厄神を祀る神社の巫女?
否、自分こそが厄神だったのだから笑えない話だ。
これでも元々はある1つの世界の神をやっていたにも関わらず…
ああ、こんな姿、見られればどうなるだろう。どう見ても追放された住人に見える
ではないか、私があの町を守る人間だと言っても信じてもらえないレベルだ。
何せ、腕がない、これでは手を繋げない、顔がない、これでは自分の瞳を見てもらえない。
足枷、これでは走り辛い、首にも枷がある、首を動かせない。
我ながら無様だ。実に無様だ、
これが、救えない世界を救った罰か、ああ認めよう。あの世界は
救われる程の何かはなかったと。愚かさはそのままに、あの者達は
救われてしまった。1人の命を犠牲にして──
迫害し、傷つけ、その末に世界は救ってもらおうなどと…あれが人間の所業か?
私が毒を飲まされた日から微塵も進歩をしていない。
その末に、あの世界は神の存在すら忘れてしまった。
挙句邪神呼ばわり、彼が言うのならば仕方がないと思う、
1人の生贄に私が選んだのだから、彼にとっては邪神に他ならないだろう。
だが、その他大勢に言われる覚えはない。
神としてのユーリも、ただの予知能力を持った子供
ユーリ・メルクスも、何もかもあの世界は忘れた、私の居場所はどこだ。
あの世界の奴のことだ。かの勇者のこともどうせ風化させてしまうのだろう…
私を忘れるな、生贄の1人を忘れるな、
忘れるな、屍の上にその命があることを…
忘れるな、私とお前達が殺した1人の救世主のことを──
死を想え
…………………ああ
でも、私は人類に絶望したわけではない。
あの世界の人間は嫌いだ、掃き溜めにいて当然のゴミのような人間どもだ。
度し難い。
その中に偶然いたマトモな人間はあの世界の人間にとっては贄にしかならない…そんな世界。
でも、あの町での出会いは、特別だった…あの町での記憶は…
私は神である前に人だった…だから、もらった思いというものは大きい。
温もりが、貰った言葉が…
……私はアンジニティだ。
あの世界から、神々の世界から、追放された末にここに辿り着いた神。
そんな大層なものではない、最早私はこの姿でもあの皮肉の様な異能を振りまく存在でしかない
こちらでは制御が出来るだけまだ力になれそうだ…
そう、人の力になろう、それこそが私の贖罪…私に罰が訪れる日まで…
この世界で、自分はいつまで生きていくだろう…
この場所でもし…
もしも…自分が………
死した者の偽りの生に他ならない。
人も、神も、何もかも、等しく訪れる死。
私はそれを先延ばしにされている…処刑を待つ死刑囚。それが私。
…………少しでも、1日でも長くあの町での記憶を重ねたい。
宿守の悠里は幸せそうだから…
だから──