鳴り響く終業のチャイム。
それとほとんど同時に教室中が騒がしくなり、だるかっただとか、放課後どうするだとか、皆そんな話をしている
自分はと言うと、やっとのことで黒板の白字をノートに書き写し終えたところだ
当然だが、授業風景から板書の文字に至るまでのその全てに悪戦苦闘している。
けれど、不思議とその全てが楽しいと思えるのは、誰のお陰だろう?
そんなわいわいと賑わう教室で、少し離れた席から駆け寄って来たのは、綺麗な茶色の髪を持つ少女。
──片空 小晴(かたそら こはる)。
幼少期は二人でよく遊んだもので、所謂幼馴染に当たる。
帰国し、こうして再開出来て、更にクラスまで同じだなんて、奇跡でも起こったのだろう
これも彼女の日頃の行いが良いからだと思う。 私も、ちょっとは奇跡に貢献出来てると良いな
「ユーリちゃん!」
とんとん、とノートを整理していると、可愛らしい弾んだ声が聞こえてきて。
視線を上げると、ぺんを抱えて帰宅準備ばっちりないつもの笑顔が目に入った
「一緒にかえっ……わ!?」
不意に途切れる呼びかけ。その笑顔は、驚いたような表情へ変化して
そのまま前にぐん、と倒れかける。
きっと足元なんて見ずに、自分の方へ一直線に向かってきてくれたのだろう
いつだって前向きで、一生懸命。
それが彼女の良いところであり、極稀に、たまに──そう、今まさにこういう場面ではキズだ
「こはる……!」
願う。祈る。ぎゅっと目を閉じて、強く念じる
どうか、あの子の笑顔を曇らせないで───!
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そんな"記憶"を思い出しながら、ハザマ空間を駆け出した。
足取りが軽い。どこまでだって行けそうな気持ちになってしまう
にへ、と緩む表情をどうにかぎゅっと引き締めて、時折ふっと息を吐いたりして。
あの子は……幼馴染ではなかったけれど。それでも、確かに手を取ってくれた
嗚呼、こんな時に浮かれている場合ではないのに。
まだ繋ぎあった手が、心なしか暖かい。友とは、家族とは。やはり良いものだ
少し浮かれ気味に、それでもどうにか気は引き締めて。少年の元へ戻った。のだが……
なんと、少年は
たらこっぽい何かを貪りながら、傍には
大きな猫、足元には
手首が巻き付いている。
それから側には
何かよく分からない言語を発するもの、そしてこれまた
よく分からない鎧が佇んでおり、
極め付けに随分と
背の高い天使が居るではないか
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夢璃 「………」 |
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夢璃 「どういう状況?」 |
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智鈎 「俺が聞きたい……」 |
彼以外はアンジニティの民。正直ちょっとシュールな光景だった