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栄平40年　12月31日


そもそも深谷は、退魔師を続けるつもりはなかった。

己の信仰に疑問を抱いて、育ててもらった社に背を向けた以上、神に仕え続けるつもりはなかった。
何も神職に拘らなくても、職ならすぐに見つかるし、
神から離れ、信仰から距離を置いて暮らすのは、そう難しくないと思っていた。
思っていただけだ。現実は違った。

俗世の──"普通の"人々は、神の実在を知らない。
真に願えば神が背を押してくれることも、病苦が神によって和らぐことも、
風が、世界が、神の力によって回っていることを知らない。

深谷がそう話したとて、否定はされない。
ただ、困ったような顔をして「信心深いんですね」などと、曖昧に言われるばかり。
その生ぬるい対応に、かえって、己の考えが馴染まないものだと思い知る。

思えば沙耶は……死んだ妻は、その違和感を、うまく感じさせないようにしてくれた。







あるいは、通じ合っているという思い込みが、その断絶を覆い隠していたのか。
今となってはわからない。
愛してはいた。そして愛されてもいたと思う。
それでも彼女が、自分のどこかに違和感を感じていたのかと、そう考えてしまうから
尚更、"普通の社会"というもの、世俗というものに、馴染めなくなっていった。

どこまで行っても、所詮自分は、鳥居から生まれた神の子だ。
染み付いた生き方はもはや変えることができず、神の道を逸れれば生きてはいけない。
自ら落伍しながらも、醜く神にしがみつき、名ばかりの禰宜を名乗って生きる。

それが深谷という『妖怪狩り』だった。

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深谷が移動した先は、下方寄りの土地だった。
都市の賑わいこそ遠かったが、そこへ働きに出る人々が住まう街で、人口は多い。
人が多い所では、妖怪も増える。

適度に都会化した街は危険だ。
近代化が進めば、どうしたって人の足は寺社から遠ざかる。
ふつう、水害の多い土地には水神が招かれることが多く、
嵐の多い土地柄なら、嵐や風の神が祀られる。
人はその歴史から、自分たちを守ってくれる神を祀り、加護を祈ってきた。
その祈りがなければ、神の力は弱まり、本来その土地にあった災禍が力を増すことになる。

もちろん人も人で、治水や防火やら災害対策やらと技術を発展させてきたが、
それはあくまで芽吹いたものを刈り取るだけのこと。
種から芽を生やさぬがごとく、害が起こる前に防ぐというのは、人には理解されにくい。

要所なのだ、ここは。
なのにこの地域を預かる退魔師が──賀茂という名前の男だ──
土地に不釣り合いな実力しかないのは、不幸と言う他ない。
無能だからこそ、妖怪の恨みを買うことなく生き残っているとも言えるが。


何を言っても仕方のないことだ。
優秀な退魔師は早死にする。それは深谷が思い悩んだって変えられない、当たり前のことだった。

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夜は妖怪の動きが活発になる。
だから通常、退魔師は危険を避け、明け方や昼間に活動するものだった。
日のあるうちに妖怪の残滓を辿り、どこから発生した妖怪か調べ
妖怪の集まりやすい要所、負の力の吹き溜まりめいた場所を探して、罠を仕掛けて弱らせ、祓う。

そういった通常のやり方は、深谷にとっては、ひどく手間の多いやり方だった。
身の危険もまたあったが、深谷はそれに頓着できるほど、己の身が可愛くもない。

一度来たことのある街だから、要所の位置はおおよそ頭に入っている。
夜半近く、行き交う酔漢を横目に、深谷は繁華街を歩き回っていた。

特に確認すべきなのは人の集まる場所、その上で人通りの少ない路地や建物裏の道などだった。
負の感情、負の力は、どうしたって賑わいから離れた場所に集まり、積もっていく。
妖怪はそこから生まれ、土地の特性に応じて"育つ"。
逆に言えば、その生まれ育つ要所を狙って清めれば、簡単に済む。そういうやり方だった。

最初の一か月ほどは、それで十分な効果が上がった。
次の一か月はほとんど成果が上がらなかったが、それは小物を狩り尽くした証のようなものだった。
やがて縄張りを荒らされ怒った上位のものが、ふらふらと出歩くようになる。
それこそが深谷の狙いだった。

妖怪を知覚できる人間は多くない。
深谷はそれを隠さず、妖怪を見かければ祓い、あるいは威嚇していたから、
早晩、襲ってくるだろうと思っていた。
だからそれ以上は特別な事もせず、要所に敷いた結界の維持に努める。

だが、深谷の思惑に反して、妖怪は現れなかった。

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夏から冬へ。そうして年が改まっても、成果らしい成果は上がらない。
賀茂はわかっているのかいないのか、十分だなどと言ってはいたが、深谷にはそうとは思えなかった。
これで十分なんて言うから、妖怪の食い物にされているのだ。


思い当たるとすれば、自分が数年前にもここに来たことだ。
その時に手を尽くした分、妖怪の警戒を強めてしまったのかもしれない。
妖怪は人と違って群れないが、強い退魔師や、妖怪にとっての"狩場"……無警戒な土地や人の話はあっという間に広まるものだ。
深谷と言えど妖怪を一匹残らず狩り尽くすことはできないし、これはもう、どうしようもなかった。


幸い、時間はいくらでもある。
しばらくここに留まって、長期戦に挑むのも悪くはないと思った。

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そうして一年あまりが経っても、これという成果は上がらなかった。

ままあることだ。
賀茂などはもう、妖怪は狩り尽くされたつもりでいたが、深谷はそうは思わない。


そして小物は、それを恐れて顔を出さないか、完全に支配下にいるのだろう。
妖怪には秩序なんてないが、反面、強いものには驚くほど従順だ。
頭を潰さねば、有象無象も潰せない。


吐き出した煙が、もうもうと天井にわだかまっている。
明るく騒がしいのはテレビからの声だ。
今日は12月31日。栄平の年が終わる。

大八洲の今の帝は譲位を終えているから、明日からは新しい年だ。
新しい元号は何だったか。
さっきテレビで誰かが言ったはずなのに、もう思い出せない。


どうでもいい事ではある。
明日の事も、来年の自分がどうなろうと、どうせ判で押したような、同じ暮らしを続けるだけだ。

だから来年こそは、一仕事が終えられればいいと。
そう思うだけだった。

ENo.502 ナックラヴィー とのやりとり


ENo.751 くもよび とのやりとり


ENo.1192 『執心』 とのやりとり

ItemNo.99 を破棄しようとしましたが、そこに果たして何があったのか･･･真実は闇の中です。
ItemNo.98 を破棄しようとしましたが、そこに果たして何があったのか･･･真実は闇の中です。

『地図』(580) に ItemNo.33 ぬめぬめ を手渡ししました。

ItemNo.99 を食そうとしましたが、何か美味しいモノの幻を見ていたようです。

『地図』(580) の持つ ItemNo.12 たけのこ から料理『網焼きたけのこ』をつくりました！

緋染の白花(968) とカードを交換しました！

花精魔術：白妙菊 （クライオセラピー）


ディープブルー を研究しました！（深度0⇒1）
ジャイアントキル を研究しました！（深度0⇒1）
ジャイアントキル を研究しました！（深度1⇒2）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

不浄の滝(158) は スポンジ を入手！
『地図』(580) は 蒲公英 を入手！
不浄の滝(158) は 橙小石 を入手！
『地図』(580) は 橙小石 を入手！

▼エイド化候補（基本行動にてエイド化可能）
『地図』(580) のもとに 岩投げ師 がスキップしながら近づいてきます。

現在のパーティから離脱しました！

ウシ区 E-13（森林）に移動！（体調25⇒24）
ウシ区 F-13（森林）に移動！（体調24⇒23）
ウシ区 G-13（山岳）に移動！（体調23⇒22）
ウシ区 H-13（山岳）に移動！（体調22⇒21）
チナミ区 B-4（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

タウラシアス(173) をパーティに勧誘しました！
ナックラヴィー(502) をパーティに勧誘しました！
『カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 不浄の滝(158) の選択は カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》
　　 - タウラシアス(173) の選択は カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》
　　 - ナックラヴィー(502) の選択は カミセイ区 S-13：チェックポイント《鰻屋》

MISSION!!
マガサ区 K-8：チェックポイント《駅舎》 を選択！
　　 - 不浄の滝(158) の選択は マガサ区 K-8：チェックポイント《駅舎》
　　 - タウラシアス(173) の選択は マガサ区 K-8：チェックポイント《駅舎》
　　 - ナックラヴィー(502) の選択は マガサ区 K-8：チェックポイント《駅舎》

［844 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［412 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［464 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［156 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［340 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［237 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［160 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［97 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［41 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［17 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破



　

　

　

　　　ぽつ･･･

　

　

　

　　　　　　　　　ぽつ･･･

　

　

　



　




　

　

　

　　　　　　サァ･･･――

　

　

　

雨が降る。

　

　

　

　

　

　




よく見ると雨は赤黒く、やや重い。

　




降ってくる雨を手で受け止める。

　

　

雨は手に当たると同時に赤い煙となり消えてしまう。

地面にも雨は溜まらず、赤い薄煙がゆらゆらと舞っている。

　

　




　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！