Infomation | ||
|
||
Diary | ||
皆が寝静まった後、わたしは森の片隅で防人を手にしていた。 肩に担ぐように留め、左足を前に出し、右足を引く。……身体が覚えている構え。 そのまま右足を弾丸のように眼前に踏み出し、身体を正面に射出する。 この時、肩に力を籠めてはいけない。腕に力を籠めてはいけない。掌に力を籠めてはいけない。 わたしが剣を振るう上で何よりも大切なのは重心。体重の移動だからだ。 身体ごと叩き付けるような感覚。その運動は余計な力を籠めるほどに鈍ってしまう。 右足が地を踏みしめるのと同時に、鋼の雷光が空気を切り裂き闇夜に瞬いた。 放たれた一刀は疑いようなく、わたしの成せる最速。輝いた雲から落ちる稲妻。 防人の故郷では、弐の太刀要らず……と呼ばれる技。雲輝の一刀。 ふぅと大きく息を吐き、足を引いて再び同じ構えを取る。 強く踏み込んで剣を振る。何度となく同じ所作を繰り返し続ける。 二十、三十、四十……やがて、額に大粒の汗が浮き出た頃に、防人が口を開いた。 『本当に……何処で身に付けたのであろうな』 「……なにを?」 『剣の術理よ。師も無く如何して身に付けたものだとな。 秒を十に割り、糸。糸を十に割り、忽。忽を十に割り、毫。毫を十に割り、厘と云ってな。 弐の太刀要らずの遣い手は多く知るが、老練の剣士とて忽の域に辿り着ける者は少ない。 ……だが、お主の剣は毫にまで至る。其れが不思議でならなくてな』 剣と足を止めて、記憶を手繰り寄せる。 頬に手を当て記憶の引き出しを片端から開けてみる。 頭を抱えて記憶の箪笥を揺すってみる。 …………。 ……。 いつ、どこで、この剣を身に付けたのか。それはわたしも良く覚えてはいない。 気が付けば理想となる形のイメージは頭の中に。必要な体捌きは身体に染み付いていた。 違和感があるとすれば、脳裏に描かれるイメージ。理想の雲輝を遣う剣士の姿。 其処で舞い踊り神速の剣を振るうのは、濃紺の薄絹を纏ったわたしじゃない誰か。 ……ずきりと頭が痛む。 『……思い出せないなら、無理はするな』 防人の声ではたと我に返る。じっとり滲んだ汗がやけに冷たく感じた。 かぶりを振って濁った意識を吹き飛ばし、修練を再開することにした。 大きく肩に担ぐように構えを取り―――右肩から左の腰下へ向けて振り降ろす。 等間隔に地を踏む音を響かせ、寸分違わず白刃で同じ軌跡を描く。描き続ける。 「ねえ、防人」 『……どうした?』 「もっと迅く剣を振るうには、どうすればいいと思う?」 『成る程、先の戦の一刀を再現したいのだな。……難しいな。 毫を十に割り、厘。厘極まりて、雲輝を成す。然り、先の一刀は正に雲輝だった。 しかし、雲輝とは天衣無縫の剣。某の知る限り遣い手は弐の太刀要らずの開祖唯一人。 逆に何故お主が其の極意にまで至れたか問いたいぐらいよ』 ――ひゅん、と空気を斬る音と共に、宙を漂う木の葉が両断される。 「カモノハシ、いえ、カモカイザーの声を聞いたの」 『鴨界座――カレイディアに棲む鴨嘴の変種か? 天啓……にしては、随分風変わりな相手から授かったものだな』 「バカにしてる」 『信じろという方が難しい』 ……それについては心の底から同意するけれど。 だけど、カモカイザーがわたしに力をくれたのは本当なのだから。 カレイディアの民では成し得ない奇跡。エトランジェの力。 「大丈夫よ、きっと近いうちに逢えるから」 反乱が進んで行けば、いずれ『彼女』はエトランジェを刺客に差し向けて来るだろう。 その刺客のなかには、必ずカモカイザーの身体も含まれているはずだ。 だから、カモカイザーの最後の想いに応えるためにも、わたしはもっと剣を磨く必要があった。 今は毫の剣だとしても、いずれは厘を極めて真の雲輝へと至れるように。 森に銀光が幾度も幾度も翻る。 天に棲む雷神が地に降りたかのように稲光が咲き乱れ。 かくて、カレイディアの夜は更けて行く―――。 |
||
今回の滞在 | ||||||
|
||||||
Message(Personal) | ||||||
|
||||||
Message(Linkage) | ||
|
||
Ability Setting | ||
|
||
Item Setting | ||||||
|
||||||
Skill Setting | ||
|
||
アイテム工房 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
Schedule | ||
|
||
Lvup | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レベルアップしました
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アイテム工房(支払&次回の予定) | ||||||||
|
||||||||
攻略の時間になりました!! | ||||||||||||
|
||||||||||||