
―― 2020.6.30
深海に堕ちる夢を見た。
何も聞こえない世界は居心地がよかった。何も感じない。誰にも気づかれない代わりに誰かに傷つけられることもない。
けれど、知っている者に手をかけていた。常夜さん、舞華さん、九重さん、真海さん、カサドールさん、トウシロウさん、なずみ、クラリッサ、輪さん、日明さん、スグルさん、冴さん。12人に、干渉してしまった。この罪は抱えていく。起こしてしまったことは『こんなことになるなんて』で済まされない。
覆水盆に返らず。もう二度と、繰り返さないように。
■増えた(進化した)異能
今回できるようになったことは、
・声が出なくても精神干渉を行える(ただし発声の動作は必要)
・一度に
4種類の精神干渉を行える
3種類まで、だと思っていたがガゥワィエに調べてもらった結果、4種類だということが分かった。
また、声から心を読んでいたものが、異能が変質したことによりその存在から音を聞くものに変化している。
前者を『深き海の孤独なる歌姫(ディープ・シー・ソロライブ)』、後者を『独り四重奏(ロンリー・カルテット)』と名付けることにした。
■異能の暴走の可能性
異能の暴走は、再発する可能性がある。
トリガーは、『耳を塞ぎたい』と強く願うこと。心を閉ざし聞こえる声から逃避を望むと暴発する。
逃避を願えば、逃避を叶えてくれる。認識阻害の歌だけを歌う状態に陥ったのなら、誰にも迷惑をかけずに逝くこともできるのだろうが、心にエゴが残る限り『だけ』では済まされない可能性が高い。
■今回の暴走について
声の開放を願ったが故の、認識阻害の歌。これは自分を含めた、歌を聞いた者全てに効果があった。己の悲鳴も、周りの声も、何もかもが煩くて、心を閉ざすことを願った。
言うならば、逃げて夢に囚われるための歌。
トラウマの想起と、古傷の想起。これは、今までふさぎ込んだ悲鳴が精神干渉を起こしたもの。この異能は、言霊が宿らない。発声こそするが、声に心は宿っていない、故に記『憶』することができず、『音』と成り果てる。
されど、心がなければ精神干渉は成立しない。故に、これは音に心が込められているのではなく。音そのものが、心だということ。
どこまでも純粋な、純化された、心そのもの。
自分の、確かに抱いたエゴを、人に押し付ける異能。
あぁ、あぁ、この異能はどこまでも惨い力だ。
ただボクは。
―― 助けてほしかった。悲鳴を上げていた。
それが故に、引き起こしてしまったことは。
あぁ あぁ 違う 違うの 傷つけたかったんじゃないの
ただ ただ 声を 心を 知ってほしかっただけなの
なのに だというのに あぁ 嗚呼
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
誰かが囁いた
「助けを求めてるけど 一体あなたはどうすれば救われるの?」
まるで神様の囁きのような ぽつり 不意に聞こえた声
空耳のような 誰もいない場所で聞こえた声
そんなもの
私が聞きたいよ どうすればいいのか 分からない
もう 分からない なにもかも 分からないよ
だから どうか どうか
誰も なにも 連れていかないで
どうか どうか お願い だから
もう こんな苦しみから 解放して
―― 『とある海巫女の手帳』より
著 ツワォツ・エトパァイエ
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ちわわ 「うるせぇぇええええぇぇぇええええええええええええええええええ!!!!」 |
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おいなり 「何事ぉおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおお!?!?」 |
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ちわわ 「おっとうっかり。なんかすんげぇうるせぇ何かが聞こえてきた気がしてつい。幻聴かな。疲れてんのかもしれねぇ。」 |
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いたち 「疲れてるんじゃなくて憑かれてるんじゃ。鳴海的な意味で。」 |
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ちわわ 「おっ上手いな。座布団一枚。」 |
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おいなり 「ないので眞梨奈様作のビーフジャーキーを。」 |
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いたち 「それ今度ちわわちゃんが食べるんだよね?私が尻にひいたの食べるの?だめでしょ?」 |
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ちわわ 「尻にひかれんのはおいなりだけでいいな。」 |
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おいなり 「!?!?」 |
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いたち 「え、やだ、私はおいなり様を尻にひいたりしないし……ちょっとほら、私の意に反することをしたらめってして言う事聞いてもらうくらいだから……」 |
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ちわわ 「お前それでよく自分をか弱い白鼬だって言えるな……」 |
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おいなり 「そうですよ。いたちはよくやってくれます。わたくしの悪い面を訂正してくれます。本当に、ありがとうございます。」 |
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いたち 「きゃっ、おいなり様ったら……ふふ、そんなこと言われちゃったらいたち、もっと頑張っちゃう。」 |
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おいなり 「こちらこそ。これからもどうか、わたくしのお傍で支えてください。頼りにしていますよ、いたち。」 |
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ちわわ 「…………」 |
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ちわわ 「典型的なダメ男だ――」 |

[842 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[382 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[420 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[127 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[233 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[43 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[27 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
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白南海 「・・・・・おや、どうしました?まだ恐怖心が拭えねぇんすか?」 |
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エディアン 「・・・何を澄ました顔で。窓に勧誘したの、貴方ですよね。」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
落ち着きなくウロウロと歩き回っている白南海。
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白南海 「・・・・・・・・・あああぁぁワカァァ!! 俺これ嫌っすよぉぉ!!最初は世界を救うカッケー役割とか思ってたっすけどッ!!」 |
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エディアン 「わかわかわかわか・・・・・何を今更なっさけない。 そんなにワカが恋しいんです?そんなに頼もしいんです?」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
ゆらりと顔を上げ、微笑を浮かべる。
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白南海 「それはもう!若はとんでもねぇ器の持ち主でねぇッ!!」 |
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エディアン 「突然元気になった・・・・・」 |
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白南海 「俺が頼んだラーメンに若は、若のチャーシューメンのチャーシューを1枚分けてくれたんすよッ!!」 |
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エディアン 「・・・・・。・・・・他には?」 |
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白南海 「俺が501円のを1000円で買おうとしたとき、そっと1円足してくれたんすよ!!そっとッ!!」 |
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エディアン 「・・・・・あとは?」 |
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白南海 「俺が車道側歩いてたら、そっと車道側と代わってくれたんすよ!!そっとッ!!」 |
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エディアン 「・・・うーん。他の、あります?」 |
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白南海 「俺がアイスをシングルかダブルかで悩ん――」 |
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エディアン 「――あー、もういいです。いいでーす。」 |
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白南海 「・・・お分かりいただけましたか?若の素晴らしさ。」 |
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エディアン 「えぇぇーとってもーーー。」 |
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白南海 「いやー若の話をすると気分が良くなりますァ!」 |
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・・・・・・・あああぁぁワカァァ!!!!!!」 |
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エディアン 「・・・あーうるさい。帰りますよ?帰りますからねー。」 |
チャットが閉じられる――