これはイバラシティに居る真尾真央の日記だ。
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◆6月6日
今日はツクナミの施設でファッションショーがあった。
皆、どれも華となるに相応しい者たちであったが……個人的な贔屓で言えば。
アミナがその元気さでアイドルらしく振る舞い、見事優勝を勝ち取ったのが印象的であったな。
食堂であの音痴な歌声を聞いた時には、これでアイドル活動が出来るのかと思ったものじゃが。
エナが初ライブで見せたものといい、我はどうも成長というものに心打たれやすいらしい。
努力は無駄じゃない。
そう感じさせてくれる者たちの輝きは、我にとっても活力になる。
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ここでページが分かれている。
魔王がページをめくると、後ろから騒がしい愛の悪魔が舞い降りた。
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カノン 「ごきげんよう、カノンの愛する魔王様。今日もまた向こうでの日記を見返していたのですね。それにしても魔王様、ご自身はファッションショーに参加なされないので?」 |
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魔王 「我は主催する側じゃろ。あと他人のやつなら王家の者として来賓に呼ばれたり」 |
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カノン 「ああ、そういえばそんなこともあったような。でも魔王様の愛くるしいお姿、きっと皆さん見たいと思いますよ?この前の闘乱祭だって、魔王様がチアガール姿で応援してあげれば士気も上がったでしょうに」 |
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魔王 「ええい、あの時は裏方に徹してたんじゃ!」 |
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カノン 「カノンだってっ、チア魔王様に応援されながら全力疾走っ、したかったっ!!」 |
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魔王 「……」 |
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カノン 「冗談です♪ 愛していますよ、魔王様♪」 |
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◆6月6日 夜
忙しい日じゃな今日は!
夜、学院で流星群の観測会があった。
なんかUFO見えとらんかったか?
それはともかく。
星……特に流星を見てると、どこか懐かしい気持ちになる。
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カノン 「おや、向こうにはこちらの記憶は引き継がれないのがワールドスワップのルールではありませんでしたっけ」 |
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魔王 「実際全く覚えておらん。しかしあの感覚は……どう表現したものかのう。頭では一切理解してないのじゃが、胸の奥で何かがざわめくような。少なくとも、こっち側では味あわない感覚じゃ」 |
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カノン 「ふむふむ――なるほど、わかりました。 愛ですね!」 |
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(無言でカノンのいる領域に極太殲滅ビームを放った) |
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カノン 「ぎゃん」 |
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魔王 「郷愁とかノスタルジックとか、色々別の言葉があるじゃろ。……まーこれがあるうちは貴様の心配するような事態にはならん」 |
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カノン 「ええ、ええ……そのようです。ちょっと安心感。むかーし話してましたものね。魔王様の先祖は宇宙の果てからやってきたって」 |
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魔王 「そーじゃ。いずれ我は銀河系、ひいては宇宙全土を支配し、先祖の故郷であろう星をも支配下に置く。故に、こんなワールドスワップなどというふざけた遊戯に付き合っているわけにはいかんのじゃ」 |
――ぱたりと、日記の写しを閉じる。
これは記録だ。
イバラシティという空間で、魔王が別の存在として生きた。
およそ一年と少しになるであろう、短い記録。
こちらの記憶はイバラシティには受け継がれない。
イバラシティの記憶は単に忘れでもしない限りはこちらに受け継がれる。
故に、記憶があやふやになりやすい。
だから、こうして活動を記録に残しておくのだ。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――