ユディの一週間

「此処に喚ばれた英霊が英霊と呼ばれたる所以が、
胆力の強さや、物怖じせぬ勇敢さにあるとすれば、
案外、生来からの環境が異なること自体、
彼らにとって瑣末な問題なのやも知れないわね。

…そういえば昔、生物に関する調べ物をする途中、
カモノハシの中には毒性を持つものが居るという記述も…。
此方の世界はそういった特性が無い例なのかしら」

「メイ女史の技術力と魔宝の力が併さって、
一見、酷い見た目の傀儡が出来上がったものの、
その力は本物、まさに学院最大の障害だったわ。
いつの間にか、黒衣の主の同胞であるメイ女史が、
魔宝を持つ学院側に肩入れしている構図が
出来上がっていたのが不思議でならないけれど…」

「あら、ごめんなさい…気にしなくても良いのよ。
私にとって年齢は特別、気を遣うような事でもないわ。
それに、こういう状況を楽しむ方も居るでしょうし、
悪いことばかりではなさそうな気もするわね」

「そうね…今が良い機会かも知れない。
折角だから、私の事について話をしておこうと思うわ。
…貴女には色々とお世話になっているし、
相手の事を何も知らぬばかりに、度々、貴女に要らぬ
気遣いをさせてしまうのは私としても本意ではないから」

「…私はある日を境に自分の身体を棄て、
魂のみで生きる、幽霊の類に近い存在になった。
自分の生まれた年と、今の暦の差を数えれば
実際の年齢が浮かび上がってくるのだけれど、
既に自分の身体を持たなくなった今、年齢自体に
大きな意味があるとも思えないかしらね。

普段は身体を持たずとも事は足りるのだけれど、
職務上、必要な時には生者の身体を依代として
活動する事もあって、実際は元居た側の世界と、
此方側の世界でしている事は変わらないかしら」

「ええ、貴女を含め、様々な方々から援助を頂く分、
此方は実戦でそれ以上の働きをさせて頂く所存よ。
次回の攻略拠点は財源がかなり制限されるとの噂だし、
今ある物資を今まで以上に大切に扱う必要があるかしら。

でも、この間の攻略戦では物資を頂いた甲斐無く、
依代から引き継いだ能力を引き出し切れぬばかりに、
建て直し自体が間に合わなかったわ。私の未熟さ故、
貴女と共に行動出来る折角の機会を逃したのは残念ね」

「…ええ、まるで、小さい子供が見る夢そのもの。
でも、幻創の産物となってなお、忘れえぬその夢を、
彼の師であるサチ司書は、最後まで面倒を見続けた。

後裔達へのお小言が多い…でも裏を返せばある意味、
世話好きな彼女らしいと言えば、彼女らしかったわね」

「卒業式とかそーゆーイベントはイベントで別カウントされるらしいわよ？
だからそっちをサボると大変なことに…。」

「たた、大変！！
次のマップはあの悪鬼らしいわ！？
盾にされると分かった悪鬼がついに復讐を決意してしまった…嗚呼、私達はもうおしまいなのね…。」

「環境への柔軟な順応は潜入の基本だから大丈夫！
…大丈夫よね？　私。」

「今回も知略食らってた四天王さんたちはもう…。
ただあの汚さは必要な時もあるんじゃないかしら。勝てば官軍だし。
…あの悪鬼に勝つためなら…どんな手段でも…私は……。」

「……呼ばれました。入札内容を伺います」

「……青色で100個で入札します。」

「……魔法使いの腕章へ総魔石100個で受付ました……良い取引を」

「……残念ですが落札はできませんでした。開始50、入札8、終了150でアヤ(E-No.134)が落札しました。出品者はウィート(E-No.435)でした」