「クレー！いつまで街をふらふらしているのさ！」

朝起きて、いつもは昼ぐらいまで寝ているはずのソラメロがやってきた。

「それは・・・」
「ボクはどーでもいいけどさー。みんな不安がってるよ！もー。ちゃんとしなよ！」

みんなには今後どうするのか、未だに伝えられないでいた。みんなが不安がるのも当然・・・だろう。

「そう・・・ね。ずっと考えていたのだけど、結論は変わりそうにないから・・・。みんなを呼んできてくれる？」
「しょーがないなあー。」

約1, 2ヶ月ほど共にしてきたエンブリオたちが、一同にあつまってきた。

「みんな、だいじな話をするわね。これからの話し。いまは一揆も解決して、エンブリオの研究も一段落したところ。だから、僕はまた別の世界に行って、別の魔法生物の研究をしようと思うの」

エンブリオたちのふーんという声やため息や、つばを飲む様子が伺える。

「でも、別の世界にみんなをつれていくことはできない。エンブリオ契約は解除して、お別れしなければならないわ。」

これまでの研究の旅でも、その世界の魔法生物はその世界に置いてきていた。だから、いつものことではある。魔法生物というものは、その世界の魔法体系・環境に依存するところも大きく、ある世界の魔法生物を別の世界に連れて行くことは推奨できない。魔法生物本人に悪影響が及ぼさない保証はないし、また世界そのものにも干渉してしまうおそれもあるからだ。ましてや、エンブリオは終末を招くもの・・・ネクターのない世界で、どのようになってしまうのか、想像する限り良い結果にはならないだろう。といったことを、エンブリオたちにも説明する。

「この世界で得たネクターやPS、アイテムは置いていくから、しばらく生活には困らないでしょう」

エンブリオ達の反応は・・・おもったより落ち着いていた。彼らも、わかってはいたのだろう。しょうがないな、という雰囲気だ。

「クレーさん、そういうのはいいんです。エンブリオとして生を受けた以上、また新しい契約者を探すだけです。でも・・・」
「・・・でも？」
「お別れパーティは盛大にやらないとですね！」

そうだそうだ！ごちそうだー！と声が上がる。そういえば、こういう子たちであった。なんだか、ちょっと重く考えていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

「そうね。ありがとう」

みんなに改めて、お礼を言った。

スズメが鳴いている。