［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　結果から言えば、仕事は成功だった。一点を除いては。
　患者の家の一室で、私は依頼主に状況の報告をしていた。おおよそはうまくいって、残るは一つだけだと。依頼主は驚いたような顔をしたが、持ってきたカメラで撮った患者の姿でやっと信じてくれたようだった。治療を求めて神社にやってくる人々は、大抵が半信半疑だが藁にもすがる思いで訪ねてくるし、成功して明らかに顔色が良くなって初めて呪禁というものを信じてくれるというのがほとんどだ。この依頼主も、訪ねてきた時点ではどうせ成功しないだろう、もしくはインチキ霊能の類だと思っているのは明白だった。ただもうほかにすがるものがないから来ただけだろう。それ自体はもう慣れているから構わない。それよりも大切なことがあった。
　人払いをし、依頼主すら遠ざけて行った治療は功を奏して、残るは元凶を除くだけだった。
　そう、元凶があったのだ。厄はそこから延々と流し込まれ、その場で禊祓をしただけではまた悪くなるだろう。本当に治すためには、根源から清める必要があった。
　だから、これ以上呪うのはやめてくださいと、その術は信心の浅い素人に使いこなせるものではないと説得したのだ。


　予想に反して一番驚いた顔をした自称弟子の言葉が終わるかどうかの際に、目を見開いた依頼主がその少年の背後に素早く回ると片腕で首を絞め、もう片方の手で彼の首筋に長い釘を突きつけた。私の反応が一瞬遅れたのは、あまりにも強烈なにおいがして両手で鼻を押さえてしまったからだ。
　女性から湧き出るように大きく広がる、暗くて深い色の穢れと、腐りきったどぶのようなにおいが。


　涙混じりに叫んで、あとは母親への恨みつらみを延々と吐き出した。言葉は呪詛だ。彼女が喋るたびに口からはどす黒いモヤときつくなるどぶのにおいが溢れていく。これだけの恨みがあるのなら、あの母親の状態にも頷ける。あれは一朝一夕の感情ではありえない具合だった。
　それでも、私のもとを訪ねてきてくれたのもあれだけ憔悴するほど看病をしているのもきっと罪悪感からだろうと、だから説得すれば思い直してくれるんじゃないかと、そう思ったのだ。
　反応が遅れたとはいえ、手元には護身用の式陣を起動させる御札がある。でも、専門に訓練したわけではない私が起動するにはどうしたって数秒かかる。素人目にも何かが起きるとはわかってしまうし、少年の首には依頼主が少しでも驚けばその拍子に刺さってしまいそうな位置に釘がギラついている。たとえ本当にその気がなくとも、あれだけの大きさの釘が少しでも刺されば無事で済むはずがない。
　私はいつも甘い。善意を信じて彼女を説得しようとしてしまったことも、少年を連れてきてしまったことも、万が一に対する備えが少なかったことも、いつも甘い。今悔いてもどうしようもないのにそんなことばかりが頭を巡って、この状況からの打開策も浮かばないまま、じっと依頼主の呪詛を聞いている。


　膠着状態に陥ったこの部屋で、ふと少年が口を開く。依頼主が再び目を見開いてぎっと睨んでくるのも気にせず、少年は言葉を続ける。
　やめて。






　やめて！
　私が叫んだのと、式陣が起動したのと、少年の首に釘が刺さったのはほとんど同時だった。








　私はゆるく首を横に振る。どう言われようと、彼の治療をやめる気にはなれなかった。
　少年は、死にはしなかった。私達を迎えに来ていた出仕さんが私の叫び声を聞いてすぐに踏み込んでくれて、少年の応急処置で動けない私のかわりに患者の家の電話から救急車を呼んでくれた。そのときにはもう依頼主は式陣の影響で動けなくなっており、少年は気を失っていた。
　曲がりなりにも医師免許を取っているから、適切な応急処置はできていたはずだと思う。ただ、私も平常心を失っていて、だから本当に最上だったかと言われると自信がない。でも、でも、結果を見ると、きっと違ったんだろうと思う。

　彼は、体の完全な自由を失った。手も、足も、舌さえも。

　本人は未だに私を見るたびに顔を明るくさせて師匠と呼んでくれるが、彼の家族はやりきれないようだった。それでも私を一方的に責めたりはせず、ただ、命があってよかったとそればかりを口にした。きっと、直接的に家族を救われたことと、直接的ではないにしろ家族を傷つけられたことと、その二つがせめぎ合った結果なのだろうと思う。
　いくら謝っても足りる気がしなくて、私はあの日から毎日病院に通って、入院している彼に治療を施し続けている。もちろん医療の方面は専門家がいるから、私にできることといえば呪禁的方面からの治療だけだ。少しでも、わずかでも、彼の傷の完治とリハビリの足しになればと思ったのだ。お金は取らない。取れるわけがない。

　本当は彼が失わずに済んだものは二つあった。命と、正常な精神だ。普段の禊祓が幸いして、あれだけの濃度と量の呪詛から精神を守れたのだ。これは私のおかげでもなんでもない。彼が自らやっていたことが効果的に働いただけだ。
　そんな彼の将来を、奪ってしまったのは、私だ。
　もっと危機管理をしっかりしていれば。説得しようと決めたときに、少年を巻き込むことは予想できたはずなのに。
　本当に怖さの実感が足りていないのは私だった。弟子になりたいという子供が現れて、なんだか私自身を好まれた気がして、浮かれてしまったのだ。好まれたのは呪禁で、治療で、家族を治したという力だったのに。
　彼が生まれ持った神力が薄いことも最初からわかっていた。だから、最初からきつく言って追い返さなければならなかったのに。そうでなければ、きちんと危険性を説いて、自分の身を守る術を教えて、そういうところから始めなければならなかったのに。もう一度やり直せるのなら。

　後悔が先に立つことなんてない。これから私は彼に何をしたらいいのだろう。それとも、何もせず関わりを絶ってしまうほうが。
　そんなの、今考えたってどうにもなるわけがないのに。


　だから、そんなふうに、笑いかけないで。







　春が来る少し前、私はその神社を去った。契約はまだ残っていたのだけれど、あまりにも私自身の精神が穢れてしまったからだ。呪禁はその術のほとんどが厄や穢れに冒される前に心身を守るものだから、自ら穢れを生むようではろくに呪禁ができていない証左になってしまう。そのことを聞きつけた師匠から、後のことは兄弟弟子に頼んだから来いと言われれば従うほかない。私自身、少し仕事からは離れなければと思っていた。他人の治療をできない呪禁師なんて、神社にいたって仕方ない。
　だから、最後に、出仕の方にお守りを一つだけ託していくことにした。もし彼が、またこの社に訪れることがあれば、渡してほしいと。
　何度も病院を訪れていて、彼の家族の視線がだんだんと痛くなってきたことにはさすがの私も気づいていた。だから、私からじゃなくて、彼から訪れることがあれば。
　私の愛する神様の、お膝元のお守りだから。きっと私の呪禁よりも、彼には必要になるだろう。

　でも、どうか彼が受け取ることがありませんように。

　それから、彼がどうしたかは知らない。
　でも、きっと、彼のことだから。




　あの社とは少し違う匂いだけれど、この家にも柔らかな山の匂いが漂っている。
　彼は、元気だろうか。

八生(271) に ItemNo.34 燐灰石 を手渡ししました。

龍は起き上がり、再び上空へと消える。

　

龍の頭から小さな光の玉が出て、

空へと飛び去って行くのが見えた。

幻術LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
付加LV を 15 UP！（LV67⇒82、-15CP）

日明と月夜(285) により ItemNo.32 霞石 から隔壁『式陣：凍壁』を作製してもらいました！
　⇒ 式陣：凍壁／隔壁：強さ163／［効果1］放凍20 ［効果2］－ ［効果3］－

リカルド(28) の持つ ItemNo.28 とある符術師の呪符 に ItemNo.18 タイヤ片 を付加しました！
リカルド(28) の持つ ItemNo.28 とある符術師の呪符 に ItemNo.12 皮 を付加しました！
リカルド(28) の持つ ItemNo.28 とある符術師の呪符 に ItemNo.30 駄物 を付加しました！

紅(933) とカードを交換しました！

快気功 （パワフルヒール）


アイシング を研究しました！（深度0⇒1）
アイシング を研究しました！（深度1⇒2）
アイシング を研究しました！（深度2⇒3）

アトラクト を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

リカルド(28) は 柿 を入手！
八生(271) は 火焔茸 を入手！
日明と月夜(285) は ふきのとう を入手！
冷泉といちか(533) は 火焔茸 を入手！
リカルド(28) は 毛皮+1 を入手！
日明と月夜(285) は とげとげ を入手！
八生(271) は 毒牙 を入手！
冷泉といちか(533) は とげとげ を入手！
リカルド(28) は 風龍の鱗 を入手！

日明と月夜(285) に移動を委ねました。

リュウジン区 C-15（森林）に移動！（体調15⇒14）
リュウジン区 C-16（草原）に移動！（体調14⇒13）
リュウジン区 C-17（チェックポイント）に移動！（体調13⇒12）
チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『ウシ区 R-4：チェックポイント《古寺》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 日明と月夜(285) の選択は ウシ区 R-4：チェックポイント《古寺》

MISSION!!
リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》 が発生！
　　 - リカルド(28) が経由した リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》
　　 - 八生(271) が経由した リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》
　　 - 日明と月夜(285) が経由した リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》
　　 - 冷泉といちか(533) が経由した リュウジン区 C-17：チェックポイント《道の駅》

［871 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［441 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［177 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［377 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［286 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［199 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［137 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［56 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［122 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［92 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［90 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［83 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［0 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［8 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　　　ザザッ――

　

　

　






チャットにノウレットが現れる。

･･･が、どうも雰囲気が異なっている。

　





　




　





　





　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！