何気ない日常。突如……その時は来た。
一瞬。またたきをする間も無く、この世のものとは思えないような
天から地まで破けるがごとき音が聞こえるような。そんな感覚。
俺も、そんな事態に驚くより先に、貧血みたいに意識がぐらりと揺れた。
急な眩暈に驚きながら、目を開けると……そこは、荒廃した……イバラシティ。
なんだこれ、何が起こったんだ。辺りを見回そうとして、体の違和感に気付く。
立ち上がろうとして、バランスを崩して、前のめりに地面にコケる。
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「い、いたっ!?……っっ…… ……え」 |
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「なッ、何 なんだあっ!!?」 |
"何か"を地面に強く打ち付け、悶える。どこをぶつけたのか、
確かめようとすると……そこには、あるはずのない、大きな胸があった。
服も違う。何が、何が起きたんだ。俺は必死に頭を回す。
すると、意外なほどに早く答えは引き出てきた。
この姿は、天月 満(ミツル)の姿。
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「……姉ちゃん?俺、姉ちゃんになってる!?なん……」 |
なんで、と言いかけたその答えもまた、すぐに導かれた。
天月 新(アラタ)こそが《ワールドスワップ》で与えられた、仮の姿。
俺は、いや、私は、自分が捜していたミツルそのものだったのだ。
ひとまず、深呼吸。戻ってきた自分の記憶を、落ち着いて整理する。
ここは、世界間の争いの場。私は、《アンジニティ》に迷い込んだ。
相手の世界に溶け込むため、あの世界の存在は仮の立場と姿で忍び込んでいて、
私たちが勝てば、相手の世界と立場を入れ替えて、私たちは《イバラシティ》に……>
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「……私たちが勝っても、それってつまり、《イバラシティ》の皆を あの世界に追いやっちゃうってこと、だよね……そ、それに……」 |
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「も、もしかして、あれなのかな。私、もし《ワールドスワップ》が成功したら、 男の子になっちゃうって……こと?そんなことってある?」 |
そんなことになったら、私の夢が……。イバラシティにいた頃は、
将来はいい人のお嫁さんになって、幸せに過ごしたいな~って思ってたのに、
このままだと《イバラシティ》の皆を貶めて、私はお嫁さんどころかお婿さんに!
なんとしてでも……止めないと! ……。
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「……この戦いが終わるまで、私、女の子でいてられるかな……ちゃんと。」 |