
「――フォローを入れるとすれば、
実際その人と私は容姿が似てたし、
遠くから指さして、あの人よっていわれたら、
間違えるのも仕方ないといえば仕方なかった事でしょうね。
もし、私が逆の立場だったら、
間違えた可能性は大いにあると思いますから……
失態である以上に事故といってもいいと思います。」
確かに事故としか言いようがない。
実際近くでみれば容姿が似てなくても、
遠目であればそれはわからないし、
特徴的なものが同じで、
位置関係次第では、
間違えない方が難しい事も十二分にありえる。
それをさておくとして気になる事はというと……
「しかし、挑戦はいいが、
どんな勝負を申し込むつもりだったんだ……?」
まず気になるのはここである。
勝負、といわれても困るだろう。
「勝負内容については相手に委ねるつもりでしたわ。
きちんと勝敗が分かって、
出来レースにならないものを、と。
相手の得意分野で勝てないのはよろしいのです。
相手に不利益を強制するもの、
最初から勝ちえない勝負……
例えば20を言った方が負けとか、
過去の出来事の数を比べあうだの、
勝負するまでもないような奴ですわね。
ただし、
相手がプロテニスプレイヤーでテニスを挑んできたとしても、
私は受けますわ。
だって、確かに勝敗は明らかとはいっても、
勝利の可能性はゼロではありませんもの。
むろん直ぐにといわれると困りますが、
準備期間として一週間は用意するつもりでしたし、
その間に全力で鍛え上げるつもりでしたわ。
そう、
挑戦である以上、
勝負でなくてはなりません。
なので、
こちらから何で勝負をするかは考えておりませんでしたわね。
無論、こちらに委ねるのであれば料理勝負でしょうか。
やはり相手の心をつかむにはまず胃から。
とても合理的だと思いますもの。
審判に関しても感心を得たい相手に委ねれば文句もありませんわ?」
なるほど、道理である。
思った以上に真っすぐ過ぎる内容に感心すると同時に、
こう、何か表現できないような重みを感じる気がしないでもないが。
ともあれその勝負ではあるが……
「……まぁ、誤解は解けたようだが、
本来の相手にも申し込んで勝負した……のか?」
次に気になるのは、
根本の問題は解決したのかどうか、
だろう。
そこがくすぶっていたなら、
また何か問題が起きそうな感じもあるわけで。
興味津々……
というよりは、恐る恐るといった感じで映美莉は聞く。
一体どれほどの爆弾が隠されているのかわかったものではない以上当然ではあるだろう。
まぁ、流石に警戒しすぎであろうことは、
映美莉自身も分かってはいるのだが。
「ええ、無論、勝負を挑み……
私の勝利が終わりましたわ!」
どや顔で胸をはるシンシアの姿に、
少し頭を抱えながら、
「あれは酷いというか、
少し相手がかわいそうになるというか、
ダンス勝負で、
彼女の方も自信あったみたいなんですけど、
格が違うというか、
見事な圧勝をもぎ取ってましたね……
あ、映美莉も知ってると思いますよ、
ほら、入学式間もなく突然始まったダンスコンテスト――」
そういわれて思い返す。
確かにそういうイベントがあった。
映美莉もまたそういうコンテストがあれば見に行きそうなものだが、
これ幸いとばかりに女の子にアタックをかけていて、
遠目にちらちら見た程度ではあるが、
確かにシンシアらしき人物が圧倒的輝きというか、
明らかにダンスのレベルが違って、
勝敗は見えたなとばかりに気を留めていなかったが……
「ああ、あれの優勝者はシンシアだったのか。
そういえば確かに見覚えがなくもない。
とはいえ、遠目でちらっとみて勝負が見え見え過ぎたので、
他の事をしていたのだが……
まさか裏にそんな経緯があって、
シンシアが出ていたとは知らなかった。
もう少し真剣に見ておけばとというのは後の祭りかな?」
もったいない事をしたと悔やむ映美莉。
「完全な虐殺に近かったですし、
コンテストじゃなくて別の形の方がいいと思いますよ。
なんていうか、シンシアは・・・・・・
いろんな習い事をしていろんな事の下地が完璧にできているので、
きっちり集中して物事をやれば、
ある程度高いレベルでなんでもできるんですよね。。。
その中でも本格的な訓練を受けた分野になると、
それこそプロとアマチュアレベルの差が……
ともあれ、それはいいのだけど、
その後の顛末が……」
その後の顛末?
話はここで終わりと思いきや終わらないらしい。
いや、事実顛末まで語らないと終わらないのだが、
どうにも終わり方もまた微妙な話になったのか……
「い、言わないでくださいまし……
いえ、
終わったことですし、別に構わないのですけど、
なんというか……うう……」
歯切れが悪い。
本当に一体何が考えた所で。
「――結論からいってしまうと、
完全に無駄でしたね。」
「ううっ!?」
まぁ、実際問題……
上手くいっていたのであれば、
よくよく考えると映美莉に対してここまで詰め寄ってきていたか怪しい。
それを考えると順当といえば順当な結果ではあるといえる。
「……ま、
お陰でシンシアのような綺麗なレディと出会えたと思うと、
無駄ではなかったわけだが……」
だからといって、
鎮火していたものを再燃するような発言をするあたり、
映美莉が迂闊すぎる事は自明の理であるが。
「……映美莉?」
葵の声が怖い。
腕にしがみついている手に力がこもって、
流石の映美莉でも痛いと感じるくらいの圧がかかっている。
「ま、待て、
我は思ったことをいったまでだ。
いつもの事ではないか……!」
一応そういうと、はっとしたように力を抜いてくれたあたり、
まだセーフなのだろうが……
「まぁ、そんな、
そうですわね。
いろんな事がありましたけど、
お陰でこの出会いがあったのですもの。
ええ。
過去の失敗にも感謝しなくてはいけませんわね。」
妙に生き生きとし始めた。
割と乗りやすい性質というか、
ほめればほめるほど浮かれる気質なのだろう。
葵が小さくため息を吐いている辺り、
それで失敗していることも多そうだ。
「――それで優勝して賞賛されて、
調子にのって、
この程度で得意といってる場合ではありませんわ、
もっと基礎をきっちり習熟して、
もっとしっかり鍛えれば私以上の才能があるのですから、
しっかりおやりなさい!
貴女を支えてくれる素敵な殿方がいるのですから、
貴女はもっとその才能を生かす為に努力して、
支え、支えあうべきですわ!
他の事にかまけていたら、折角の才能が持ち腐れ、
そんなこと私が許しは致しません、
バックアップが必要なら私がいたしますわ!
なんて宣言してしまいまして。
本来その子男遊びが激しいって噂があったんですけど、
それを断ち切らせて、
自分の好きで付き合ってた人との関係のサポートから、
その人の才能を生かす為の手助けまで全部やって、
結局……当初の目的を完全に忘れて――」
「うぐぐ……
分かってますわよ、
気づいたときにはもう手遅れで、
もう二人が幸せに、
栄光の道を歩んでいるし、
二人とも仲の良い友人になったから、
その関係を壊したくないし、
未練もあるといえばありますが、
そこで未練に縛られるようでは私らしくないから、
きっぱりとあきらめて、
手助けを続けながら新しい恋を探すしかなかった事なんて。
……でも、それはそれ、これはこれ。
当初の目的とは完全に違う方向というか、
当初からみれば完全な失敗である事には変わりありませんわ……!」
だから、私にとっての黒歴史なのです。
と、恥ずかしそうに頬を赤らめるシンシア。
「……一事が万事こんな感じで、
恋をしては話が想定外かつ、
相手にとって幸せな形で終わる……
みたいになってるから……
映美莉相手だと本当に何があるのか分からないのと、
相乗効果で本当に大惨事になりかねないなんて思ってしまって……
いい子であるのは認めるけど、
うん。その……」
その横で困った顔で溜息をつく葵。
なるほど。
確かにさもありなんといったところだろう。
勘違いされる要素は多々ある。
しかし、それよりも映美莉が気になったのは……
「……しかし、なんだな。」
思わずつぶやく映美莉の声に、
「「?」」
どうしたのかじっと映美莉の方を見る二人。
「――そういう事であれば我は存外不適当なのではないか、
と思ってな。
我は麗しのレディに対して声をかけないという選択肢はないぞ。
一途……
というタイプではないしな。
というか、
女同士でしかもこう多数の人間に声をかけるのは、
普通の性癖の人にとっては異端な気がするぞ。
現実的にそれで断られる事も一杯あったしな!
いや、いいお友達でいましょうとか、
お茶にお付き合いくらいならいいとのことで、
交友関係自体はなくなってないわけだが……」
そんな映美莉の言葉に対して、
「それですわ!
確かにどちらも今までの私にとってありえない選択肢ではありますが、
逆に考えれば、
今までのような失敗はありえないともいえますし、
助けてもらった時のトキメキは本物ですもの。
つまり、何も問題はない、
後は私の心の問題ですもの。」
力強く問題ない事を力説するシンシア。
問題自体に関しては一杯あるわけだが、
少なくとも彼女の中ではそんな問題はなかった事になっているらしい。
……少なくとも彼女との関係はまだまだ続きそうな事が確定した瞬間である。
「……まぁ、あっけらかんというか、
存外にも割り切りがよすぎるというか……
まぁ、知ってましたけど……
それより、シンシアはもうちょっと考えて行動すべきだと思います。
……本当に映美莉じゃなくて、
悪い人にでもひっかかってたらどうするんですか……
いえ、映美莉相手というのも、
相乗効果で厄介事一杯持ち込みそうですけど……」
ぶつぶつとむー、となぜかふくれっ面な葵である。
「……」
そんな葵をじーっと見つめるシンシア。
そして……
「な、なんでしょう?」
それに気づいて思わずはっとしたようになって、
映美莉にしがみつく葵に向かって、
「ですから、
葵も気にせずに一緒になってもいいのではないでしょうか。
もちろん私だって抵抗はありますが、
こうして映美莉がはっきりといっったのですもの。
ええ、今は抵抗ばりばりですけど、
一緒になっていればそういう抵抗も薄れて問題なくなるかもしれませんし、
素直になりません?
ほら、よく言うじゃないですか、
案ずるより……なんでしたっけ?」
首を傾げるシンシア。
「産むがやすし、かな?」
それをみて答える映美莉に対し、
嬉しそうに顔を綻ばせ、
「そうそう。
案ずるより産むがやすしですわ。
なので、
葵ももう少し素直になっては。
奥ゆかしいのは美徳かもしれませんが、
少し歯がゆいですもの。」
シンシアは言う。
それに対して葵は、
「うう、ほっといてください、
私は私ですっ……!
まぁ、映美莉の事は好きですし、
これからも仲良くしてくれると嬉しいなと思ってますから。
ただ……」
「ただ……?」
最後まで言い切らず言い淀み、映美莉は首を傾げる。
「こう、胸がもやもやしたり、
ちょっとムッとしたりするのはどうにもなりません、
なぜかは分かりませんけど……!」
それに業を煮やしたのか葵は、
言い淀んだ続きを告げるのであった。
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えみりん 「やりたいことが多すぎる……」 |
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えみりん 「まぁ、たまには明るい話でもしよう。」 |
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えみりん 「動画をみながら書く日記はいいぞ。」 |
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えみりん 「音楽を聴くもよし!プレイ動画もよし!卓動画もよし!だ!」 |
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えみりん 「無論マッドもいい。聞きながらネタになることもあるしな。」 |
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えみりん 「そうやってテンション上げながら書く日記はちょっと楽しいぞ。うむ。」 |