［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　いつもの朝。
　いつもの様に職場に向かうと、いつもの椅子に上司の姿はなかった。始業時間も迫っている。遅刻癖などない上司がここまで遅くなるのは珍しい。怪訝に思いつつも、上司の代わりに腰かけていた人影に声をかける。

「あれ、珍しいな……今日は一人？　笹子さんは？」
「さっきレンラクがあったよ。今日はオヤスミだって」

　足をブラブラさせながら。上司の椅子のサイズでは、彼女にとっては大きすぎるようだ。
　声の主は少女である。年齢的には──あくまで比喩表現だが──娘に近いか。歳の割に大人びている、というよりもそもそも年齢と肉体が乖離している。一見すれば研究室にはそぐわないような彼女だが、堂に入った白衣姿と、瓶底眼鏡の奥に煌めく不思議な瞳と……とにかく、組織的には彼自身よりも相応しい存在かもしれない。歳は違っていても、立場的には同僚になる。共に茅芽研究室の助手だ。

「風邪？」
「チガウよー。ただのキンニクツウだって」
「ああ……ええ……？」

　納得しかけたところで踏みとどまる。重篤な病でないことが分かったのは一安心だが、昨日は平日で、運動会だったわけでもなければ、特に力仕事もなかったはずだ。夜中に模様替えでもしたのだろうか。お声がけを貰えば喜んでタンスくらいは動かしにいくのだが──

「リングがドウとかって。ジシュトレ？」
「なるほどね」

　特に深い意味はない休みだったことが判明し、ひとまず合点がいった。最近は仕事の波も穏やかで、このままでは体が鈍る、体力づくりのためにも家で運動を──とでも考えたのだろう。
　直感的に、ヨガマットの上で変なポーズをとった姿が思い浮かんだ。やっているうちに楽しくなって、つい限度を超えて運動してしまったといったところか。熱中すると他が見えなくなるのは長所かつ短所で、魅力の一つだ。

「まあいいか。どうせ仕事も特にないし。朱理ちゃんはどうする？　僕は今日はパソコンで上海でもしてるけど」
「助手サンとチガってワタシはイソガシイからね。みっちりヨテイがあるんだから」
「具体的には？」
「お昼はハンバーグ」
「それって予定かな」
「……チガウの？」
「そうかな、そうかも……僕も昼それにしようかな」
「あー！　イマ笑ったでしょ！　もう、シッケイしちゃうんだから」

　ぷりぷりと怒りながら研究室を出ていく朱理に平謝りを投げかける。昼時にもまだ怒っていたら、ハンバーグくらいはご馳走してあげよう。どうせ食堂で会うことになる。
　彼女が去ったことで、いよいよ室内には彼しかいない。茅芽研究室の名の通り、上司が不在では動かせる仕事も多くない。助手の名の通り、上司の手助けをするのが彼の仕事なのだから。
　とまれ、留守番くらいは務めねばなるまい。宣言通り仕事用パソコンを立ち上げると、彼は上海を起動した。




「ンッンー。……テステス。こんにちは。ハジメマシテ？それとも、ヒサシブリ？」

　見知らぬ少女の見知らぬ声といえば嘘になるが。
　見知った少女の見知った声というには、看過できない点がいくつか存在した。
　通信に割り込まれたのは初めてのことだった。何らかの不具合か、あるいはそういった異能なのか──どちらにせよ、状況が変わったことに変わりはない。胴元がワールドスワップのルールを書き換えたことと関係しているのかもしれないが、確かめる術はない。

（それは、違う）

　人が背後を警戒するのは、死角より迫る危機を恐れるからだ。用心深さは命に直結する。得体のしれない新たな脅威に備えるには、警戒を強化するしかない。一人で足りなければ、二人で。それでも足りなければもっと多くの手を借りて。危機を危機として受け入れたくなければ、危機よりも先に危機を察知し、危機への対策を講じねばならない。
　その点において、彼の《有有有利有利有利》はこの上なく適していた。直感は認識の外にある危機すら掴み取る。ワイヤーと同じく、手の届かぬところにまで影響を及ぼすことが出来る優れものだ──酷使された異能が肉体を蝕みつつあることから目を背ければ。まるでネジでもねじ込まれたかのような頭痛が、思考力を奪い続ける。

「えと……ちょっと、ちょっと待った。君は……君も来てるのか？　いや、そんなわけが……」
「……そのヨウスだと、ワタシのこと、シッテルみたいね。ワタシと『どういうシリアイ』なのかキキタイけれど、これイジョウはツウシン、ムズカシイかな」

　辛うじて絞り出した困惑に、少女が耳を貸すことはなかった。意に介することもない。ただそうあるべき振る舞いとして、機先を制し、言葉を伝え、正常な判断力を侵略していく。
　傲慢にも似たその態度には覚えがあった。彼が属する組織において、組織が必ずしも一枚岩ではないことと同様に、その手の駆け引きは横行していた。点取り競争よりも蹴落とし合いに近いそれは、相手を出し抜き言い包めるという点において、見知らぬ少女と共通している。
　権力闘争と交渉は、同じ幹からなる枝葉ほどの差でしかない。要は相手を黙らせる技術だ。彼も上司を言い包めるため、この地では似たような技を使っているのだから、少女に向けた感情は同族嫌悪に近い。

「じゃあマタね、オニイサン。ササコによろしくね！」
「ちょっと？壊れた！？もしもし、もしもーし！！」

　少女からの通信が切断される。あるいは、通信が正常に戻る。入れ替わる形で現れたのは、ぶつくさと通信機に悪態をつく上司だった。悪戦苦闘の末に原因不明の混線を乗り越えた彼女の表情は、心なしか晴れやかに見えたが。上司とは対照的に、自分はどんな顔をしているのか──グッと目をつむり、役目を思い出す。不安は不安を連鎖する。上司を助けるのが己の役目だ。

（それは、違う）

　不安を振り払う。いつも通り、平常心で、普段通りの顔を心掛ける。異能の囁きが呼び覚ます痛みを厳重に仕舞い込み、深呼吸をして声まで作り上げたところで、ようやく上司に応答する。通信障害のせいで音声が届かなかった素振りを混ぜながら。

「聞こえてますよ。大丈夫です……大丈夫じゃないことも起こりましたが。詳しくは合流してから話します」

　隠す必要もないだろう。初めましての場合、先の少女は敵になるかもしれないのだ。
　記憶の中の汞朱理は、彼を助手サンと呼んでいた。




　合流までの間、彼は一人で頭を抱えていた。物理的にも抱えていたのは、少しでも頭痛を紛らわせるための苦肉の策である。
　実は正体がドラゴンだったラーメン屋の大将が去ったことで、いよいよベースキャンプに味方は彼しかいない。上司が不在では動かせる仕事もない。助手の名の通り、上司の手助けをするのが彼の仕事なのだから。
　顔見知りかそれ以上か、信用出来る仲間の一人と考えていた大将が実は人間ではないことを明かしてきたのは驚きだったが、不思議と偽りに対する怒りはなかった。見えないものは””無いもの””として扱う処世術は大抵の場合有効で、不必要に複雑化することのないシンプルな人生を送らせてくれた──誰もが何かを隠している。誰もが嘘をついている。それが彼にとってマイナスでなければ、別に気にすることはない。
　大将は偽りを告白した。彼の決意を否定するものといえば、保健所が人間以外に出した営業許可を取り消すか否かくらいのものだろう。
　翻って、自分自身はどうだろうか。隠しごともある。嘘もついている。信用してくれる茅芽笹子という存在に対し、彼にはまだ話していないこともある……
　人を失望させるには事実が一つあれば良い。隠し事が致命的であれば、それだけでこれまで築き上げた関係性が崩れ去るだろうし、言い逃れ出来ぬほどには致命的なものを隠している自覚はあった。
　電子タバコをくゆらせる。強めのメンソールフレーバーが鼻から脳に抜け、喉を焼き、痛みで濁った思考から、むせかえるような現実に意識を引き戻してくれた。
　電子タバコは単純だ。混ぜ物の入った水蒸気は一呼吸に満たぬ間だけその場に留まると、緩やかに霧散し、やがて跡形もなく消え去っていく。何かを残すこともなく、残された者などお構いなしに消えるだけだ。
　思い出すかのような鈍い痛み。覚醒した意識が再び頭痛と吐き気に塗り替えられるまでの間隔が短くなっている。誤魔化しきれなくなっているのは明らかだったが、ハザマには頭痛薬も頼れる脳神経外科もない。

（せめて、合流するまでは……）

　それでもなんとか意識を保てているのは、ほとんど意地の問題だった。上司と合流するまではと言い聞かせ、小さな目標を設定することで苦痛から逃れている。何とかなると信じている。
　上司を助けるのが己の役目だ──上司の支えとなるべき自分が上司を支えとしているのは、笑えもしない皮肉だった。

ENo.564 PSY.B.峰子 とのやりとり


ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

Dr.笹子(831) に ItemNo.9 桃 を手渡ししました。

Dr.笹子(831) から 欠けた刃 を手渡しされました。

オオウミネコを退治し、カフェの中へと入る。

　






キッチンのほうに、ひとりの男。

　




名前と外見からして、ロストのひとりで間違いなさそうだ。

　

こちらをまじまじと見つめ、ポンッと手を叩く。




両手を広げ、歓迎を示す。

　

冷蔵庫を開け、中をチェックしつつ･･･





冷蔵庫を閉める。

　






アンドリュウは鶏の卵を探しているようだ。

黒樹と少女の亡骸(854) から 600 PS 受け取りました。
すずめ(586) に ItemNo.20 ビニール袋 を送付しました。
Dr.笹子(831) に ItemNo.33 瑪瑙 を送付しました。
Dr.笹子(831) に ItemNo.34 瑪瑙 を送付しました。

時空LV を 25 DOWN。（LV30⇒5、+25CP、-25FP）

制約LV を 30 UP！（LV0⇒30、-30CP）
付加LV を 5 UP！（LV60⇒65、-5CP）

めーて(736) の持つ ItemNo.10 松 に ItemNo.20 触手 を合成し、謎の肉 に変化させました！
　⇒ Which,Yes or No?！［ 1 4 4 = 9 ］不発！

Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.33 すごい液体（石）Mark.2 に ItemNo.34 すごい石材 を付加しました！
Dr.笹子(831) の持つ ItemNo.13 角型試験管 に ItemNo.20 不思議な粉 を付加しました！

はふり(42) とカードを交換しました！

清めの一撃 （サンクション）


ミリキアレギア を研究しました！（深度0⇒1）
ルミネセンス を研究しました！（深度0⇒1）
キュアサイクロン を研究しました！（深度0⇒1）

キーンフォーム を習得！
ディクリースアイズ を習得！
高速配置 を習得！
デスペラート を習得！
イクスプロイト を習得！
マイントラップ を習得！
インファイト を習得！
イディオータ を習得！
博打付加 を習得！
グリムリーパー を習得！
二刀流 を習得！
有為転変 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

偽黒初(77) は 不思議な布 を入手！
Dr.笹子(831) は ぬめぬめ を入手！
Dr.笹子(831) は おさかな+1 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》

MISSION!!
ヒノデ区 E-20：ヒノデ動物園 を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 E-20：ヒノデ動物園

［870 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［443 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［190 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［380 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［296 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［204 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［143 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［61 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［123 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［108 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［129 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［12 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［37 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




チャット画面に映るふたりの姿。

　





　





　

　

　

　

　

　





　

　

　

　

　

　





　





　





　





清々しい笑顔を見せるふたり。

　

　

　






　








　

　

　

ふたりの愚痴が延々と続き、チャットが閉じられる――

囲いや入口の門が草で覆われ、荒れ果てている動物園。

動物の気配などなく、静まり返った園内――

　




　

――に、響き渡る大きな鳴き声。

　

　

　

　　　――ズンッ

　

　　　　　　　　ズシンッ――

　

　

　

･････大きな足音。

　



　

巨大な鶏が目の前に現れた。

　




しゃべりかけてくる。

　





肩を落とす。

　




こちらを見つめる。

　




興奮した大鶏が、大声をあげて襲い掛かるッ！！