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泰元５年８月１５日



それは、何度目かの引っ越しの準備をしている時だった。
段ボールを並べた隙間に座って、荷造りをしながら、清はそのように尋ねてきた。

深谷が「そんな丁寧に包む事ないぞ」と告げたせいだ。
日用品のほとんどを、引っ越すたびに深谷は捨てる。
食器や服もほとんどを処分して、転居先で新しく買うのが常だった。
だから、清がそんなに手間暇をかけて、荷造りする必要はない。
そう言いたかったのだが、どうやらそういう暮らしぶりは、清にとっては寂しい事らしかった。


清は溜息をつく。
清はきっと、本来はひとつひとつの物を愛して暮らしてきたんだろう。
人に大切にされた分、皿の一枚、箸の一膳に至るまで思い出があって、大切にして暮らしてきた。
深谷はもう、そのように考えることができない。
自分自身を、大切に思えない。


本当にそうだろうか。

清は時折、こうして痛い所を突いてくる。
自分一人なら疑いもしなかったそれを、言葉にして突きつけてくるから、考えることも増える。
本当にそれで良かったのかと。


冷泉は友達ではない。
だが、どこに引っ越しても縁が切れなかったのは彼女だけだ。
厄を受けた時に対応できるのは彼女以外にもいたが、深谷の事情に深入りせずにいてくれたから、
こうして縁が繋がっている。
それは無関心から来るものかもしれないが、確かに深谷にとっては、有難い人間だった。

バーのママ……宇知子に、ナカゴ、フク。彼女らもそうだった。
離れるべきではなかったのかもしれない。
彼女らからも……かつて住んでいた神社からも。


だが、肯定するのも悔しくて、こうして負け惜しみのような事を言ってしまう。


清とて、引っ越し先に知り合いができないわけではない。
ナカゴやフクとは仲良くなったように見えたし、
今だって、良く行くカフェや、八百屋の店員とはそれなりに会話をする間柄らしい。
それでも清は、深谷に従ってしまう。
友達ができたからここを離れたくないと、そう言ってくれれば話は早いのに。

だが、清に言った言葉は、全て自分にも当てはまる。
若い男が　──一人になる事を選んだのは28歳の時だ──
生まれ育った社も、主も捨てて、一人になる道を選んだ。

結局、似た者同士なのだ。
失ったことがあまりに辛くて、得る事自体を拒んでいる所。
何も持っていなければ何も失いやしないと、そうやって寂しい人生を選んでいる所。

……だが、清と深谷は違う。
清はまだ若く、これからいくらでも、失ったものを取り返すことができる。

沈黙。少しの間、荷造りを続ける物音だけが続く。


本当にしつこい。だが、清の言うことはどれも正しく、余計な世話だと一蹴することはできなかった。
何だって、もっと上手いやり方があったはずだ。清と話していると、それを突きつけられる。


"悪い事"は、していない。ただ、自分を許せないだけだ。
神社で生まれ育ち、神に仕えるべく育てられたくせに、神より妻を大切に思った。
そんな自分を許せないから、逃げている……


もう清は言い返してはこなかった。苛立ちをぶつけるように音を立てて食器を仕分けていく。
どうせ大切な物などなかろうに……それとも、大切な物を作りたいが故だろうか。

---

深谷には、清の事がよくわからない。
大切な物はないのかと、寂しい人生だと深谷に言いながら、自身では、その"寂しい人生"を平気な顔で送っている。
清はいつでも、深谷のもとを去っても良かった。
道具など真っ平だと思えば、それが自立の時だし、実家が恋しくなれば、戻ったって良かった。
なのに深谷のもとを離れず、深谷の自堕落な生活に小言を言い続けている。

それだけではない。


清に背中を向けさせる。
血管に沿って、皮膚が赤黒く痣になっていた。


これだ。清は退魔師をやめたいとは一度も言わない。
傷が増える事にも、何とも思わないらしかった。


早くに呪禁師を……冷泉を呼んで治療をすれば、痕も残りにくい。
だというのに平気だと言って、その結果がこれだ。


おや、と思った。反応するとは思わなかった。
何も気にしない顔をしながら、どこぞに嫁入りするつもりはあるのだろうか。


確かに自分は、清以上に傷だらけだ。だが、今更結婚も無いだろう。


驚いたのは、清がそれをあっさりと受け入れているからだ。
清は今も、深谷の道具として死ぬつもりなのだ。
少しずつ笑顔を見せるようになって、まともに……
日々を楽しんで生きていけるようになっていると、思っていたのだが。


結婚するつもりはなかったらしい。
なら、どうして嫁入りという言葉に反応したのかと疑問を持ったものの、
深谷はそれを声に出して問いはしない。


清がそう言うなら、それで良いのだろう。
深谷は従う側の人間だ。神に、神社に、従って生きていたから、上に立つことが難しい。
どうすれば清を良い道へ導けるのか、彼女に与えるべき言葉があるのではないかと思ったが


このままでは良くないのではないか。
浮かんだ疑念をくすぶらせながら、結局、今日も、何も思い浮かばない。

ENo.17 サクマ とのやりとり


ENo.165 フェデルタ とのやりとり

特に何もしませんでした。

変化LV を 5 UP！（LV5⇒10、-5CP）
料理LV を 5 UP！（LV45⇒50、-5CP）

百面相の怪(100) とカードを交換しました！

エンチャントアーマー （エンチャントアーマー）


リワインド を習得！
グロウスルーツ を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

不浄の滝(158) は ジギタリス を入手！

ミナト区 I-18（草原）に移動！（体調25⇒24）
ミナト区 H-18（山岳）に移動！（体調24⇒23）
ミナト区 H-19（山岳）に移動！（体調23⇒22）
ミナト区 H-20（森林）に移動！（体調22⇒21）
アライ区 H-1（森林）に移動！（体調21⇒20）

［866 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［445 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［194 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［397 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［310 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［221 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［160 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［90 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［137 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［128 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［196 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［58 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［32 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［58 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［39 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［8 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

「うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

「ひぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

　

　

　

突然の絶叫と共に、チャットが閉じられる――