何度、この炎に散ればいいの？

何度、絶望すれば？

何度、命を捧げれば。


何度、この翼を失えば、わたしは、どこか夢見た場所にゆけるのだろう。


夢見た場所、幸福のありか。
白くて、美しくて。
それはきっと、ここではない、どこかだ……


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その手をとれば墜ちることなど彼女はどこかわかっていた。頭の片隅のひんやりとした気持ちが。墜ちれば、なにかを失うことも。日の照りながら雨の降り、風は強く、薔薇色の海、オペラ座にかかる金色は空に溶け込んで。白のドレスがはためいている。
それでも。それでも、崖から落ちるとわかっちいても、アクセルを踏んでしまう時のように。その一瞬の高鳴りを。高鳴り。胸の鼓動。それを、ひとは何と呼ぶのか彼女は知らない。どこかにゆきたかった。何かに成りたかった。ただの身代わりの女 elle ではない、ただひとつの翼 aile に。

真っ白な羽の舞う、幸福に、どこか。
憧れていた。
そんな光景に。それの象徴するものに。
それも今では、鳥籠に閉じ込められた人形劇、箱庭の中を覗き込むようなものだと、どこか思っていても。
信じていた。


（恋をしてみたかったのだといったら、君は笑うだろうか）