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Diary | ||
空を見上げている。いつも、夜の雲は、昼間の光を遮る役割りを忘れたみたいに暗闇に光って浮かぶ。 ここは、僕というものが、視界を上にあげても、下にさげても、雄大なものばかり、それで、頭が痛くなる。 僕は、僕というものさしでしか世界を計りえない事にこんなにもうんざりしている。 全ての動物、植物、人間、そら、うみ、とか、とか、世界のすべてを、 僕という標を中心に、円を描くように広がる視界でしか、世界を見られない事に、嫌気が差す。 もうまくに映るこの世界、小さな雲や、奥の奥の奥の…空、星、多くの遥かなものが身近にある。 (かつての僕の居場所で)もっとも聡いという僕が、こんなにもちいさなのだから、 僕はときに世界に絶望する。失望する。 (それは、大変子供じみた考えで、万能感のなかまの類であると思う。) 浸透圧の関係で、小さくごちゃごちゃとした僕が、雄大な空にばらばらになっていく気がした。 ----------------------------------- 夜鷹の星を見ていた、小高い丘に、あの三毛猫が、けんじとおんなじようなおももちでたたずんでいる。 考え事をしているというには、少し注意力散漫で、 すぐに風の音にふりかえったり、虫や鳥に首を伸ばしたりしている。 足音を抑えたつもりのけんじにも、すぐに気がついた。 そして気がつくやいなや、目を光らせてぱあっと明るく笑うのだった。 「ミケ君、考え事をしているのかい」 「ああ、けんじ!うん、このごろはオイラ、考えることが多くって、いつでも何か考えるんだ。 それで、考えごとをしながら実験をするものだからお腹を火が焼いてしまってね。あぶないってさ、みんながここへ追いやった。」 「ミケ君、ケガをしたのか。見せてごらん、治そう」 「いや、いい。オイラ痛いのはきらいじゃないんだ」 「それは、マゾヒズム?」 「わからない。ただ、オイラが痛い目みたのは、オイラの容量がわるかったせいだ。」 「はじめから何もかもうまくいくのは稀さ。失敗は成功の元だというね」 「はじめたのはもっと昔だよ。ただ頭でわかってだめなことは、体でわかってみようと思ってね」 「そう」 ごう、と強い風が吹いた。力を入れていなかったけんじの長毛の尻尾が体になめつく。 ミケはしっぽも体毛も極短な猫なので、風にはなびかない。 少しうるさい風がさったら、足元にあった折れ木が音を立てて丘を滑り落ちた。 「そのことを考えていたのかい」 「いいや。」 「オイラ会わない友達のことを考えていた」 「あわない友達?」 「そう。オイラ達、気分が向かなきゃ、会わないからね。もう長いこと会ってない友達、 このままお互いのタイミングが合わなきゃ、ずっと会わないままかもしれない。 オイラが会わないとき、オイラの友達は元気でいるのかなあ。 オイラが好きだったあいつのままかな。それとも、死んでいるのか」 「ああ、」 ああ、もしかして、『そう』、そうなのかな? ミケくんは、 「タカ君が死んだと思わないから、辛くないの?」 「さあ、オイラわからない。けれど、アイツが視界にはいらないでいるのが、うれしいのはたしかだよ。 かかわりたくないんだ、ヤなヤツだしね。」 「僕にはどうも、ミケ君がタカ君がきらいだというふうには思えないんだ」 「きらいじゃないよ。ただ、アイツはオイラやオイラのすきな猫たちを、苦しめる。 オイラがアイツをきらいじゃないのは、アイツが価値感もっているからさ。 価値感もってるヤツは、オイラすきだなあ。 オイラがアイツをいやがるのは、アイツが価値感を押し付けるからだ。 オイラはまだいいさ、けれど、のらはみんなアイツの価値感押し付けられるんだぜ。 自分でみちしるべを探せない道に引きずり込まれて、うろうろ迷う、タカがしるべになるったって、 そりゃタカの道を歩かされてるだけだ、それも、タカのうしろをね… だからオイラ、アイツがいないのは、せいせいする。」 ミケは、空の雲を吹き飛ばすような一息でつよくつよく言葉を続けた。 少し舌がもつれるけれど、あまりに自分の言葉に夢中なので、それにも気付かない様子で強引に次の言葉を出している。 そして今度は一息吸い込んで、飲み込んだ。 けんじから目を逸らして、軽く身をかがめた。 「けれど、オイラはタカと会わないんだ。 それを世界はタカが死んだという。」 けんじはなんとなし、自然と目線をミケと合わせた。 体格差はほとんどないから、少し身をかがめて、水平に空と陸との境界を見てみるだけだった。 ミケとけんじとが、いよいよ身をかがめて、首を伸ばし、境界に目を凝らしている。 「ミケ君は死について考えるんだね」 「山羊を殺したからね」 「くいているの?」 「くってきたんだ」 「食ったの、山羊を」 「死んだ山羊を食べたのはニンゲンだ」 「そう」 「死んだ山羊が死ぬ前まで感じていたのは空腹だ。」 「がっついていたオイラがそのとき感じていたのも空腹だ。」 「あいつの生きていたとき、オイラも生きたあのとき、 感じていたもの―持っていたものは同じだった。 どうしてあいつは死んで、オイラは生きているんだろう。」 「そんなことを考える時、オイラの場所にはあいつの影がおちている気がするんだ。 おんなじに、あいつは、オイラの影を引きずりこんで死んでいった気がしてたまらない気分になる。 今ここにいるのが、あいつじゃなくてオイラだということに理由があるの?けんじ」 けんじは一度地面に視線を落とす。 そこには影はなく、そも、影の中にいるような、夜の闇が世界を覆っていた。 「それはね、君が猫だからさ。 その山羊は、死んで人間に肉を食べられたんだろう。 そしてね、その時死ななくて、そんな時を経て 成体になれたとしても、人間に肉を食べられていたんだ。 人間の世界のおはなしに神さまは自分に似せて人間を作った、なんていうのがあるね 人間の運命は神さまがつくる。 山羊の運命は人間がつくるんだよ。 けれど、幸いにして君は猫だ。猫の運命は猫がつくる」 「神さまというの」 「わかる?」 「オイラ、くじらと話したことがあるよ。」 「くじら君、そんな事を話すの?」 「うん。オイラがくじらを好きなのは、あいつが哲学する猫だからだ」 「哲学ってどんなことだい」 「『そんなんじゃないこと』さ」 「『そんなんじゃないこと』?」 「そう、『そんなんじゃないこと』」 「生きる為とか、楽しむ為とか、『そんなんじゃないこと』。」 「向上に必要なもの?」 「そんなんじゃない。」 「自己を見つめなおす?」 「そんなんじゃない。」 「そんなんじゃない」 「そんなんじゃない。」 「神さまって言うのは、アイツ、くじらはね、絶対的な価値のことを、神さまって言うんだって言った。 『ぜったいてきなものがそんな、生き物みたいな考え方すると思わない。 ぜったいてきなものは おおきさ そのものだ タカにとっては つよさ が神さまだったんだ』だっけね! そんなことを、たしか言ったんだよ。 だけど、そしたら、神さまオイラ達それぞれで定めてたらないとかたちを持たないだろう。 それは、神さまじゃない。神ってひとつのあいつなりの代名詞とおもわない?」 「そしたら、ミケ君の神さまってどんなのだい」 …。 「オイラは、神さまって何でも知ってて、その知恵を与えたり、与えなかったりするものだと思う。」 ミケがけんじをじっと見つめる。目をぎらぎらとさして、 視線はけんじの二つの目玉にあわせたまま、 言ってやったぞ、言ってやったぞと呟きながらピョンピョン往復幅跳びをした。体から蒸気を噴出して、歯を食いしばって、興奮している。 けんじは、彼の意図することがわかると、失礼だという平常の思考がおっつく前にふきだしてしまった。 「ミケくんは、僕を神さまだと思っていたの!?」 「ちがうの!?」 けんじは声を出して笑ってしまって、ごめん、といいながら口をおさえた。 続いて三言ほどそうだなあ、とか、うん、とか独り言を言うと、すっと笑いを飲み込んで姿勢を正した。 「何でも知っているというなら、ミケ君。僕は神さまじゃないよ。 現に君が僕を神さまだと思っていること、今の今まで全く知らなかった。 マリーさんが今何をしているかも、次ののらのボスがどの子になるのかも知らないよ。」 (ミケ君が僕を純粋な猫ではないと思っているのは感じていた。が、まさか神さまだと思っているなんて。 あのニンゲン好きのミケ君であるから、 僕がニンゲンであることを感づいてそれでいてどうしてその話を切り出さないのかと不気味にも思ったものだけれど、 やはり彼も、猫だなあ。 猫らしく、ばかとも言ってしまえる、飛躍した世界を持っている。 僕はそれがなんだかおかしかった。) |
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