「報告です。監視対象が自身の名前を思い出しました。後自己犠牲がマシな方向に動いたようです。
彼の街でのご友人方のお陰もあって、少なくとも自分から死にに行く様な事はし無さそうです。」

「前回の報告時よりは良くはなっているな。街の方はどうなっている？」

「街の方はと言いますと……本来の記憶を思い出す事を拒絶している状態です。
夢を通して思い出して行ってるんですが、如何せん色々とあったもので。」

「拒絶か……色々、とは何があったんだ」

「悪夢見て叫んで喉が裂けてました。」

「ちょっと待て」

「正確には共鳴してしまって負担が喉に掛かってしまったと言いますか……。
最近夢を自動で記録してくれる魔具を手に入れましてね。
それで夢を見てみた所まーえげつない内容ばかりが飛び出して来まして」

「ふむ……。
所で、此方でも今迄剪定されてきた世界線について調べてみたのだが。」

「何か分かった事ありました？」

「全ての記録の中で、怪物へと存在を歪曲させられた世界線のみだが。
監視対象の元であった『スイ』の結末の部分だけが消えている。
つまり監視対象はそれらの世界線を経た状態で今も存在している。」

「……えーっと、つまり彼が見ていた夢の光景は……」

「そうなった世界線全ての記憶という事になる。
酷い記憶ばかりが想起されるのも、それが関係している可能性がある」

「酷くない記憶も無いわけじゃないんですが、如何せん酷いものの数が多すぎるというのはありそうですね……。
それと、その夢で見た記憶が街での彼に影響を及ぼす、という事もあるようで。
喉に刺し傷の様な痣があったそうです。」

「喉に刺し傷の様な痣……記録には喉に対して刃物による刺傷を受けた事があるという記述が多数あった。
それもあってかトラウマの一つであるのかもしれんな」

「夢を通して思い出してもらうにあたって毎回こんな事なられても困るんですがねぇ……。
……あぁ、そういえば話は変わるんですが。
うちの世界の上の奴を殺してくれそうな人が見つかったんですよー。凄いですよね」

「話が変わり過ぎではないか？
それにアレは殺せたとしてもすぐ元に戻るぞ」

「だから、殺した後すぐにウツロさんにそれの役割を継いでもらう。
そうすれば元に戻った所で問題無いでしょう？」

「継ぐ事自体はやれん事は無いのだが……。
……貴様は簡単に言うが、そもそもアレを殺すのは楽ではない。
俺達では決して出来ん事をやれる規格外でも居たのか？」

「何か普通に神殺しの武器持ってました。」

「そんなものを普通に持っているのはおかしくないか。
そんなもので殺されたら流石のアレでもそのまま消滅しそうだな……。」

「さっき言った夢を記録してくれる魔具作ったのもその人なんですよ。」

「最早何でもありか？我々が言えたものではないが。
……そうだな。其方の方も準備を進めておこうか。」

「彼の様な結末を辿るものがもう生まれる事が無い様に、このチャンスは逃しちゃいけないと思いましてね。いざ改革の時です。

さて、今回の報告は以上になります。ではまた何時かに。」

「……あぁ」