ディアーネの一週間

「……なんと言うか、如何にも占い師というか、含蓄ありそうな言葉が上手いのー（感心）
しかしその組み合わせじゃと、太陽がないのが少々寂しい感じじゃの。
この世界らしい、と言えばらしいし、月と太陽は同時に現れぬものじゃが。
同時に月の光は太陽の照り返しゆえ、表裏一体でもあるしの（うむ）」

「ちなみに全然余談なのじゃが、工房に来たときはなんと言っておったのかの？
聴いた覚えのない言葉ゆえ、よく意味がわからなかったのが少々気になる次第じゃー。
魔術の秘儀は秘める事、それもまた秘密だったりするのかの？（はて）」

「ふぇ、役に立てたなら何よりだよ？

ううんー……マジシャン引けたのは、単なる偶然だと思ってるけど…。

…あれ、おねーさんポニーテールにしたりした？」

「神通力により、獣の心の声が流れてきます。

ぇ、なに、この怪文書・・・・ッ
脅迫されてる！？」

「・・・いや、ちょっと待て。良く見ると読めるではないか。
しかも、良く見ると、前の客ではないか。

・・・工房、か。もしや、あの女性か。

追記の部分に目を移すと、獣は何度もその文章を読み返します。

・・・ぇ、なんか期待されてるのか、我。
確かに守り神みたいな事はしてきたが、こんな願いは初めてだぞ。
しかも、メッチャ私利私欲・・・」

「・・・仕方あるまい、誰にだって欲はあるものよ。
我にだってあるものだ、無欲な人間なぞ居らぬ。

まぁ、ただでやるわけにはいかぬ、一仕事してもらおうか。

のそり、と立ち上がると包みを口に咥えて。工房の方へと足を運んだようだった。」

「！」

「そうですか、そう、ですか…
いえ、てっきり食べられるつもりで来てましたゆえ、その言葉を聞けて安心しました」

(ほっとした様子でため息を吐いた)

「それはそうと、鏡の類を持ってはいませんか？
カモノハシになったことはわかるのですが、今自分がどんなカモノハシになっているのかはわかりませんゆえ、確認しておきたいのですが…」

「この世界に来て体をとっかえひっかえすることにはなれたつもりでいましたが、よもやカモノハシの体がこうもすさまじいとは思ってもいませんでしたよ。
なんというか…筋肉と支配神経のバランスがとれてないととでも言えばいいでしょうか…？
平たく言うと勝手に動きます、この体。」

「そうですか、時間が経てば元に戻れるわけですね。
なるほどなるほど…しかし逆に言えば時間が経たないと解決しない、と。
弱りましたね…あとどれくらいこの姿でいればいいのやら…
向き合う前にカモノハシの本能に飲まれてしまいそうです…あぁお恥ずかしい話ですが、今にも踊りだしそうです。」

「なってみてわかったのですが、少なくとも私に体を提供して下さったこのカモノハシは攻撃的なご様子で、『乱舞』と『ミミズ』が思考の大部分を占めていますね。
これらの思考はどうも単純ゆえに強力な意思のようで、私の意思とは関係なくこの二つを求めて動くようです。
間違えても今の私にミミズを見せないでくださいよ？乱舞で奪い取りかねませんから。」

「なるほど、直感…。」

(そうつぶやくと、目を閉じ、深呼吸をしたかと思うと草むらに飛び込んだ)

「……カモッ！やりましたよ！大物ミミズ獲得です！」

(手に大きめのミミズをプラプラさせながら嬉々として呼びかけた。)

「………………………。
えっと…カモノハシの本能が思ったよりも強く出てきてるようですね。」