藍夜の一週間

「出遅れた分を考えると、ベッドに縛り付けられている期間を削る為にも斃れずに帰ってこないといけないとは判って居るのですが……
でも、ひとつ気がつきました。
どっちにしろ一撃貰ったら大抵はアウトなので、元気なままで帰れない方が普通なんだなって。
(眉間に指を当てて表情をしかめながら)……今回も見事に一発でしたしね……

支援射撃を体得しているヨリシロがあっさり回ってきました。
お陰で暫くは中級に進む為の準備に魔石を割り振れそうです。
……もうちょっと争奪戦が起こるかな？という危惧は抱いていたのですが、そんなことも無くて。

あと、私も連携していく方が好きですね。やはり敵を倒してこその銃だと思いますし。
……何かと藍夜とは気が合いますね(にやり、とまでは行かないがそれに近しい笑みを浮かべ)」

「団子みたいな乱戦状態に、外から打ち込んでも誤射しないように修練は積んできましたが、あの戦場アナにだけは何故か経験が通じないんですよね……良く判ります。
しかもあの距離から正確に反撃して来る事もあって、どうしたものかと……

たまに、意図的に狙いたくなってくる時がありますね。
戦線を維持している主力の攻撃に巻き込まれて邪魔をした挙句、反撃一発で伸していたりする時なんかは顕著に。」

「んー……あんまり気にしたことは無かったですね。それが当たり前でしたから。

異文化といっても、言葉さえ通じれば結構なんとかなるものです。
話をするだけ無駄と言われていた蛮族とだって、場合によっては話が通じたりしますし……。滅多にありませんが
だから、その……あんまり元の生活と今の生活がかけ離れて居たからと言って気にすることは無いと思いますよ？

後は……そうですね。結構この世界に来た人達にとっても、ずっと夜でなんか変なのがたくさん居る世界というのは珍しいんじゃないかと思います。少なくとも私にとっては新しい感じですし。
そもそも帰る事も出来た訳ですから、残った人は要するに特殊な状況を楽しめる人が多いんじゃないかなって思います。
そんな人達に囲まれてれば、感化されて気にならなくなったりするんじゃないでしょうか……」

「そうですね……やはり愛でる側の方が好きです。
なんでわんことかにゃんことか、あんなに可愛いんでしょうか……
魅了抵抗の難易度が尋常じゃありません。ほぼ失敗している気がします。
敵が全員そんな可愛いものだったりしたら、引鉄を引ける自信がまったくありませんね……
エトランジェらしき黒猫さんは、とても危険なのが判って居るので流石に躊躇しながらも全力で叩きますが……
味方になってくれないかなぁ……(ため息ひとつ)

カモノハシ軍団、なんだか妙に強かったですよね。
普段といろいろ勝手が違うのに、寧ろ強くなっているなんて変だとは思うのですが……

マスコット的な何か、ですか。そういえば居ませんね。
最近職業アイドルの人をちらほら見かけたりしますが、カモノハシか召喚師さんがその役割だったんでしょうか……？」

「優秀なデコイですよねぇ、あの蝙蝠達。
沢山射撃屋が居れば、最初の二人くらいでほぼトラップは潰せますからそこまで深く気にすることも無いかもしれません。
少数のときは……やっぱり近接の人や魔法使いの人と連携を取って数を減らすのがベストみたいですね。

元々、あちこちお手伝いするのが好きなんですよね。
始祖神に仕える神官資格も持ってたりする程度には、誰かの為に何かを成すのは好きです。
それでも……必殺の一撃に美味いこと連携が取れたときの爽快感は凄いんですよねぇ
あの快感の為に連携していると言われても否定出来ない所がありますし。
うぅ、段々と動機が不純になって来ている気がします……

武器狙いは、まあ、出来たら……くらいですよね。
あんな動き回る小さな的ばかり狙っていたら連携を取る機会も失いそうですし。
……息をする様にああいったものを狙える射手になってみたいものですね
」

「ありがとう。
今の私があるのも、すべて母さまと神父様のお陰だから、そう言って貰えると嬉しい。
でもね？私が藍夜に話しかけたのは、神父様のお導きじゃなくて、私の意志ですよ。
こんな風にいろいろ語り合える友達が出来て良かった。

なかなか面白い言い伝えですね。でも、なんだか判る気がします。
人の意思や人間性って、確かに目に良く出ますしね。

……あっち側だと、皆アクが強くてこんなに落ち着いてお話なんかできた記憶が無いんですよね……
母さまや神父様とはこんなお話はあんまりしませんし。」