暗い空の下、街から外れた広場に複数の人影が見えます。
宵闇の中、それぞれの人影の手には、それぞれの得物がありました。
広場の周囲には、篝火と呼ぶにはあまりに頼りない、小さな火種がぐるりと囲うように置かれています。

「……こんなので、本当に来るの？」

「間違いない、あれは本来そういうものなのだ」

適当に聞き流したかに見えた金髪の長耳少女が後方へと跳躍すると、
一瞬前まで少女の身体のあった空間を、黒い大きなトゲが貫きます。
広場にあった六人の人影は、それぞれの足下に同時に現れた魔力のトゲを、大体同じようにして避けるのでした。
その奇襲の攻撃を合図に、黒衣の魔女が手にした箒を掲げると、
ぼんっ！ という大きな音と共に、周囲の火種が燃え上がり、広場に居る者たちを照らし出します。

淡い金髪の長耳少女。
鈍色の鎧の隻眼の女騎士。
箒を掲げた黒衣の魔女。
聖書を手に微笑を浮かべた修道女。
長大な刀を携えた緋色の少女。
黒いフードで表情を隠した魔導士。

そして、その中央に、病的に白い少女が一人。
それはまるで感情の抜け落ちたような、能面のような表情でしたが、
無表情の中にも敵意が満ち満ちているようです。

「……篝火で照らしているとはいえ、この闇の中だ。
　今は逃げに徹しろ、時間を稼げれば、それでいい」

その言葉の通りに、迫り来る黒い棘の回避に徹し、時折散発的な攻撃を試みますが、
白い怪物少女は、腕を切り飛ばしても、首を刎ねても即座に再生してみせ、
物理的な攻撃は、そのことごとくが無意味であるということを知らしめているようです。

「……そろそろ……」

黒衣の魔女の、呟くようなその声を合図に、周囲の篝火が爆音と共に、凄まじい閃光を放ちます。
どうやら耐熱容器に封入されていた、なんらかの薬品に着火したのでしょう。
周囲は昼の太陽よりもずっと明るく、目も開けていられないほどの強烈な白い光は、僅かな影の存在すら許しません。
闇にその魔力のほとんどを依存していた白い怪物少女の隙を突き、
黒いフードの魔導士が、右腕を少女の胸へと突き立てます。

黒い粘液ともつかない何かを滴らせながら引き抜かれたその腕には、青い宝石のようなものが握られているのでした。

ついていけなくて困っているミオさんを見て、ちょっと反省した模様。

ゴー！と瞳に炎を燃やすアムル。
この子はキッチンに立ってからのテンションの高さは異常です。

歌いながら、自分とミオさんの前に、材料を並べていくアムル。
バニラ生地とココア生地の差はありますが、最初やることは同じです。

ミオさんと一緒にボウルをかき混ぜ、卵もちゃんと割ってもらって、うまくできなかったらしっかり欠片は取り除き。
同じことを目の前でやって憶えてもらおうという心づもりです。あとアムルもちょっと楽しくなってきてます。

ミオさんがボウルの中をかき混ぜると、ココアパウダーの入った生地はみるみるマダラから、茶色に変わります。
そのまま時間をかけてかき混ぜて、ぜんぶが同じぐらいの柔らかさになるのを待ってから生地の完成です。

できた二つの生地を、引き伸ばしてから大きな皿に入れて、そっと冷蔵庫に入れました。
クッキーを作るための大きなまな板や包丁、オーブンの準備をしながら、アムルはミオさんに話しかけます。

なんだかんだで管理人さんの許可を頂いて、無事にミオさんはタンポポ荘の住人になりました。
一揆が終わったあとは、このタンポポそうと一緒に別の世界に旅にでるようです。

そんなこんなで、冷蔵庫で冷やし終わって。

溶き卵を塗り終わったら、平べったくなった二つの生地をくっつけて、包丁でカットします。
さらに溶き卵を塗ってから、交互に生地をくっつけて、みるみるうちに生地は二本の棒のように。

（中略）

手巻き寿司みたくなったクッキー生地だったものを、木の板に乗せてミオさんの前に。
まずは自分で、ほどほどの厚さに薄くカットして見せます。

カットしたものの断面を見ると、それはちょうど、ミオさんも見たことのあるチェック模様のクッキーそのもの。
作り方が今ひとつわかりにくくても、クッキー生地が金太郎飴のように、中で市松模様になっていることは分かるはず。

魔法の秘密を打ち明けるみたいな嬉しそうな表情でミオさんにできあがったクッキーをつまんで見せます。
それをオーブンに入れるための鉄皿の上にちょこんと乗せると、アムルはオーブンに向かいました。

まだまだ、クッキー作りの一日ははじまったばかりなのでした。

そう言いナナシはオコジョの胴を掴んでミオへと差し出してみる。
当のオコジョはミョーーーーンと身体を伸ばし、ムスッとした顔で為すがままだ。

とぷっと泥に脚を突っ込んだような音が鳴った錯覚を覚える。
足が何かに沈み込みそこから足を上げようとしても下にひっぱられる力の方が強くずぶずぶと沈み込んでいってしまっているような気がする

ミオちゃんの捕食風景をにんまりと眺めている

そりゃそうだ

にやにやと余裕の態度で、伸ばされた指に抵抗もせずに手を差し出す。