［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

これは日記、即ち記録だ。当然のことながら。



「……目は覚めた？　それならまずは一安心ね」

「安心していいわよ。私は医者ではないけど……確かに白衣だけども、ここも病院ではないのよね」

「あなた、名前は？　……うーん、そうね。丁度良いから黒の方で名乗りなさい」

「私？　ああ、遅くなっちゃったわね。私の名前は──」


　奇妙なことだが、上司──茅芽笹子との出会いの記憶は三つある。
　一つはイバラシティだ。栄転か左遷か、共に配属されてきた記憶。
　一つはハザマだ。栄転か左遷かでいえば、こちらは左遷に近い。経緯を見れば栄転でもあるが。
　一つは──


　物事には順序がある。
　初めてハザマに飛ばされた時の混乱は覚えているが、鮮明ではない。困惑が大きかったせいだろう。今となっては白昼夢のようですらある。
　第三湖東ビル、茅芽笹子、研究室。偽りの日々脳に流れ込んできた。自分の記憶が自分のものではないとして、その自分の選んだ道と、自分の記憶が自分のものである自分が選ぶ道は、果たして同じ結果になるだろうか──意味のない問いだ。人生は一度しかないし、自分は一人しか居ない。

　上司との合流は、言いようのない、漠然とした、しかし致命的なしくじりの焦燥を胸に抱えてのことだったが。疲弊しているのはお互い様のようで、かなり当たりが強かったと記憶している。尋問のような口調で必要最低限の情報交換を交わす上司の姿は、疑心暗鬼な心の内をそのまま曝け出すようでもあった。
　精神の摩耗は望まぬ消耗を招く。記憶すらも捻じ曲げられるハザマを前に、冷静さを取り戻す必要がある。何よりも、不調を隠し強がる上司の姿を見たくはなかった。
　第一の順序として、上司との信頼構築に努めた。ワールドスワップが説明通りの長丁場ならば、まずは信用を、共に歩めるだけの信用が欲しい。劇的な変化を望むよりは、ある程度の時間を覚悟すべきだろう。
　思えば、異能はこの頃から何かを囁いていたのかもしれない。善か愚かとは断じずに、どちらを選んでも必ず後悔するように──仕組まれたイカサマギャンブルの胴元が直感だとすれば、負けを清算する頃にはどれほどまでに膨れ上がっているのだろう。

　ぎくしゃくしていた、と思う。
　互いにイバラの記憶とハザマの記憶の混濁が邪魔をしていた、と思う。
　危機意識の共有にはこぎ着けたものの、依然として円滑な関係性を築けぬもどかしさと不安から救ってくれたのは、皮肉にもアンジニティだった。あまりにもお粗末な結果だったといえるが、共通の脅威に当たることは関係性を進める足掛かりとなった。
　コインには裏と表があり、人にも裏と表がある。アンジニティが表だとすれば、敵対した彼にとっては裏こそがイバラシティだ──同時に、己も例外ではない。

「貴方、自分の行動におかしなところが多々見受けられるのに気づいてる？　何かあったのなら、話して頂戴」
「──知り合いだったんですよ。イバラシティでは……これが思ってたより堪えてるみたいです。知り合いが敵かもしれないっていうのは」

　その言葉は、そっくりそのまま自分にも跳ね返る刃だった。人にはコインと同じく裏と表がある。握りしめた刃で血を流しながら、その手で己の胸に突き立てるかのように無為な自傷行為に他ならない。よく出来た皮肉だが、上司に嘘をつくことはこの上ない悪手だ。直感に頼るまでもなく理解できる。己を偽らざることの美徳は、後悔しないことにこそあると信じて。



「──じゃあ改めて、もう知ってると思うけど、私は茅芽笹子、『いいひと』所属の、まあ研究員だったわ、……更迭されてここにいるわけだれども」
「僕は偽黒初。僕も研究員でした。『いいひと』の、開発薬科で……薬の開発の手伝いの助手を」
「……そう、薬科の……」
「異能は有有有利有利有利ってことになってるみたいです。こっちでもそれっぽい感じの異能が使えてるみたいですね」

　出自を明かし異能について語るのは、手の内を晒すと言い換えても良いだろう。今後に備えた必要な情報のやりとりは、互いの信用の上に成り立つ。伏せていたカードを明かす作業は秘密の共有だ──ロマンスは始まらなかったが。
　ともに所属する組織が同じなのは、イバラシティでも同じである。捻じ曲げられた記憶で生きる中にあっても、根源の部分は変わらない。どこに居ようと、どう生きようと、自分が自分であるように。

（それは、違う）



　守護者と呼ばれる敵性存在を数体破壊し、陣営に少なからぬ協力者を得た。運命の悪戯で茅芽笹子と疑似的に敵対した際は、世を司るあらゆる女神を恨みはしたが。古風な価値観だが、一度拳を交えたことで互いに理解が深まった面もある。順序として、次に来ることは直感が理解っていた。必要な準備は済ませたつもりだ。

「……話してなかったことがある。意図的に伏せていた、とも言えるわ。ひと段落した今、伝えよう……伝えたいと思うのだけれども聞いてもらえるかしら」
「僕は見えないものは””無いもの””として扱ってます。耳に届かない陰口とか──伏せられた話とか。だから、聞けば””あるもの””になっちゃいますが……」

　切り出したのは、上司の方からだった。覚悟を決めたような顔つきは、どこか物憂げな陰をたたえていた。
　ならば自分は精一杯、受け入れる側を努めよう。信用に応え、頼られる存在であろう。脳裏をかすめる罪悪感を無視すると、引き返せない一歩を踏み出そうとする、上司の覚悟を受け入れる。

「まあ、大丈夫ですよ。隠し事の一つ二つ、誰にでもありますしね。それに僕は、茅芽さんの信用は絶対に裏切りません。どんな話であっても、どんなことがあっても」
「そう、ありがとう。なら、聞いて頂戴」

　上司の話、それは秘密の共有の延長線上に位置するものだった。戦闘に使っていた液状生命体の名前がゾルであること、本来の所有者ではないこと、彼の本来の宿主を救うために力を借りていること。伏せたカードがめくられる。

「……そして彼女が、私が旅をしている理由。彼女を救う手立てを、できればこの旅の途中で見つけたいと思ってる」
「旅ってどういうことですか？　以前から似たようなことを？」
「『そのとおり』と言うのがまず回答よ。かつて、私はこことは違う世界を旅して……失敗したわ。私の旅のきっかけになったのは、その以前にゾルと彼女がまた別の世界を旅した事に由来する。突拍子もない話でしょう？……ただあの日、帰り道で行き倒れていた彼女とこのゾルを拾って……保護してから、旅を続けているわ」
「なるほど」

　上司が苦い表情を浮かべたのは、その記憶が苦い過去だからだろう。
　彼女にとっては失敗を積み重ねてきた敗北の歴史だ。挫折を繰り返し、なおも足掻くことを諦めず、未だ鍵を掴めずにいる。目的を果たせない以上、旅を終わらせることが出来ないのだから。

「分かりました」

　与えられた選択肢に対して、テーブルにはない答えを出せるのが主人公の証だと聞いたことがある。
　大きく息を吸って。肩の力を抜き、眼鏡の位置を細かく調整する。閉じた目を開く。自分の答えを伝えるために。

「成功させましょうよ、旅。単純な話じゃないですか。やるべきことは変わらないし、これからは僕も目的を共有できます。だから大丈夫ですよ──なんというか、他人事じゃない気がするんですよね。行き倒れて保護されて……それは、心細いことです」
「……ごめんなさい。思っていたよりも、ずっと、力強い、申し出だわ。だから、そうね。ありがとう。そう言うべきなんだわ、きっと。」
「そんなに持ち上げないでくださいよ。さ──茅芽さんには茅芽さんの事情があるように、僕にも僕の事情があるだけです。利害一致ってだけで」

　言いなれた呼び方が口をついて出そうになるのを抑え、目の前の上司を改めて認識する。
　強い女性だ。口ぶりからして、本当に今まで誰にも相談したことがなかったのだろう。組織の中で動く以上、人の命が弱みとなることもある。どんな組織も一枚岩ではない──自分の知る『いいひと』は、つまるところそんな場所だった。信用できる誰かの協力を得なければ生きていくことすら難しい。ハザマの構図に類似しているのは、皮肉としては上出来だ。

「でもまあ、僕らも似たようなもんじゃないですか……このどさくさを乗り切らないことには、僕らだって危うい──あれ、あんまりいい話題じゃなくなってしまった。忘れてください」
「それで、此方の事情を知ってもらったうえで、これからの話なのだけれども……。」
「聞きますよ。一人で──いや、一人と一体ですか。それで悩んでるよりは、僕も加えて文殊超越していきましょう」

　出会ったことのない少女のために命を賭けるのも悪くない。それで上司を──笹子さんを救えるのならば、ますます悪くない。
　未来に向けた話の中で、後ろめたさに絶えず苛まれている。こちらにはまだ、カードが伏せてあるのだから。


（それは、違う）



　彼──偽黒初が持つ異能は、その名の通り””リスクリターンの直感を強化する異能””だと考えている。
　直感とは心眼であり、第六感であり、無意識であり、およそ人間が意図的に制御しうる領域の外にある働きだ。直感の強化とは何か。本当に強化されているのか。強化されるのは本当に直感だけなのか。制御の外を自覚できるのか。単なる偶然と思い込みではないのか──疑えば疑うほどに疑わしい。《有有有利有利有利》は、彼だけが存在を信じるただの偽薬かもしれない。

（それは、違う）

　異能を信じる理由の一つとして代償がある。一人で扱える異能の許容量を超え、無理やり自己強化を実現する。負荷も重く、リターンに対するリスクとして極度に精神が疲弊するが、使わざるを得ない。結果として、ハザマの彼は頭痛に苛まれている。
　ハザマは異能を強化するが、肉体は強化されない。強化された異能を操る肉体はハザマによる強化の恩恵を受けることなく、天秤に傾きが生じる。《有有有利有利有利》は直感を強化する。強化されていなければ、異能の基準は一人分になる。
　戦闘中には、これを強化して使う。強化された直感は何人分だろうか。二人分の強さ、すなわち二倍の強化倍率であれば、一人の自我で二人の異能を制御することになる。三倍、四倍となれば……自我の器からこぼれた異能は、一体どこに向かうのだろう。あるいは、自分に流れ込む異能はどこからやってくるのだろう。自分ではない別の誰かが、異能が、自我を蝕んでいるのか。

（それは、違う）

　ハザマは異能の行使を彼に求め続けた。彼からリスクを取り立て続けた。
　アンジニティとのデュエルの中で、彼は異能を使い続けた。ベースキャンプへの帰り際には、切り札として異能の三重掛けまで行ってみせた。
　己の外にあるものを強化して用いることが、己の内にある肉体にどう影響するのか──リスクには目をつぶったまま、異能の行使だけが続く。リスクからは目を背けて、やがて忘れてしまう。重複強化が出来てしまったのも不幸だった。異能の上に重ねた異能だ。強化と同じ倍率で、リスクも嵩んでいく。

（それは、違う）

　兆候はあった。
　直感を使ってたどり着いたのは。肉体や自我を超えて異能が強化され、制御出来ない何かが強化され、強化された異能を使い続けた先に待っていたのは、直感の暴走だった。一人の自我では複数の異能を御しきれず、直感は己の制御を外れた。
　己の物だと信じていた直感が、今や己の手を離れた。自我の内側、自我の上の上位自我、そこに自我の制御下にない何物かが割り込んでいるような錯覚。囁き声はその証だ。望む望まざるに関わらず、直感は何かを囁く。賭け金を吊り上げ、ツケを支払わせようとする。

（それは、違う）

　覚悟は決めていた。茅芽笹子を救うため、己に出来る全てを行うと。
　直感は囁かない。
　ならばこの、絶えず聞こえる”””囁き声”””は何だろう。

ENo.831 Dr.笹子 とのやりとり

麺屋の龍人(1595) から すごい液体（石） を手渡しされました。

守護者の姿が消え去った――

　

　

六角形の柱から天に向け、赤色の光柱が立つ。

どうやら次元タクシーで行けるようになったようだ。

響鳴LV を 20 DOWN。（LV30⇒10、+20CP、-20FP）
防具LV を 30 DOWN。（LV30⇒0、+30CP、-30FP）

時空LV を 25 UP！（LV5⇒30、-25CP）
付加LV を 25 UP！（LV35⇒60、-25CP）
合成LV を 10 UP！（LV30⇒40、-10CP）

さき(911) の持つ ItemNo.33 風の声 に ItemNo.14 すごい木材 を付加しようとしましたが、相手から取引生産許可が出ていませんでした。
オニキス(301) の持つ ItemNo.21 木のタリスマン に ItemNo.18 看板 を付加しました！
巳羽(473) の持つ ItemNo.37 すごい石材 に ItemNo.34 公孫樹 を付加しようとしましたが、指定アイテムが装備品と素材ではありませんでした。

ウドンナ(1124) とカードを交換しました！

ファミレス （サイケデリア）


ムスケルクラフト を研究しました！（深度0⇒1）
ディープブルー を研究しました！（深度0⇒1）
グリムリーパー を研究しました！（深度0⇒1）

ラプチャー を習得！
ソルプレーザ を習得！
ファントムシーフ を習得！
風霊力 を習得！
龍翔鳳舞 を習得！
鏡花風月 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

麺屋の龍人(1595) は 鉄板 を入手！
偽黒初(77) は 毒液 を入手！
偽黒初(77) は 瑪瑙 を入手！
偽黒初(77) は 瑪瑙 を入手！

現在のパーティから離脱しました！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

Dr.笹子(831) をパーティに勧誘しました！
『ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》
　　 - Dr.笹子(831) の選択は ヒノデ区 M-11：チェックポイント《大通り》

MISSION!!
ヒノデ区 E-4：海鳥カフェ を選択！
　　 - 偽黒初(77) の選択は ヒノデ区 E-4：海鳥カフェ

［871 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［441 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［177 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［377 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［286 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［199 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［137 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［56 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［122 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［92 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［90 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［83 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［0 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［8 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　　　ザザッ――

　

　

　






チャットにノウレットが現れる。

･･･が、どうも雰囲気が異なっている。

　





　




　





　





　

　

　

チャットが閉じられる――

ヒノデ区、海鳥カフェ。

眺めの良い海辺･･･とは、ハザマではあまり言えないが、

お店自体はイバラシティでの様子とあまり変わらないように見える。

　

･････ある点を除いて。

　






　

一切の鳴き声をあげず、カフェの周囲を飛んでいる。

その目は既にこちらを捉えており、巨体が静かに近づいてくる･･･