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アルを捕食しようと差し向けた黒い棘を防がれて、白い少女が鬱陶しそうにメグの方を見遣ります。
そして、大鎌を振るい黒い棘、影の矢を放ちますが、メグへと向けられたそれは、
やはり形を成すことが出来ずに解けて消えていきます。
アルに向けて放たれたときには明確な攻撃の意志を持っていたことを考えると、
どうやらメグだけが、この影の矢から守られているようです。
白い少女の中の、ミオと呼ばれていた存在がそうさせているのでしょうか。

そして。

周囲に突き立てられた結晶、そこに乱反射する光に、魔力を帯びた影は白い少女の足下へと追いやられていきます。
浄化の光によって、影で繋がっていた黒い棘との接続が断たれ、それらは闇へと溶けて消えていきます。
周囲の闇は魔力を失い、通常の宵闇へと戻りつつあります。

それをさせまいと、白い少女は大鎌を薙ぎ払い、周囲の結晶を叩き折り、砕いていきます。
しかし、それらに気を取られた瞬間、自分へと迫る光の刃に気付き。

メグの本当の狙いを理解し、最期にそう短く叫んだのは、怪物だったのか、ミオと呼ばれた少女だったのか。


　+ + +


メグの狙い通りに怪物から切り飛ばされた何かが、少し離れた地面へと散らばります。
しかし、そこにミオと呼ばれた少女の姿は無く。
代わりにそこに在ったのは、黒い金属のフレームに収められた青い宝石と、小さな白い欠片。
多少の知識があれば、それが細かく砕けた骨片であることに気付くでしょう。

アルの考えは、あながち間違ったものではなく。
ただ、一つ、そこには大きな誤算があったのでした。

ミオという少女は、怪物に囚われていたわけではなく、
あの怪物のことを、ミオという少女の欠片が、辛うじて人の側に繋ぎ留めていたこと。
そして、その繋がりをたった今、断ち切ってしまったこと。

メグの背後で、人の姿を失いつつある異形の怪物が、青い目玉でぎょろりと見つめてきます。
制動を失った今、黒い棘を防ぐミオからの援護も、おそらくは期待できないでしょう。

謙遜しながらも少し嬉しそうにしているようにも見える。

ひょこっと、アスタルテの背後からまるで生えてきたのかのように帰ってきた！

微かに笑みながら。
キッチンから、熱い湯を注いだティーポットとカップ、それに焼き菓子を盛った皿を載せたトレイを運んでくる。

微笑を浮かべたまま、けれど、口元には何処か寂しさを湛えた表情で、ポットの中のお茶を見詰める。

そこで一旦言葉を切り、ポットからカップへとローズヒップのお茶を注いでいく。
それから「どうぞ」という言葉と共に、メグの前にそのカップを置いた。

丸まっていたアポルはむくりと起き上がると、伸びを一つ。
不満を言いながら、アルの方へと歩み寄っていく。

二匹の白い生き物たちをぼんやりと見ながら、アマリアは首を傾げた。

そこまで喋って少し、黙り