について語れる義理もないけれど、質の悪いドッペルゲンガーのような」
「侵略もドッペルゲンガーも世迷言ですよ。その世迷言にオールインする連中が組織の上の方に居る組織っていうのはぞっとしませんけどね。働く気もなくなっちゃうな」
「無いでしょ、元々」
「分かりますか」
「それくらいはね。でも、あなたがどちら側なのかは分からない。どちら側になりたいのか……決める権利なんて、私にはない」

　そう言って、上司はすっかり忘れられていたチェスの駒を動かした。盤上では、黒のキングが白のビショップに追いつめられている。次に目が合った時の上司があまりにも思い詰めた表情をしていたので、彼は言葉を発することが出来なかった。

「それでも、私は……いいえ、これは卑怯なやり方ね。ごめんなさい。返事を誘導してしまうかも」

　上司の顔を直視できず、目線を盤上に逸らしてしまう。キングを守るため、割り込むようにポーンを滑らせる。間を置かず、ビショップがポーンを取り除いた。再びの劣勢に、今度はルークを滑らせて対処する。

「一つ聞かせて貰ってもいいですか。なんで僕を選んだのか、その理由って」
「そうね……いくつかあるけれど、最終的な答えは一つかしら。あなたは目的を選ばないから」
「手段ではなく？」

　あまり聞いたことがない。手段を選ばないのではなく、目的を選ばないとは。

「前に媚薬とか飲んでたじゃない」
「あれは薬毒耐性のため──」
「それ、言い訳用に後で考えたやつでしょう？」
「よく分かりますね」
「まさにそこなのよ。どんなことでも、やりたいと思えばすべてを度外視して目的にしてしまう……手段を選ばないより、目的を選ばない人の方が恐ろしいわ。敵にするならね」
「なるほど」

　侵略を目論む勢力は利益の追及を至上命題としている。裏を返せば、すべての基準が自分たちの利益でしかない。価値観の外にいる者の存在を想像する力を持たない、腐敗した権力者たち。捨て置いた小さな駒が、計画を潰すほどの一手となる危険性を、彼らは考えもしないだろう。だからこそ、付け入る隙がある。

「あなたの選択、あなたの行動よ。それを決める権利はないの。私にも、誰にも」
「それを頼める人間って、僕以外に居ないんですよね。それで悩んでいたのか……なら、答えは決まってます」

　そもそも、答えは既に決まっていた。
　上司から話を切り出された瞬間から。もしくは、彼女に命を救われた時から。あくまで自らの意志でそう望むのだ。縋るような目で、媚びる様に語る上司を、これ以上見たくはない。

「私は、侵略を阻止したい。他の道を選びたいの。世界を揺るがす問題を、侵略で解決するのは短絡的過ぎる……だから」
「僕がやりますよ。任せてください。最終的かつ不可逆的に解決して見せますよ」
「……ありがとう。その言葉が、今は何よりも嬉しいわ」
「やっとちょっと笑顔になりましたね。それで、僕はどうすればいいんです？」
「更迭か追放、謹慎中の身勝手な行為、まあ、形式上はそんな形ね。表立っての支援もなければ、組織の目も届かない」
「正式な業務ではなく、勝手に動いて偶然にも時局に影響を及ぼした……と」

　実行犯の独断専行であれば、関係者たちの立場は守られる。主流派を敵に回すからには妥当な線だ。加えて、抑え込みや切り崩しなど、やるべきことは多い。労力を割く余裕が無くなることも懸念される。バックアップは最初からあてにしない方が良いだろう。

「ごめんなさい。他に良い手が思いつかなかったの。協力者との調整が面倒で、一々構っていたら日が暮れてしまいそうで」
「構わないですよ。僕、結構出たとこ勝負もやれるタイプなので……」
「必要な資質ね。他にもあるわよ、あなたに頼みたかった理由って。聞きたい？」
「ここでは遠慮しておきます……ああでも、具体的な話は聞いておきたいですね」
「ええと、そうね。詳しい計画は改めて伝えるわ。持たせたい物もあるし……今日のところはこれで終わり、あとは少し時間を貰えるかしら」
「ええ、分かりました。というわけで……」

　黒のクイーンが白のキングにとどめを刺した。白側の陣営、上司の手番だが、既に逃げ道は塞がれている。会話の途中も続けられていたチェスだったが、奇しくも会話と同時に終わりを迎えた。

「『チェックメイト』、と。これでいい感じに収まりましたかね」
「あなたそろそろその”というわけで”で突然話題を変えるやつ、卒業した方がいいと思うわよ」
「う、手厳しいですね……」




　イバラシティでの第二回バレンタインデーは、概ね成功したと言えるだろう。
　二人で待ち合わせしてケーキを食べに行った第一回目のハードルが高すぎたのは否めないが、念願かなって今年もチョコを拝受することが出来たのだから、成功といえよう。おまけにボードゲームまで楽しんで、単純に計算すれば二人で共有した時間の長さは第一回目のそれをはるかに上回る。
　それに──

「う、うますぎる。なんだこれ……なんだこれは！」

　誰もいない部屋に困惑の声が響いた。
　口の中に広がるそれは、チョコレートとしての完成度、格、味、格、とにかくすべてが規格外である。

「こんなもの……口にしたことがない！　どういうことだ人間！　なんだこれは！？」

　あまりのことに心の奥に潜むエルフが顕現してしまうほどの衝撃だった。
　元々苦いチョコレートが得意ではないが、そんな味覚の持ち主ですら美味いと感じるダークチョコレート。際立つのは苦みだけではなく、チョコレートかカカオかが持つ本来の香り高さを上品な味にまとめ上げている。チェイサーに必要なのは水だ。味を濁らせない、鮮烈さを次の一口でも味わえるように味覚を戻す清らかな水が。

「これ……これ食った後で他のチョコ食えんのかな……」

　かつてチョコレートは媚薬とされた。カカオが薬から嗜好品へと役割を変えた一方で、人を虜にする魔力は、今も変わらず受け継がれている。思ってもみない形で胃袋を掴まれたことに気づくのと、このチョコもしかしてマジのやつか？と直感が囁いたのは、二つ目のチョコを味わった後のことだった。




　本当にまずい展開について、想定をしていなかったと言えば嘘になる。想定をしていたところで何も手の打ちようがないので、考えないようにしていたと言った方が正しいか。
　バレンタインは危険だ。こちらの自分がどれほど警戒しても、向こうの自分は、いともたやすく彼女との──茅芽笹子との距離を詰めていく。これは本当に危険だ。今でこそ大丈夫だが、これが続けば、どうなるか分からない。

　望む望まざるに関わらず、直感は何かを囁き続ける。賭け金を吊り上げ、ツケを支払わせようとする。
　彼は使命を帯びていた。その遂行のため、彼は賭け金を更に積み上げる。支払うツケなど無いかのように。

ENo.564 PSY.B.峰子 とのやりとり

特に何もしませんでした。

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

Dr.笹子(831) に 200 PS 送付しました。

イデオローグ(474) に ItemNo.32 毒液 を送付しました。

Dr.笹子(831) から ボルト を受け取りました。

領域LV を 35 DOWN。（LV35⇒0、+35CP、-35FP）
合成LV を 28 DOWN。（LV81⇒53、+28CP、-28FP）

武術LV を 3 UP！（LV35⇒38、-3CP）
変化LV を 4 UP！（LV31⇒35、-4CP）
解析LV を 35 UP！（LV0⇒35、-35CP）
付加LV を 35 UP！（LV55⇒90、-35CP）

オニキス(301) により ItemNo.29 謎の肉 から魔香『バラのくんせいにく』をつくってもらいました！
　⇒ バラのくんせいにく／魔香：強さ85／［効果1］－ ［効果2］－ ［効果3］強撃10

Dr.笹子(831) により ItemNo.12 お肉 から料理『超絶熟成肉』をつくってもらいました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 4 6 1 = 11 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 技巧料理！［ 4 1 2 = 7 ］成功！料理の強さが増加！
　⇒ 超絶熟成肉／料理：強さ130／［効果1］攻撃13 ［効果2］防御13 ［効果3］増幅13

オニキス(301) の持つ ItemNo.28 ジェットブラックオニキス に ItemNo.29 ものすごい石材 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 5 2 1 = 8 ］通常付加
さき(911) の持つ ItemNo.17 ものすごい手摺 に ItemNo.22 ものすごい木材 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 1 5 3 = 9 ］通常付加
　⇒ 気づきアルカナ修練！効果1のLVが5増加！
フタバ(515) の持つ ItemNo.43 フローラ+5 に ItemNo.44 ものすごい木材 を付加しました！
　⇒ 気づきアトリエ修練！［ 5 6 5 = 16 ］大成功！付加効果のLVが増加！

C・サースター(299) とカードを交換しました！

リペイント （ラッキースター）


エグザミネイション を研究しました！（深度0⇒1）
ライブラリ を研究しました！（深度0⇒1）
スペシャルタイム を研究しました！（深度0⇒1）

アイスソーン を習得！
ファゾム を習得！
ブロック を習得！
フェイタルポイント を習得！
バックフロウ を習得！
リストア を習得！
リンクブレイク を習得！
応酬 を習得！
マナブースター を習得！
アブソリュート を習得！
ウィークサーチ を習得！
ブレイクスルー を習得！
滅頂之災 を習得！
ローエレメンツ を習得！
コンシアンス を習得！
ジェネラル を習得！
アイスミラー を習得！
アスティオン を習得！
心機掌握 を習得！
マーシャルアーツ を習得！
アルスマグナ を習得！
紙一重 を習得！
特質強化 を習得！
ライブラリ を習得！
乱離骨灰 を習得！
フローズンアイズ を習得！
リープアイズ を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

Dr.笹子(831) は 装甲+1 を入手！
Dr.笹子(831) は ビーフ を入手！
Dr.笹子(831) は 栄養ドリンク を入手！
偽黒初(77) は ガラス瓶 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 強靭な皮 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 強靭な皮 を入手！
麺屋の龍人(1595) は 強靭な皮+1 を入手！

次元タクシーに乗り シモヨメ区 Q-16：チェックポイント《苺畑》 に転送されました！


シモヨメ区 Q-15（草原）に移動！（体調30⇒29）
シモヨメ区 Q-14（森林）に移動！（体調29⇒28）
シモヨメ区 Q-13（森林）に移動！（体調28⇒27）
シモヨメ区 R-13（山岳）に移動！（体調27⇒26）
シモヨメ区 S-13（山岳）に移動！（体調26⇒25）

Dr.笹子(831) をパーティに勧誘しようとしましたが既に背後にいました。
麺屋の龍人(1595) をパーティに勧誘しようとしましたが既に背後にいました。
採集はできませんでした。
　　 - 偽黒初(77) の選択は オオキタ区 H-12：チェックポイント《沼沢》（ベースキャンプ外のため無効）

MISSION - 未発生：
　　 - 偽黒初(77) の選択は シモヨメ区 Q-16：チェックポイント《苺畑》（ベースキャンプ外のため無効）

［837 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［454 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［498 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［203 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［406 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［325 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［245 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［182 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［98 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［148 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［135 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［266 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［32 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［123 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［67 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［81 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［62 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［34 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［49 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［68 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［51 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［0 / 100］ ―― 《荒波》強き壁



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




　





突然チャットに現れるマッドスマイルちゃん。

　






疑いの目で見るふたり。

　








不満そうな顔で腕を組むエディアン。

　

　

　











チャットから抜けるマッドスマイルちゃん。

　

　

　

　

　

　




　




　

　

　

チャットが閉じられる――