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Diary | ||
僕は鎖にすがっているようだった。 おいすがり、鉄粉の臭い、手を裂く痛々しい経験の上に、 痛い物がさきっちょにぶら下がっている。 鎖をたらしているのは、いじわるなもの。 落ちても、登っても、触れていても痛みだらけのこの生活、環境、というもの、僕の行動、 けれど、僕はそれらを投げ捨てる気にはなれない。 死が終点だとも、懲罰だとも思わなければこそ、僕が行くべきは生の道だった。 いばらをつきぬけるには、血と肉と痛みが要る。 また、知恵と視点と覚悟が要る。 盤という世界があって、駒という生命の群れがあって、手という神さまがいる。 僕がルールをつくらなければ、それらは無駄な、空虚な、存在すら認められないものだ。 なにもかもがおじゃんになる 僕はそんな大層なものでもないのかもしれない けれど、僕には、僕がかかわる事の必要性が感じられた。 僕はサソリ君の元へやってきた。 サソリ君はいつもと同じに、ガゼル君とマンタ君と三人で要る。 のら達に睨みをみきかせるように、小高い丘から彼らを見下ろしている。 けれど、みんなにはべつにサソリ君、ガゼル君、マンタ君に怯える理由なんかはなかった。 彼らは、ある角度から見ればとても痛々しい。 過去の栄光にすがる没落王家たち、タカのいないタカの親衛隊では、なんの威厳もなかった。 まあ他の猫たちは人間を知らない分、そんなものに彼らを重ねたりもしない。 僕がそう思うだけで、この生真面目な猫たちのことを憧れてみるものもいるのだろう。 僕の訪れに反応を示したのはマンタ君だけであった。 マンタ君は柔軟な子なので、僕がこんな風に訪れても自然な身がまえをしてくれる。 ガゼル君はおっかない顔で、いつでも肩を怒らせているような子だから、僕が望むような会話は出来ない。 サソリ君は無反応で、耳がはねるのできこえているのはわかるのに、まるでこちらに関心がない。 僕はマンタ君に会釈をしながら、サソリ君の正面の崖に下り、視界に入る。 「サソリ君、ボスになるの」 サソリ君は無反応だった。 崖を見下ろしていたのと同じで、剥製みたいに微動だにしない。 一応僕を見ていると思うことにしてはみたが、顔がないので実際の所はわからない。 それよりも、ガゼル君がすごい剣幕でこちらを向いた。 僕はその牙の向くのを見止め、ちょっとぎょっとして、ガゼル君に頭を下げる。 ガゼル君は赤い毛を逆立て、威嚇の声を息のつづくところまで一声にだすと、 風のように崖を駆けていってしまった。 僕は相当に気に障ることを言ったと呆気にとられてサソリ君を見直すも、 サソリ君は仁王立ちしたままひげ一本動かさない。 マンタ君の方を見ると、マンタ君は猫らしくもなくあぐらをかいて ほんの少しだけマタタビをまぶしたキビをかじってトロンとしていた。 そしてガゼル君の足音がきこえなくなった頃に、いかにも無気力な様子で口をひらく 「けんじ、ボスはタカだけでござるよ」 「それは、失敬した。でも、サソリ君はボスに立候補したんじゃあないの」 「それは…。それと、これとはちょっと勝手が違うんだなあ」 「それと、これ。ボスに立候補することと、ボスになるということ?」 「さすが。物分りが良くて助かり申す」 マンタ君はまたキビをかじって、よっぱらう。 僕は再度サソリ君に向き直る 「どうしてこうも、ボスに執着しないものたちがボスに立候補するのかと不思議なんだ。 よかったら、話しをききたい、話したくないなら僕は立ち去るよ。 たんに、喉がつぶれているのなら、そうだなあ、 それが正解なら右手、間違っているなら左手を出して会話が出来ない?」 サソリ君は右手を出した。 「話してくれるの?」 サソリ君は右手を出した。 僕はほっとする。 「…なぜ、ボスに立候補しようと思ったの? …トカゲ君がボスに立候補したことと関係があるのかい」 サソリ君は固まる。 「大丈夫だよ。言いたくないことは言わないに限る。 僕は君達が、旧知の仲で、とても仲良かった位しかしらないから」 サソリ君の顔のない顔がこちらを見ている。 困ったなあ。 ガゼル君のように嫌悪も、敵意もあらわにしてくれる者は、 対処のできる恐怖であって内心から蝕まれるような辛さはない。 対して、こんなふうに表情もなし。声も上げないものが、じっとして僕の傍にいるのは なんだか不安で辛いものだ。 僕は不躾に彼をきずつけたろうか?卵みたいに終わりのない皮袋のなか、怒ったり泣いたりしてはいないだろうか… 僕がおろおろとしながら言葉を選んでいると、マンタ君が左手を出した。 それに気付いたサソリ君は、ガゼル君がつけた爪跡のとおりに崖を滑り降り、 見えなくなるくらいまで駆けていってしまった。 「悪い事をしたかな」 「なに。そうでもないさ」 「その、左手―」 「トカゲって、あの猫、サソリをああいう風にした張本人でござろう。 サソリは、どんな風に感情を表現したくとも、もう表情も声もなくしてしまった。 無闇に思い出させてやりなさんな。それはおぬしの悪いところ。 けれど、奴とて、いずれ踏ん切りつけねばならぬのだ、おぬしはそう悪くはない。」 「殺して解決、という風にはならないの」 「なるとお思いか」 「トカゲ君はそういう猫だから」 「気狂いめ」 「僕、のらは割とそういう思想かと思っていた」 「自分にとってさほど大きくもない、どうでも良い事ならば、そういうこともあるだろう。 兄弟の縁などというのは、今は昔。 されど縁というもの、容易に切れるものではない サソリは、」 サソリ君はボスに立候補し、決闘でトカゲに向き合うことで、何かを変えようと思っているのだろうか (なんだ、なら、やはり、殺して解決だ。) しかし、それならなえトカゲくんは急にボスになるなどと言い出したんだろう。 トカゲ君なら過去の因縁のためにボスになるなんて考えはしないだろう。 それこそ、ヘビ君とサソリ君を殺してしまえば手っ取り早い。 まともな前足を持たないトカゲ君だが、人間でも対処の難しい毒に明るいのだから殺すことはむずかしくない。 そして僕は、彼と話しをした感じ、彼が感傷で躊躇するようなものではないと思っている。 きまぐれ、嗜好。それに尽きる。 いつでも殺せるからこそ、泳がせもする。彼はサディストだから、いつかの子猫のように容赦なく殺すことが出来ない。 みんなが一様に「狂っている」という彼の心は、 狂っていないものにはとうてい理解できないのかもしれない。 けれど、急にボスになると言い出したことは、きまぐれで片付けられない気がしていた。 好きなことしかしない為に狂ったのだと呼ばれるものが、 つまらないと思うことをするようなきまぐれというのは、それ自体が心境の大きな変化じゃあないか。 それともあの時、ボスになるのなんかいやだ、と言ったことが嘘だったのか― --- 僕は悶々としながら広場のほうへ行った。 そこにはいつもどおりユキ君、トラコさん、ムラサキくん、ブネさんがいた。 けれどまだ、例の火のことで謹慎中なのだろうかミケ君の姿がない。 「やあ、今日は何をしているの」 「やあ!けんじ、今日は何もしていないよ。ミケがいないから」 「ミケ君がいないとはかどらないんだね」 僕はなんだか好きなものが褒められたようで、てれ笑う。 つられたように四匹もくすくすと笑った。 この間合いはまるきり人間の子どもの集まりみたいで、可笑しい。 「僕、手伝おうか。」 「ありがとう!でも、何もすることがないよ」 「そうなの?今は何をしていたの」 「本当に何もしていないんだ。何をすればいいのかわからないし、 何をしたいってだれもいわないからね」 なるほど、見渡しても材料も何もない。 手持ち無沙汰に四匹はまるまっているだけだった。 そのがらんどうを見て、僕は少し寂しい気がした。 僕はどこか、ミケ君とかかわる事で周囲の猫達も当然急激な進化をしていると思っていた。 けれど一番そばにいて、沢山共同で物を作ってきていたこの四匹がすら興味を持てていない。それが寂しかった。 まあ、考えて見ればミケ君というのは、ひとを引っ張っていくタイプではないし、 ちょっと気の強いだけのマリーさんに言い負かされてしまう子だ。 変人と呼ばれることをあきらめてはいるものの、 それをほこったり楽しんだりすることの出来ない子。 周囲に影響を与えることは難しい、か 少しずつ、少しずつ浸透していけば嬉しいのだけれど 「ミケ君を呼んできたら?」 「…そうだねえ」 ブネさんとムラサキ君がミケ君を探しに言って、 広場に残ったのは僕とユキ君とトラコさんの三匹だった。 「ミケはぼくらの希望の星だ」 僕は風が吹いたのかと思った、数秒後にそれがユキ君の心の底に あまつゆみたいに引っかかっていた本音で、ふとこのときにこぼれたのだと気付き 非常な注意でそれを丁寧にすくいあげた。 「そう思うなら、どうして自分自身ではそうしてみないの?」 「それは、そんなにかんたんなことなの?」 |
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今回の滞在 | ||||||
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Message(Personal) | ||||||
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Message(Linkage) | ||
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Ability Setting | ||
アビリティを装備します。
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Item Setting | ||
装備品を整えます。
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Skill Setting | ||
スキルを装備します。
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アイテム工房(発注) | ||||||||||||
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アイテム工房(発注結果) | ||||||
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Schedule | ||
……
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Grow | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
依代の浸透……
レベルアップしました(EXP-120)
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Event | ||
『常闇の祭祀殿』に張られた結界が魔石を霧散させます……。
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攻略の時間になりました!! | ||||||||||||||
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