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Diary | ||
元の世界に帰れることになりました。 こちらも悪くないですけど一度は戻らないと鶫も心配しているでしょうし、おとなしく帰ることにします。 ――――――――――――――― 石を削る音が響く、その度に文字が刻み込まれていく。 その文字は魔術の刻印、形ある言霊。 アトリエ工房で武具に魔力を宿すために幾度となく使っていたそれを一心に刻んでいく。 そこに込められるものは魂、自らがここにいたという証。 いつかまたここに立つのは自身か、あるいは他の誰かなのか。 いずれにしても今はただこれを残すことだけに力を注ぐ。 刻まれた文字に手をかざして。 願いを込めて。 祈りを捧げて。 想いを乗せて。 全てを置いて。 「さようなら、また、会う日、まで」 言葉を残して。 そして、いなくなった。 ――――――――――――――― 「姉様?」 懐かしい声が聞こえた。 「ただいま。ちゃんと、帰って、来れました、ね」 あちらに行ったときと同じように突然消えて突然現れた、のだと思う。 そこには驚いた様子の妹、鶫がいた。 「ただいま。じゃないですよ急にいなくなってどこに行っていたのですか」 「ちょっと、かれいでぃあ、へ」 「かれいでぃあとは、どこです? ってどうせ聞くだけ無駄ですね」 「かれいでぃあ、は、かれいでぃあ」 「はいはい、それより姉様が帰って来たこと母様にもお知らせしなくては」 鶫が歩き出す、それを追って視線を動かして、ふと周りの風景に目がいく。 そこにあったのは秋、木々が赤く色付き枯葉と枯草が地面を覆う、旅立つ前と同じ秋の風景。 「こちらでは、どれくらいの、時間が、経っていた、のですか?」 「季節が一巡りする程です、姉様がいない間はとても忙しかったのですよ」 「そうですか、100年、とかで、なくて、よかった、です」 鶫はよくわからないと言った表情を浮かべ、しかしこの姉にそれはいつものことと思いなおして気にせず歩いて行く。 言無も懐かしい風景を眺めながら鶫の後を追って歩きだす。 と、少し進んでまた立ち止まって振り返り。 「さようなら」 そして言無は元の世界、元いた場所、元の生活に戻っていく。 言無が再び旅立つ日は訪れるのか、今はまだわからない。 |
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