今は無きDMMエロブラゲの話だが、二作目に何を選ぶかはなかなか悩ましかった。
第二陣、団体戦であれば次鋒ということになるが、
まさかレオパルドン扱いにするわけにもいかないからな。
初手に全力を出した分、ここは変化球を投げることも考えたが……
そもそも何作紹介できるか定かではない以上、あまり遊んでもいられない。
というわけで今回もストレートに、是非にも挙げておきたい一作を紹介しておこう。
「ごちそう娘と魔王の厨房」だ。宣伝の都合上、一般版の「デモンズキッチン」の名が表に出されることが多いが、
実際に通るのは略称で「ごち娘」だな。
しかし語るべきところの多いゲームだが、一体何から手を付けたものか……
とにかくキャラは良かったし、スタッフも力を入れていたはずだ。
たとえば事前段階などで表看板的な扱いをされ、サービス開始記念イラストにも持ち出されたフレーズ・ジェノワは
イラストレーターのさいとうつかさ氏としてもかなり気合を入れて描いたのが伝わってきたし、
実際本人も気に入っているのだろう、今でもpixivの本人アカウントのアイコンになっていて涙が出てくる。
Twitterのアイコンもかなりの期間彼女だったはずだ。
宣伝にもかなり費用をかけていたし、後述するが開発において手間や資金を惜しんだ感じはなかった。
当初はプレイヤーの期待度もかなり高かった記憶がある。
だが、このゲームは散々な評価であっさりとサービスを閉じることになる。
早い段階から徴候はあった。
第一報から事前登録開始のまで遅さ、そして不具合、延期、しかも出てこない情報……
この時点で経験のよほど浅い者でなければ察するところはあったはずだ。
そして実際にサービスが開始された時、俺達の前に出てきたのは
スタッフの「こんなはずではなかった」という声が聞こえてくるかのような、
しょぼくれた安物の料理だった。
断じてそれは「ごちそう」ではなかった。
そもそも事前の情報とはゲームシステムが大きく変わっていた。
擬人化少女であるごち娘を材料から「料理」するシステムはほぼ有名無実化されていたし、
自らの好きなようにダンジョンをメイキングして訪れるごち娘たちを待ち受ける、
言ってみれば刻命館シリーズ的な触れ込みだったはずが
ステージごとに決められたマップを多少、いやごくわずかに弄れる程度になっていた。
残った物は、ひとりずつ並んでやってくる敵を何も考えず強い順に配置したキャラで待ち受け、入り口で叩きのめす
なんの面白みもないタワーディフェンスだ。
わかると思うが、レア度とレベル値のゲームでそんなシステムにしたら面白くなるわけがない。
高レアのキャラのレベルを上げないとどうあがいてもクリアできないし、
レベルを上げたらもう何も考えることがない。
プレイヤーに創意工夫の余地はなく、しかも一戦一戦がどうしても長くなる。
システム上はトラップの配置というものもあったが、消耗品の上に使うと評価が下がり、
そもそもスポーン即キルするだけで済むのに足を止めたり誘導したりする意味がない。
なんとかしたかったのか、後にイベントステージに必須にしてみたり使うと有利な効果を得られる罠がでてきたが、
正直マップの端に適当に投げ捨てておくだけのものの消化を要求されている印象しかなく、
プレイヤーからしたら面倒が増えるだけの結果となった。当たり前に悪手だ。
ゲームとして、面白いものを作ろうとした気配は随所に見受けられたのだ。
発想自体は可能性を秘めていたと思う。
だが、それは現実に形として生まれることはなかった。
開発の遅れとそれによる開発費の増大に耐えられなくなり、
大幅な規模の縮小が行われたのだろうことは疑う余地が無い。
そしてこのゲームの駄目なところはそこにとどまってくれなかった。
いわゆるソーシャルゲームの運営として彼らは素人だった。
お定まりのサービス開始直後の高負荷やバランスの悪さ、
根本的なシステム的不備の多さといった問題の洗い出しをする間もなく、
またプレイヤー側の育成期間を置くこともなく、
いきなり100ステージから成るマラソンイベントをおっぱじめるのはプレイヤーの踵を返させるに十分な所業だろう。
その1ステージ1ステージが先述の通りの有様だから苦行でしか無い。
そして、その100ステージをクリアしてから
ようやくRやHRのキャラがドロップする
かもしれないステージがプレイできるようになるクソ仕様だ。
それまでのマラソンは本当にただの苦行だし、RだのHRだのが戦力になることもない。
これに比べたらその後の収集イベントの目標数量がちょっと正気とは思えなかったとか些細な問題だろう。
ステージクリア時にみられた主人公(魔王)の下品なゲス笑顔が最高にウザくて不評となり
βテスト終了時に撤去されたとかは笑い話でしか無い。
いや、絵そのものの出来は良かったんだが。ちょっと毎度毎度見るのは、うん、辛くてな……
結局、なんとかしてテコ入れを図ろうとしたものの、有効な方策がまるで見当たらないままに
3ヶ月ほどでサービス終了の憂き目にあった。
とまあとにかく酷いゲームだったが、俺はそれなりに評価している。
何しろエロシーンの出来が凄まじく良い。比肩するものは未だに存在しないと断言できる。
今でこそ一枚絵だけではなく「動く」寝室も珍しくはないが、
これに関してまだそれほど一般的ではない時期にもかかわらず圧倒的なレベルの高さを誇ったのがごち娘だ。
ただ揺れたり前後するだけの繰り返しなどでは及びもつかない、
緩急のついた動き、繊細に調整された表情変化、キャラの設定との調和……
エロシーンで別人になるだの乳房の大きさが可変式だのみたいな低質な、エロを舐めてる連中とは格が違った。
正直、まともなゲームが出来てたとしてもこれにかけられたコストで赤字になるんじゃないかと思っているし、
実際いまだにこれのレベルに並んだものはない。
今までで一番ごち娘に近づいたのは「剣と魔法のアカデミア」の寝室だが……
近い、というか同系統の技術を低コスト化したという印象があったな。
あれに関してここから技術の系譜が流れているのか知りたいところだ。
そして繰り返しになるが、キャラという面では本当に申し分なかった。
擬人化物で大切な、元ネタとのイメージの調整という点でもそつがなかったし、
設定、テキスト面でもキャラを魅力的に描けていたことは保証する。
低レアの素材キャラたち(5人1組のコンパチ)でさえ、よくあるパーツ書き換えの量産型と思いきや
基本のポーズと服のベースぐらいしか共通しておらず、
元ネタに合わせて様々な意匠の差異があり、体型すら設定に合わせて調整されていたりする。
一見してコンパチとは思えないほどだ。
だが全体として印象がさほど良くはないのは、
やはりゲームシステムの問題でどうしてもキャラと主人公との関係性が一辺倒になり、
そもそも主人公の魅力に関してはろくに描けていなかったせいだろう。
こう、傍若無人だが料理のことに関しては妥協しない的なキャラの想定なんだとは思うが、
それと迷宮要素が特にかみ合ってないので結果として
何かと言えば「だったらクイズで勝負だ!」とか「麻雀で勝負だ!」とかのノリで
迷宮攻略勝負を持ち出す変態性欲魔神みたいになっていた。変態性欲魔神なのは事実だ。
結局、問題が起きても解決するのは迷宮攻略勝負で、
料理要素は問題を起こす方の理由付けにしかならんのだが、
そのため料理部分に偏ってるはずの主人公の魅力が描けないという事態に陥ったわけだ。
いや、シナリオ内でのコメディ要素としては十分よく描けていたと思うのだが、
このゲーム、エロは陵辱じゃなくて基本ラブいんだよな。
だから主人公の魅力がわからないと、女性陣がなんでこいつに惚れてんのかイマイチ納得できなくて困るというわけだ。
エロシーンが完璧に最も近かっただけに、この瑕疵は残念だったと思う。
とまれ、やはり「ごち娘」は語り継ぐに値するだけのものだったと俺は結論付ける。
それだけのものを見せたのは事実だし、
そうならなかった大多数のダメダメな部分も、決して雑な仕事や手抜きの結果ではなく、
単純な実力、経験不足やコストとの折り合いという面が強い。
こんな世界ではあっても、やはり志を持ってそれを掲げたものはその点において評価されるべきだと思うのだ。
サービス終了については残当という他はないが。
以上、今回はこんなところだ。
さて、
前回言い忘れたが、一応此処で話題に出すゲームは全て自分である程度プレイしたものだ。
ただ、最後まで付き合ったゲームではないものも有る。姫銃とかリニューアル後はほぼ触れてないしな。
それ以外にも事実誤認等起こりうることは断っておかねばならない。ほぼ個人の記憶に頼ってるからな。
悪しからずご了承願いたい。
そんなわけで、タイトルの選択も偏ったものになると思う。
たとえばLord of Walkureなんかは語りたいこともないわけじゃないが、
歴戦のkssmに向かって語れるほどの熱量はちょっと無い、そんなところだ。だからやらない。
少々固くなってしまったが、まあリスク管理というやつだな。
実際のところ書き散らす分には気楽なものだ。気楽に見てくれればいい。ではまた次回をお楽しみに。