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ハイネ 「行くぞ」 |
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ニレリア 「うん、まかせた」 |
ニレリアの頭に手を重ねて火を灯す。方法がわかった以上やることは一つだ。
魂を十全な物とするため、本当の意味でこの力を使う。
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ハイネ 「ふー」 |
暖かな光の奥に、今までと違うものを感じた。そこにあっても、知らなければ感じることすらできない。
これがきっと魂と呼ばれるもので、人を人たらしめるものだ。
今ならその姿を見ることだってできる。
もっとも、それは器に入った水を眺めるようなもので、酷く不確かなものではあるが。
その器はたしかに完全には満たされていないように感じられた。
これがニレリアの言う、1/4だけ欠けた影響なのだろう。
この穴を埋めてやれば、この世界から開放される。
ニレリアの持つ王の力は十全に発揮されて、ルールに従い外の世界への道が開けるはずだ。
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ニレリア 「やっぱりいい音がするよ。これが魂の震える音なんだね」 |
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ハイネ 「自分じゃさっぱりわからないけどな」 |
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ニレリア 「良いんだ、ハイネはこの音を聞く必要はないよ。そもそもこれが聞こえるってことは、空洞があるってことなんだから。僕だけの特権ってことにしておいてくれ」 |
ニレリアが笑う。
顔の大部分が手で覆われているため、顔はほとんど見えないのだけれど、どこか嬉しそうな響きが感じられた。
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ニレリア 「ところでさ、ハイネ」 |
足元でその姿を見つめるペットのカエルが、どこか不安げにその姿を見つめていた。
対してこんな時でもニレリアは普段どおりだというのに、治療を受ける側より周りのほうが心配してしまうのは、
この大きめのカエルの世界でも一緒らしい。
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ハイネ 「難しいことは無しで頼むぞ。簡単そうに見えるかもしれないが案外難しい。何しろ初めてだからな」 |
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ニレリア 「大丈夫だよすぐ済むからさ。あ、煙草吸っていい?」 |
そう言った時には既に火がついていた。顔を隠すように置いた手に熱が伝わってきて少し熱い。
お構いなしに煙を吹きかけてくるのだからなんとも自由なものだ。
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ニレリア 「ふー。あ、でさ、話したいのはその力のことなんだけど。僕なりにこれまで考えてきたんだよ」 |
チリチリと灰が長くなる。
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ニレリア 「不死鳥の聖灰って凄い力に思えるけど、一応この世界のルールにはそこまで反してないんだよね。よっぽど僕の力のほうが世界の理に反しているというか、理不尽と言うか」 |
たしかに、世に語られる魔法という概念の中からみれば、この力はありえない話ではない。
世の理を書き換える力の類ではあるが、あくまでも必要な手順を持って世界を逆行させるものだ。
傷を治す力の強化版と言ったところだろうか。
そこにはルールがあって、必ず必要な行程がある。
前ははじめの部分から目的を間違えていたから、望んでいたものと違う結果となった。
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ニレリア 「もちろん、死者をも蘇らせるって部分は凄いけど、こうして不完全だったわけだしさ」 |
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ニレリア 「でさ、ハイネも知っての通り不死鳥の聖灰を使うには必ず材料が必要なんだよね」 |
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ニレリア 「ナイフが欠けたら鉄くずが必要だったし、服が破れたら何かしらの繊維みたいなものが必要で、晩御飯の唐揚げには結局同じ量の鶏肉が必要だった。その辺のカエルでも代替できたけどね」 |
通常、傷を治すには様々な形で代償を支払い、例えばそれは体力の減少として表に現れる。
物を直すにはその分材料が必要だということだろう。
この世界に魔力なんてものがあれば、それで置き換えることもできるのだろうが。
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ニレリア 「まぁ、ようするに必ず同じである必要はないけど、なんとなく似ているものが必要なんだ。目的地を定める他にさ」 |
ニレリアの体の上を炎が走る。
細かな傷が光の中に消え、宙へと消えていく。
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ハイネ 「どういう意味だ。つまりニレリアは、まだ何か見落としがあると言いたいんだな」 |
この世界の住人は出来事を正しいと思いこむ。
つまり何か間違いを犯してもそれに気付けないままだ。少なくとも、この世界の中では。
それがこの世界が円滑に回ってきた理由であり、そしてそれ以上発展してこなかった理由だ。
だから、何かが足りないと言われれば、不安にもなるというものだ。
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ハイネ 「安心しろ、今度は失敗しない。魂の形も完全に捉えた」 |
ニレリアの奥底に輝くものに力を使う。輪郭を炎が覆い煌めきだした。
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ニレリア 「このことは、僕もハイネのおかげで気付いたんだけどね。なに、気にすることはないさ。僕はもうあの日からずっと、この日を待っていたんだ。今日ようやく、僕の願いは叶うよハイネ」 |
煙を吐き出したニレリアの口元がほころんだ。
その頬には暖かな液体が伝っていて、唇が僅かに震えていた。
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ニレリア 「姉さんがあんな風になって、それを元に戻してくれて、嬉しかったな。本当なら、悲しむことだってできなかったんだ。あぁ、ずっと君には感謝している」 |
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ニレリア 「後は頼んだよ、ハイネ。王になった時、ルールを決めるのは一度きりだ。君が無事この世界から開放されることを祈っているよ」 |
ニレリアが掌を掴んでより強く顔へと押し当てる。
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ハイネ 「何を言っている、ニレリア。何故そんなことを言う――」 |
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ニレリア 「魂はかけがえのないものだよね、ってことさハイネ。何を引き換えにしても、きっと足りないんだよ」 |
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ハイネ 「……ニレリア?」 |
輝く炎の中で、ニレリアの髪を指が撫でる。
伸ばした掌の先で輪郭が形を失い、指の隙間から真っ黒な液体が溢れ出した。
続けて、ごぼっと音を立ててニレリアの口から黒い液体が伝う。
しかしそれも少しの間のこと。すぐに全身が溶け落ちて、最後まで残っていた掌も後を追っていった。
こぼれ落ちた先で、薄く広がったその液体は寄り添っていたものへと染み込んで消えていく。
残っていたのは、さっきまでニレリアがつけていたピアスと、それを咥えるペットのカエルだけだった。

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
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エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
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白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
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エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
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白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
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エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
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白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
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白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
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エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
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エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
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白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
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声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
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声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
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エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――