侵略って、何だったのだろう。
そんなことよりもコッチで巻き込まれているコトの方が深刻になっていた。
大分落ち着いたけれど、変な人に追われたり、
その力を相手に向けたりすることなんて、無いと思っていた。
侵略のために欲しかった力。
それが招いた結果
それを使うのが、なんで、この街で――人間相手なのだろう。
私を護るために人が傷ついた。
私が護るために人を傷つけた。
それが人を傷つけることも、他人を傷つけることにも躊躇しないようなバケモノであっても。
駆使した、私の力
縛る力――物理的に、精神的に、また、その能力を。
空を飛ぶ力――それも、一瞬で島のどこにでも行けてしまうような速度
ある程度の硬度を持つ立方体を生み出す力
物を腐食させるガスを生み出す力
とある宝石で得る使い捨ての力――それを自らに縛り付けて、ずっと使えるようにできた。
両手を見つめる 私には力がないと思っていた。
でもそうじゃなかった、言ってはいないけれどわかっている
ずっとではないけれど相手の異能を縛ることも出来る。
ロープ……切れないワイヤーさえあれば、人を すことだってできる。
そんな
化物のような力なんだって
それでも楽しい。
ヒカラビ荘の人たちとお買い物に行ったりとか、凄い楽しかった。
色んな人たちと遊ぶのがとても楽しくて。日常が、とても楽しい。
だから守りたいって。
自分の力があればきっとそれができるから
アンジニティからも、私を狙う何かから巻き込まれないようにって。
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頭の中に急激に入り込む――日常の記憶
「う……ぐ……」
バケモノ
同行している彼女たちの影に隠れて、気持ち悪さも、胃の中の物を吐き出す。
喉の痛みよりも、してしまった事実が胸を苦しめる
人を傷つけた――知らない人を―――
でも、殺されたくない。 知らない人を救うために、自分の命を投げ出せるほどできた人間でもない。
足掻くなんてみっともないなんてあるけど、死にたくはない。
それが街のヒーローであろうと、何であろうと生きるためには必要なのだ。
近寄ってくる謎の生物を倒す――アレらは、こっちの生物なのだろう。
私が人間の姿をしているということは、きっとイバラシティのヒトは、元の姿なのだろう。
――この同行している人たちは……イバラシティでは、人間の姿なのだろうか。
そんな言葉がたまにきこえるのだ。私は、知られているのだろうか。私は知っているのだろうか。
『同盟者』
《アンジニティ》
そう呼ばれる。 そう、私はいま侵略者、化物たちの仲間なのだ。
『仲間』
そうとも呼ばれる。
……化物には、相応しい居場所なのかもしれない。
自らが、まるで、侵略側のようだ。
しょうが、ない、もん。 だって、死にたくない。
それにすごい。この世界では、異能の力が強いことにも気が付いた。
力を使うことに反動が、無い……正直、反動がなければと思ったこともあった。
だけれど、無かったらコレは―――本当に。
……この場所にあの宝石さえあればきっと、無限に能力を持ててしまったりするのだろうか。
思わず自嘲してしまう。
化物のような、じゃない
そんなの
化物だ。
そうしていれば食糧を渡される。
可愛らしいものを作るなと、そうしてその優しさだろうか――それを感じてしまう。
そんなものじゃないのだろうけど。
バケモノらしいバケモノであれば、きっと、もう生きてなどいなかったのだろうし。
生きていれば、会えるのかな。
こんなバケモノでも
中途半端な、裏切り者でも
―――会えるの、かな。
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しばらく歩いていれば、動く集団の影が見える。
またコッチの生物だろうかと、身構える
―――なんで
―――――――なんで?
―――――――――――戦わなきゃいけないの
どう見ても、どう見ても
なぎさん 鯨洲さん うぱさん たんていさん
あのヒカラビ荘のみんな
会いたかった
会いたかったけど
ねぇ
どうして
どうして、今なの?
―――それにそんな
まるで、敵を、見るような目で、見ないで
化物を 見るような、そんな目で
私は、結宮 拘
いやだやめてやめてそれだけはやめて
ヒカラビ荘の、ひとり、だよ?
傷つけたくない嫌だ嫌だ
嫌、だよ
嫌、だよ
行くわよ、と聞こえるその声
いきたくない
『世界を、手に入れようね』
いらない
無邪気に進むその足は
止まって
彼女たちの元へと
いっそ私を して
そうして交わる――生かすために、生きるために。