
一方的にと言っていいだろう。
急にもたらされた情報は、聞き流すには衝撃的に過ぎる内容だった。
といっても。
それが真実かどうかということについては、それを証す手段は手の内にないし。
伝え来られたからといって、それで戸惑っても仕方がない。
そもそも影響力という話も、俺にはその多寡などはよくわからない。
どこまでが本当の話だろう。
少なくとも、試合を愉しんでいる――当事者としてここに在るアンジニティでも、イバラシティでもなく、それよりも一つ次元の高いところからこのぶつかり合いを見ている、というのは、おそらく誤りではないだろう。
そこを態々、遠回しでも伝え来る必要性がないといえば『ない』が。
――仮にそこに偽りがあったとしても、今の処は思惑が見えなさすぎる。
それよりは。
――『愉しませてくれるべき』試合を投げて呆けているような連中に、争え、さもなくば、という方が理屈は通っている。
イバラシティを守るでもなく。
アンジニティから攻めるでもなく。
実質的にはそのどちらにも付かない侭に、身の上だけはどちらかに寄せて。
風の吹く方向もわからないくらいに、歩むのを止めている連中は『面白くない』はずだ。
ナレハテ。
ここでの初めての戦闘で供された赤く、容を取るのもままならない。
しかし生きていたモノ。
まだそれほど前の話ではないからよくよく覚えている。
確か、ハザマの住人として作られたという話だった。
作られた、というような表現をしたということは。
それはもちろん、『原料たるべき何か』がいてもおかしくない話ではある。
‥‥たとえば。
それが今回この『試合』が始まる前の試合の参加者であった、とか。
あり得ない話ではない。
少なくとも、無から唐突に生えるよりはずっとずっと飲み込める話だ。
‥しかし。
それに関していえば、そういえば。
あのタクシーの運転手のニンゲンだって、ハザマの機能として、『在る』という話をしていたような。
そういうコトを言っていた割に、さっきの発言は、あまりにも唐突で、不自然じゃないか?
『チャット』の声色を、表情を思い返す。
‥俺は竜になってからも、なる前も。
それなりにヒトを見て生きてきたつもりだったが、さっぱり自信につながるような印象が残っていない。
ただ、思い返せば思い返すほどに、不自然じゃないか、という疑惑は確信を帯びてくる。
最初に『顔を出してきた』のは、確かナレハテと戦ったすぐに後だった。
そのときには。
まるで、自分は中立ですらないのだと。
あくまでもここの『機能』にすぎないとまで言っていたものが、どうして今頃。
――あたかも自分には『個』があって。
争うものを観て楽しんでいる、という立場を明確にした上で、『手短に用件だけ』を伝え来たのか?
――――あれは最初に出てきた運転手とは別の。
数多あるという車やヒトの身体をは質の異なる『本体』なんじゃないか?
言葉の遣い方にも。
立振る舞いの違いにも。
そして。
――本来であればそういうことをこれまでに伝え来ていたあのニンゲンの女を通じずに、直接に伝えてきたというのが、妙にひっかかる。
タクシー自体はともかくとして。
あのチャットに出てきた運転手自体は、もっともっとハザマの深奥に食い込んでいるんじゃないか?
――不自然性を出してきてでも強引に声を伝えてきたのはなぜだ。
仮にナレハテに化するのが真実であったとしても、それを伝えてくるメリットというのは、本当に『観戦気取り』ならほとんどないはずだ。
むしろ、伝えおかずに急に身体が崩れてしまうのを眺める方が、悪辣な趣味ではあるが、『観る』分には興をそそるだろう。
それから伝えて火を点けるのではいけない理由があるんだろうか?
それこそ、それからでは。
何かをするのに遅すぎるだとか――
「‥‥‥‥」
確かめる手段は、ない。
結局のところは印象の問題であって、ただひたすらにお節介を焼いてきたという可能性だってもちろんある。
そもそも身体がどうこうというのを心配するのも、こういう場に於いては妙な話だ。
争うからには、当然に命を落とす可能性だってあるのだし、精神だってその限りではない。
変質するということは確かに、ただ死を迎えるのとは質の違う恐ろしさはあるかもしれないが。
――ああ、まあ、そもそも、そうか。
確かにそういう土俵に立ってない者の尻を叩くには、充分すぎる効果はあるかもしれないか。
しかし、いずれにせよ。
「ただ争う、というにはだいぶ胡散臭くはなってきたな‥」
潮のにおいがする風の中に、溜息をひとつ溶いて流した。
‥パニックになるような連中ではないだろうが。
ひとまずはあいつらと一緒に居た方がいいだろうな。

[816 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[370 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[367 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[104 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[147 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
チャット画面にふたりの姿が映る。
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・」 |
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白南海 「・・・怖いだろうがよ。」 |
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エディアン 「・・・勘弁してくれませんか。」 |
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白南海 「ナレハテってあの!アレだろォッ!!?ドッロドロしてんじゃねーっすか!! なんすかあれキッモいのッ!!うげぇぇぇぇうげえええぇぇぇ!!!!!!」 |
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エディアン 「私だって嫌ですよあんなの・・・・・ ・・・え、案内役って影響力どういう扱いに・・・??私達は関係ないですよね・・・????」 |
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白南海 「あんたアンジニティならそーゆーの平気じゃねーんすか? 何かアンジニティってそういう、変な、キモいの多いんじゃ?」 |
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エディアン 「こんな麗しき乙女を前に、ド偏見を撒き散らさないでくれます? 貴方こそ、アレな業界の人間なら似たようなの見慣れてるでしょうに。」 |
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白南海 「あいにくウチはキレイなお仕事しかしてないもんで。えぇ、本当にキレイなもんで。」 |
ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。
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白南海 「・・・っつーか、あれ本当にドライバーのオヤジっすか?何か雰囲気違くねぇ・・・??」 |
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エディアン 「まぁ別の何か、でしょうね。 雰囲気も言ってることも別人みたいでしたし。普通に、スワップ発動者さん?・・・うーん。」 |
ザザッ――
チャットに雑音が混じる・・・
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エディアン 「・・・・・?なんでしょう、何か変な雑音が。」 |
ザザッ――
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白南海 「ただの故障じゃねーっすか。」 |
ザザッ――
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声 「――・・・レーション、ヒノデコーポレーション。 襲撃に・・・・・・・・いる・・・ 大量・・・・・こ・・・・・・死体・・・・・・ゾ・・・・・・」 |
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声 「・・・・・ゾンビだッ!!!!助け――」 |
ザザッ――
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白南海 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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白南海 「ホラーはぁぁ――ッ!!!!
やぁぁめろォォ―――ッ!!!!」 |
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エディアン 「勘弁してください勘弁してくださいマジ勘弁してください。 ホラーはプレイしないんですコメ付き実況でしか見れないんですやめてください。」 |
チャットが閉じられる――