［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

『トシ君！！！！』

言祝愛夢の叫び声を聞きながら、吉野俊彦は海に沈んだ。

深く落ちる記憶がながれてくる。
自分の力が大切な人を傷付けてしまう事に怯えた吉野俊彦が、海深くに沈んでいく。
息苦しさ、圧迫感、脱力感、無力感。
冬の海は一際冷たく、あれ程まで熱く燃え盛っていた炎も逆らうことはできない。

ハザマを歩いていたフェデルタの足は止まり、がくん、と力なく膝をついた。
記憶に身体がひっぱられ、力が入らず、息もできない。
これは今起きている出来事では無いと理解しながらも抗えない。海はそれほどまでに、炎の身体となったフェデルタには抗いがたいものだった。

（……このまま、じゃ）

この、身体がなにも出来なくなっていく感覚は覚えがある。何度も味わった、死んでいく時の感覚。
危険であると身体中が訴えてくるが、その肝心の身体はやはり動かない。

視界が暗く、落ちていく。海の底へと誘われていくーー

（……ここは）

一瞬意識を落としていたようで、ハッと目を開いたフェデルタは辺りを見渡した。
どこを見ても真っ暗な中に、一人立ち尽くした姿が浮かんでいる。

吉野俊彦、とその姿の名前を言おうとしたが口は動かない。それどころか身動ぎひとつ出来ない。
どうやら、未だ吉野俊彦の記憶の中らしく、見渡したのは記憶の中の自分が行っただけだった。
記憶の中にフェデルタ自身がいる理由はただひとつ、吉野俊彦が死んだからだ。

生き返る瞬間のほんの短い時間の記憶。
フェデルタ・アートルムが吉野俊彦に書き換えられる刹那の時間、確かにそこにいた。

項垂れる少年の両肩を掴む。
暖かい家庭も、優しい友達も、心許せる幼馴染も、フェデルタが生前もち得なかったものを持っていたのに、それを傷付ける事を恐れたのを理由に、全てを置いていこうとしたその少年の肩を。

「――いいワケあるか！　馬鹿野郎！」

肩を掴む指先が震える。絞り出した叫びは自分では無い声色になる。すでに存在が書き換えられはじめていた。

「お前には！　悲しむ人がいるだろう！」

海に落ちる前に聞こえた悲痛な叫び。幼馴染の少女は偽りだとわかっても尚、認めることが出来ないと狭間の世界で嘆いた。

「お前には！　守りたい人がいるだろう！」

吉野俊彦には家族がいる。守りたいとずっと心に誓っている。それは、フェデルタが叶える事が出来なかった誓い。

「それを置いて、いいワケがあるか！！！！！」

許される筈が無い。置いていかれた悲しみを知っているのに、どうしてそんな事が出来るのか！
文字通りの魂からの叫びだった。鏡写しのように向かい合いながら、全てに絶望したような顔をした吉野俊彦の肩を掴む。
その指先から徐々に姿が薄れていく。吉野俊彦の中に、怒りと叫びが溶けていく。
そして、彼は静かにそれを受け入れた。絶望の色は強い決意の色へと変わって行った。

認識せざるを得ない。吉野俊彦と自分は別だと、そう思っていたのは間違いだということを。
否、吉野俊彦とフェデルタは別である。しかし、フェデルタを構築する要素の中に、吉野俊彦はすでに組み込まれて、引き剥がすことは、もう出来ない。

いつの間にか記憶の視界は吉野俊彦のものになっていた。海面を目指してもがく少年は、やがてその身を砂浜に横たえた。

---

「フェデルタさん！！」
「……ん、あ、なんだ、お前……壁……」
「ナズナですよう！！」
「ああそうだ、それに、玲瓏だっけ」
「……ああ」

叫ぶように名前を呼ばれた事で、記憶に引っ張られていた意識がハザマへと戻ってきた。気付けば側に、見覚えるのある壁の子とゾンビの姿がある。
ナズナと名乗ったその壁を一瞥してフェデルタはまわりを確認した。
意識を失う前とかわりない、ハザマのチェックポイントの近くにいるのを確認すれば小さく息を吐いた。
と、なれば何故ナズナ達がここにいるのか、という疑問がわく。
そもそもこの二人は魔女と共にイバラシティに現れて吉野俊彦と接触しているのを、記憶から確認している。

「お前ら、なんでここに」
「フェデルタさんを見に来たんですよう！ でもそしたらフェデルタさん急に燃え出して、収まったかと思ったら全然違う服とか、髪型で」
「……は？」

ナズナの言葉にフェデルタは間の抜けた声をあげた。そして、改めて自分の姿を見える範囲、さわれる範囲で確認した。

「……なんだこりゃ」

確かに姿が変わっている。細かくはわからないがコートの色が赤から白になってるので、それだけで変わった事は理解した。
髪の毛も触った感じ、無造作に伸ばしてたものがいつも通りの長さになっている。
どちらかといえば身綺麗に整ったと言うべきか。
自分が急に燃えた、という話は恐らく吉野俊彦の死の影響が時間差で、記憶の流入にあわせてやってきたのだろうと予測出来る。
ただ、それにあわせて姿が変わったのはよくわからない。

（……スズヒコの影響か？）

思い当たることと言えば、スズヒコの髪の毛を食べたことで変化の力の影響が出た可能性くらいだ。

「まあいいや。俺を見に来たって？」

わからないことを延々考えても仕方がないので早々に思考を切り替え、突然現れた二人の姿を改めて見た。
魔女と知り合いである、という共通点のせいでこの二人とフェデルタはそれなりに顔見知りだ。
大体、魔女の思い付きに付き合わされてる事ばかりなのだが。

「アリィさんがどうするべきか判断するためには、ハザマのフェデルタさんを見ないとわからないらしくて」
「……へえ。お眼鏡に敵わなきゃ、それなりに責任を取ります……ってか？」
「意地悪な言い方しないでくださいよう！」

ナズナの言葉にフェデルタは小馬鹿にしたような物言いで返す。む、とした壁の子の後ろで、ずっと黙っていた玲瓏が口を開いた。

「……わかってる、だろう。魔女が、何を考えているか」
「わかってるよ。俺が限界を越えたら一番困るのはアリィな事くらい」

玲瓏の言葉にフェデルタは頭をかいた。
少し前の自分であれば、魔女に終わらせてもらうのも悪くないかもしれないと考えた可能性もある。
けれども、本当に僅差で、その必要が無くなった事が今のフェデルタにはわかっていた。

「魔女に伝えろ。この場にいる間は問題ねえ。それは、吉野俊彦を見ればわかるはずだと」
「ふえ？ それってどういう事ですか？」
「吉野俊彦が本当の異能に目覚めた。そもそもあいつが異能だと思い込んでたのは、異能に見えるようにカモフラージュされた俺の力だ」

それは、フェデルタ自身はずっと気付いていた事だ。
ワールドスワップの力で異能の形に近付けても、それは本来イバラシティで覚えるものとは微妙に違うもので、厳密に言えば吉野俊彦は無能力者であるという事を。

「……その、カモフラージュされた俺の力をあいつは完全に抑え込んで、モノにした。それが、吉野俊彦の本当の異能だ」
「……本当、か？」
「俺が一番驚いてるよ。けど、ちょっと前まで俺のなかでくすぶってた……いや、燃え盛ってたモンが全部ナリを潜めた。この一瞬でだ」

吉野俊彦が水の中に沈み、フェデルタと出会い、互いに己を受け入れた事が何らかの理由なのかもしれない。
だが、それもまたフェデルタの想像に過ぎないのだが。

「……わかった。お前の、言葉……確か、に、伝える」
「あ、でもこの場にいる間ってことは、出ちゃったら」
「アンジニティから抜け出せりゃ、時間的に問題ねえ。終わらせるだけだからな」

フェデルタが軽く笑って告げるものの、終わらせるという言葉にナズナは少し頭を下げた。

「……終わりなんですか？フェデルタさんも、スズヒコさんも」
「これ以上続けても、ロクな事になんねえってのが俺達の出した結論だよ」
「……ナズナ」

しょんぼりとするナズナに玲瓏が咎めるように声をかける。
ナズナはうう、と唸りつつもそれ以上はなにも言わなかった。
沈黙の間を割くように、ちょうどよく次元タクシーが一台やって来た。
フェデルタがじゃあ、と言ってそれに乗り込もうとする前にナズナはその壁の身体をのけぞらせんばかりに大きく足を開いてた前を向いた。

「じゃあ、私達も帰りますねい！ とはいえ、イバラシティにはまだいるのでフェデルタさんは顔を見ると思いますが！」
「おう、全部終わったらあのうるせえのにもよろしく伝えてくれ」
「……わかっ、た」

フェデルタはひらひら、と手を振ってタクシーへと乗り込んだ。

ItemNo.2 何か柔らかい物体 を破棄しました。
ItemNo.11 赤い薔薇 を破棄しました。

ItemNo.18 チーズ付きミートソース を食べました！
　体調が 1 回復！（5⇒6）
　今回の全戦闘において 活力5 体力5 防御5 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

スズヒコ(244) から ローズクォーツ を受け取りました。

使役LV を 5 UP！（LV5⇒10、-5CP）
付加LV を 5 UP！（LV80⇒85、-5CP）

ItemNo.25 鉄くず に ItemNo.22 腐肉 を合成し、魔力溢れる滑々な黒い塊 に変化させました！
　⇒ 魔力溢れる滑々な黒い塊／素材：強さ20／［武器］疫病10(LV20)［防具］耐闇10(LV20)［装飾］放衰10(LV10)

ItemNo.21 イヌサフラン に ItemNo.29 駄物 を合成実験し、魔力溢れる滑々な黒い塊 に変化することが判明しました！
　⇒ 魔力溢れる滑々な黒い塊／素材：強さ20／［武器］疫病10(LV20)［防具］耐闇10(LV20)［装飾］放衰10(LV10)

ItemNo.28 長い髪 に ItemNo.29 駄物 を合成実験しようとしましたが、LVが足りないようです。

アンネ(1280) とカードを交換しました！

ガンマギリア （ミリキアレギア）


ジャイアントラップル を研究しました！（深度0⇒1）
ジャイアントラップル を研究しました！（深度1⇒2）
クリエイト：ワンダーランド を研究しました！（深度0⇒1）

魅惑 を習得！
ユニティ を習得！
火炎避け を習得！
サンシャイン を習得！
マインドリカバー を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

順(39) は 空木 を入手！
フェデルタ(165) は 楠 を入手！
スズヒコ(244) は 柚子 を入手！
フェデルタ(165) は 装甲 を入手！
順(39) は 甲殻+1 を入手！
フェデルタ(165) は 強靭な皮 を入手！

順(39) がパーティから離脱しました！

スズヒコ(244) に移動を委ねました。

ミナト区 G-6（草原）に移動！（体調6⇒5）
ミナト区 G-7（道路）に移動！（体調5⇒4）
ミナト区 G-8（チェックポイント）に移動！（体調4⇒3）
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

グノウ(909) をパーティに勧誘しました！
迦楼羅(931) をパーティに勧誘しました！
『チナミ区 E-5：チェックポイント《出発地》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - グノウ(909) の選択は チナミ区 E-5：チェックポイント《出発地》

MISSION!!
ミナト区 G-8：チェックポイント《珈琲店》 が発生！
　　 - フェデルタ(165) が経由した ミナト区 G-8：チェックポイント《珈琲店》
　　 - スズヒコ(244) が経由した ミナト区 G-8：チェックポイント《珈琲店》

［866 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［445 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［194 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［397 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［310 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［221 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［160 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［90 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［137 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［128 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［196 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［58 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［32 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［58 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［39 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［8 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

「うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

「ひぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

　

　

　

突然の絶叫と共に、チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！




（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）