
色もはっきりとはわからないくらいの暗がりの中で。
それでも、かたちだけはわかる距離にいたあいつは、あまりにもアイツによく似ていて。
はっと息を呑みそうになったのを、あいつは聴いただろうか。
脚を止めたままの俺の横をそのまま抜けて、あいつは『親子』のもとへと歩いていく。
振り向いたかもしれない。
一瞥をくれたかもしれない。
けれど、朝を迎えるにはまだ深い夜闇は、その帯の中に全てを飲み込んでしまう。
みえるのは、焚き火の照り返しにくっきりと彫られた、ケイの満面の笑みと。
同じ竜種だとしても表情を測りきれない、グラウの沈黙と視線だけだ。
ただ、少なくともそこに困惑のイロはない。
俺の横をゆるりと抜けていったあいつが、普段の調子のままに彼らの前にあることだけはわかった。
「‥‥」
誤魔化すには、平静を装うには、あまりにも遅く。
しかし、それはそれとして。
俺は手持ちの煙草に火を入れた。
『前のとき』とは、ちがう。
あいつからはアイツの声がしたりはしない。
あまりによく似すぎているというだけで、勝手に俺が戸惑っているということも、なくもない。
ーーごちゃまぜになった『個』が、零れ落ちて、再形成される、なんてことは。
ふつうは、ない。
別個体と考える方が妥当なところではあるのだ。
ふつうは。
考えても考えてもわからないことはある。
しかし。
ーーそれでもなおも。
理屈は別にして、得られる感触というものもある。
直感だとかいわれるもののことだが。
‥これを共有できる上に、ややもすれば、俺より余程に直感力のあるヤツが今回はいないことが惜しい。
それでも。
俺でさえも思う。
あいつは、アイツではないかと。
直接そうでなくとも、噛んでいるのではないかと、なけなしの勘が言っている。
あいつはアイツのように、遠巻きに距離を置いて立ち振る舞ったりはしない。
知り合ったものの立ち振る舞いに、威迫じみた『冗談』を置いたりもしない。
しかし。
しかしだ。
へら、と笑い振舞い、軽口を打ってはまた笑うような、アイツからは程遠い遣り取りを何度見ても、戦いのーー"舞い方"ーーが、どうしても、被る。
それだけならいい。
それだけならいいんだ。
(‥‥)
アイツが俺に向けていた視線。
いなくなってしまう前に感じたあの視線のイロと。
あいつがあの親子に向ける視線。
ーー閉じられた瞼の下のイロが、その向きが。
ほかのなによりも、何よりも似ている、などと。
(‥何を見出そうとしてるんだかね、俺は)
彼らの距離は、まだ、遠い。
それは、アイツと俺との距離がそうだったように。
まだ。
ぎゅっと吸いかけの煙草を握り潰して。
俺は、1人と1頭と。
あいつの間に入るように、脚を運ぶ。
勘がもしも、勘ですまなかったなら。
『そのとき』が、そうだったのか、で済まされない時だったら。
俺はどう生きるべきだろうか。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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エディアン 「・・・おや。チェックポイントによる新たな影響があるようですねぇ。」 |
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エディアン 「今度のは・・・・・割と分かりやすい?そういうことよね、多分。」 |
映し出される言葉を見て、腕を組む。
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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エディアン 「あら!梅楽園の、カオリちゃんとカグハちゃん?いらっしゃい!」 |
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カグハ 「おじゃまさまー。」 |
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カオリ 「へぇー、アンジニティの案内人さんやっぱり美人さん!」 |
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エディアン 「あ、ありがとー。褒めても何も出ませんよー?」 |
少し照れ臭そうにするエディアン。
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エディアン 「間接的だけど、お団子見ましたよ。美味しそうねぇあれ!」 |
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カオリ 「あー、チャットじゃなくて持ってくれば良かったー!」 |
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カグハ 「でも、危ないから・・・」 |
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エディアン 「えぇ、危ないからいいですよ。私が今度お邪魔しますから!」 |
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エディアン 「お団子、どうやって作ってるんです?」 |
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カオリ 「異能だよー!!私があれをこうすると具を作れてー。」 |
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カグハ 「お団子は私。」 |
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カオリ 「サイキョーコンビなのですっ!!」 |
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カグハ 「なのです。」 |
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エディアン 「すごーい・・・・・料理系の異能って便利そうねぇ。」 |
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カオリ 「お姉さんはどんな能力なの?」 |
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エディアン 「私は・・・アンジニティにいるだけあって、結構危ない能力・・・・・かなー。」 |
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カグハ 「危ない・・・・・」 |
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カオリ 「そっか、お姉さんアンジニティだもんね。なんか、そんな感じしないけど。」 |
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エディアン 「こう見えて凶悪なんですよぉー??ゲヘヘヘヘ・・・」 |
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カオリ 「それじゃ!梅楽園で待ってるねー!!」 |
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カグハ 「お姉さん用のスペシャルお団子、用意しとく。」 |
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エディアン 「わぁうれしい!!絶対行きますねーっ!!!!」 |
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エディアン 「ここじゃ甘いものなんて滅多に食べれなさそうだものねっ」 |
チャットが閉じられる――