
[昔の話]──
《海が見える位置にある病院》
押日 瑠奈
14歳。
生まれつき病弱な体で、ろくに動くことが出来ない。
好きな動物はうさぎ。
あの後、『誰か』による通報で駆けつけた人たちに保護された。
血の海で座り込んでいたらしい。
目覚めたのは、いつもの病院のベッドだった。
お姉ちゃんはどうしてあんなことをしたのか。
どうして、私だけ残したのか。
他の人が話していたのを聞いた所、どうやら親戚も全滅らしい。
凶器は家に保管されていた刀だと思われるが、刀では付きようのない傷も多く有るらしく捜査も難航。
犯人候補でありもう1人の生存者である姉は行方知れず。
生存者であり唯一の目撃者である私に関してはショックが大きいだろうから少し時間を置くとのことらしい。
病院に戻された私は、何をすること出来ず、何をする気力もなく、ただじっとしていた。
︙
どれだけの日が経っただろうか。
変わらず、何もしない日々。髪も伸びっぱなしだ。
──窓からノックの音がする。ここは3階だ。出来るはずがない。
驚いて目線を向けると、朱い髪の少女がこちらを見ている。
窓を開けようと思ったが、私は動くことが出来ない。
そうしていると、1人でに鍵が開き、その人は入ってきた。
……同い年か、下だろう。
朱い髪の少女
10代前半だろうか。
赤と黒のパンキッシュな服に身を包んでいる。
 |
??? 「君が、瑠奈だね」 |
少女は私に問いかける。
 |
瑠奈 「……そうだけど……」 |
少女曰く、「自分は魔法使い」らしい。
ふざけた話であるが、すでに起きている事を考えると、説明できるものは他になかった。
そして彼女は本題を切り出す。
 |
??? 「この子が、呼んでたんだ。 片割れを止めて欲しいってさ」 |
 |
瑠奈 「……この子?」 |
 |
??? 「そう、この子。宵闇って名らしいね」 |
そう言って差し出すのは、短い刀。家に保管されていた、二振りのうちの短い方。
 |
瑠奈 「見覚えは、ある」 |
 |
??? 「よし……じゃあ、ひとつ頼みを聞いてくれないかな」 |
 |
瑠奈 「頼み?私は、首もろくに動かせないのだけど……」 |
 |
??? 「……聞いてくれるなら、代わりに……魔法を教えてあげる」 |
 |
瑠奈 「魔法?さっきのようなもの?」 |
 |
??? 「そう。体も動かせるようになるはず」 |
聞くだけ、聞いてみよう。
 |
瑠奈 「……頼みってのは?」 |
 |
??? 「……君のお姉ちゃんを、止めてくれないかな。この子と一緒に」 |
 |
瑠奈 「……! でも、それは……あなたがすれば、いいんじゃないの?」 |
 |
??? 「……それは、そうなんだけどね。 これは君のためであり、この子のためなんだ」 |
 |
瑠奈 「……」 |
曰く、この刀の使い手は家系の人間の必要があるらしい。
残っているのは、私と、姉だけ。
このまま生きていても、つらい日が続くだけだ。
お姉ちゃんが私を残した意味は……もしかしたら。
だったら──
 |
瑠奈 「……わかった。」 |
宵闇── 一振りの脇差が、カタカタと震えた。
次の相手は新しいクラスメイトらしい。負けたくはないな。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
 |
白南海 「うんうん、順調じゃねーっすか。 あとやっぱうるせーのは居ねぇほうが断然いいっすね。」 |
 |
白南海 「いいから早くこれ終わって若に会いたいっすねぇまったく。 もう世界がどうなろうと一緒に歩んでいきやしょうワカァァ――」 |
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
 |
カグハ 「・・・わ、変なひとだ。」 |
 |
カオリ 「ちぃーっす!!」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
 |
白南海 「――ん、んんッ・・・・・ ・・・なんすか。 お前らは・・・あぁ、梅楽園の団子むすめっこか。」 |
 |
カオリ 「チャットにいたからお邪魔してみようかなって!ごあいさつ!!」 |
 |
カグハ 「ちぃーっす。」 |
 |
白南海 「勝手に人の部屋に入るもんじゃねぇぞ、ガキンチョ。」 |
 |
カオリ 「勝手って、みんなに発信してるじゃんこのチャット。」 |
 |
カグハ 「・・・寂しがりや?」 |
 |
白南海 「・・・そ、操作ミスってたのか。クソ。・・・クソ。」 |
 |
白南海 「そういや、お前らは・・・・・ロストじゃねぇんよなぁ?」 |
 |
カグハ 「違うよー。」 |
 |
カオリ 「私はイバラシティ生まれのイバラシティ育ち!」 |
 |
白南海 「・・・・・は?なんだこっち側かよ。 だったらアンジニティ側に団子渡すなっての。イバラシティがどうなってもいいのか?」 |
 |
カオリ 「あ、・・・・・んー、・・・それがそれが。カグハちゃんは、アンジニティ側なの。」 |
 |
カグハ 「・・・・・」 |
 |
白南海 「なんだそりゃ。ガキのくせに、破滅願望でもあんのか?」 |
 |
カグハ 「・・・・・その・・・」 |
 |
カオリ 「うーあーやめやめ!帰ろうカグハちゃん!!」 |
 |
カオリ 「とにかく私たちは能力を使ってお団子を作ることにしたの! ロストのことは偶然そうなっただけだしっ!!」 |
 |
カグハ 「・・・カオリちゃん、やっぱり私――」 |
 |
カオリ 「そ、それじゃーね!バイビーン!!」 |
チャットから消えるふたり。
 |
白南海 「・・・・・ま、別にいいんすけどね。事情はそれぞれ、あるわな。」 |
 |
白南海 「でも何も、あんな子供を巻き込むことぁねぇだろ。なぁ主催者さんよ・・・」 |
チャットが閉じられる――