その数ヶ月間。



母はずっと笑っていた。
確かに幸福そうに。自分が買い集めた神さまたちに囲まれて、息子ですら見たことが無いほど穏やかに笑っていた。












「……母さん。神さまに何をお願いしたの？」

「それはね──あなたのことよ。あなたの幸せ」

「……え？ それってどういう──」




「──ツバキに将来お嫁さんと子供ができますように、って」
「ふつうの会社に就職して女の人を好きになって、小さい家庭を持って──そういうささやかで平穏な幸せ」
「ちゃんと安定した仕事とみんなに祝福される相手が居る事がね、何よりも幸福な姿なの」
「今度の神さまこそ大丈夫よ、今度の神さまこそ大丈夫──」



母は本当に幸福そうな笑顔で。
彼の前でそう話した。


その願いを叶えるためにはきっと、己の生き方全てを殺さなくてはならない事。
そうしないのなら自分に母の願いを叶える事は恐らく一生できない事。


その現実は今も尚。
彼に鈍い呪いのように纏わり付いていた。