-■■の記録 その5-
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レイ 「・・・・・・」 |
まただ。また声が聞こえた。
だけど、なんだろう。いつもとは違う。
今までははっきりとした言葉が僕に聞こえてきていた。
けれど、今回は違う。まるで、ノイズで作った言葉を喋っているかのような・・・。
ああ、ダメだ。解読しようとしても、僕じゃあとても解読できないや。
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セノ 「・・・始まったね」 |
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アニ 「ああ」 |
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レイ 「・・・・・・二人はこの感覚に覚えがあるの?」 |
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アニ 「そりゃあな。セノが誕生する直前に叫んだ言葉とほぼ似ている」 |
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セノ 「まだ『言葉』を自立して喋る能力を、自分で持ち合わせていなかったからね」 |
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レイ 「・・・・・・んん? でも、今までも言葉をしゃべってたよ?」 |
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セノ 「んっと、それとは違う、かな」 |
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セノ 「今までの言葉は『父さん』を借りて喋っていて、 今回の言葉は『自分』が発したもの・・・って言えばいいのかな」 |
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レイ 「なるほど・・・?」 |
『自分の言葉がうまく出せない』状態で喋ったから、言葉がうまく聞き取れないのか。
なるほど、僕の精神体というのは不思議だらけだ。
生み出す本人なのにこの辺の仕組み良くわかってないんだよね、僕。
しかし、それ以前に懸念される事象がいくつかある。
それはマリスたちが誕生した時にも、配慮されていた部分である。
その内の一つが、『どのような性質を持つか』。
人間に害をなすような性質であれば、僕はそこですぐに排除するだろう。
人間を蔑むような性質であれば、僕はすぐに考えを改めさせるだろう。
僕に害をなすような性質であれば、周りが止めに入るだろう。
僕以外に害をなすような性質であれば、僕はすぐに止めるだろう。
性質によって人格が決まることはあまりないのだが、稀にユウやヘルのように、性質が表に出て人格が決まることがある。
これは僕がどうこうできるかと言われたら、少し難しいところ。
それでも考えを改めてもらうために会話はするけどね。
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マリス 「まあ、色々と対処が変わるだろうな」 |
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シルバ 「ええ。アニやセノのときと違い、1から生まれますからね・・・」 |
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ディー 「そいつと顔合わせしてないから、どんなのが生まれるのかねぇ・・・」 |
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ユウ 「・・・・・・」 (。・ω・。o[変なのじゃなきゃいいんだけど・・・]o |
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ヘル 「変なのでも僕らが矯正すればいいんだよー」 |
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アニ oO(説得力が強すぎる・・・) |
僕自身は記憶を失っていくばかりだが、新しい彼が誕生することで再び記憶が戻るだろう。
もう少し。もう少しだけ待とう・・・。
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アマベル 「ねえ、カサドル。こんな話を覚えてる?」 |
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カサドル 「なんでしょうか」 |
アマベル・ライジュはポツリポツリと話し始めた。
昔、はるかに昔。
二人の男たち──レティシエル・ベル・ウォールとベルトア・ウル・アビスリンクという二人の男たちが、世界を作り、礎を築いたという話。
世界は人を呼び込むようになり、知恵と知識が必要になったから、レティシエル・ベル・ウォールが知恵と知識を集めて人々に還元した。
やがては世界が無秩序へと傾き始めたから、ベルトア・ウル・アビスリンクが罪と罰を人々に与えるようになった。
この二人の男たちの話を、アマベルは話した。
──この男は、なぜこの話を知っているのだろう?
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カサドル 「その話なら、何度かお話されてますね」 |
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カサドル 「世界を作った二人は、その後自由気ままに暮らしたと聞いていますが」 |
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アマベル 「お、カサドルも記憶力がいいね~」 |
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アマベル 「でも、ベルトアのその後だけは知らないよね?」 |
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カサドル 「・・・・・・恥ずかしながら、あの男が『助ける』と言ってることぐらいしか」 |
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アマベル 「そっか。じゃあ、今教えてあげる」 |
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アマベル 「ベルトア・ウル・アビスリンクは、レティシエル・ベル・ウォールの唯一無二の親友」 |
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アマベル 「そんな彼は今や、本当に世界の礎となっているんだ」 |
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アマベル 「──世界に魔力を与える世界樹の一部として、ね」 |
アマベルはクスクスと、小さく笑いかける。
その笑みには哀愁と懐かしさを浮かばせているようにも見えるだろう。
だが、長年の付き合いのあるカサドル・セプテンは聞き逃さない。
彼がこのような笑みを浮かべるときは、本当に寂しい時なのだと知っている。
彼がこのような笑みを浮かべるときは、懐かしく思っている時だと知っている。
そして、話を聞いた後は当然ながらこの疑問が出てくるわけだ。
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カサドル 「・・・なぜアマベル様が、そのような話を知っておられるのですか?」 |
聞いてはいけなかっただろうかと、カサドルの心の中がざわめく。
軽率に主の心に踏み込んではいけなかっただろうか、と。
だがカサドルのその不安を打ち払うように、アマベルは軽い声で答えた。
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アマベル 「だって、僕も彼らと共に世界を作ったからね」 |
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カサドル 「・・・・・・」 |
軽い返答がこのような話なのだから、我が主はなんとも言えない。
カサドルは思わずツッコミを入れたくなったが、ぐっと堪えた。
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アマベル 「ああ、カサドルにも言ってなかったっけ。この話」 |
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カサドル 「・・・初耳です」 |
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アマベル 「僕の名前は、アマベル・ライジュ」 |
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アマベル 「もう一つの名前を・・・」 |
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アマベル 「 アマベル・オル・トライドール 『優しい反逆者』」 |
──アマベル・ライジュ。またの名を、『アマベル・オル・トライドール』。
彼は、何を思ってレティシエルの隣にいるのだろうか・・・。