ミオの服が消えると同時に、真っ黒な水着のようなものが形成されます。

気を引き締めながら、周囲の力を吸収しようとするメリア鉱石の流れに乗せる様にして、自分の魔力を溶け込ませ、辿る。
やがて奥底にあるであろう本体――星喰いの魂に辿り着けば、挨拶も何も無く。魂を引き摺り出そうと試みる。
フィーグルにとっては、例えるならば見えざる手で心臓を鷲掴みにするような感覚。
相手にとっては、飲んでいた水が急激に意思を持って暴れ出したような不快感。

予想される魂の抵抗を、フィーグルは抑え込もうとする。
その拮抗に必要な力は魔力ではなく、純然たる意志の力と、その意志力をどれだけ抵抗力として発揮できるかの才能・適正である。

500年近い時を生きてきた魔王のそういったものに対する力と適正は、本職である死神程でないにせよ、際立って強い。

ただし、この一連の作業はあくまで魔法である。
掴み、引き上げるのはフィーグルの特性ではあるのだが、掴み引き上げる為の"手″を作り出しているのは、フィーグルの魔法である。
星喰いがそれを完全に妨害できるのであれば、抵抗をするまでもなく上記の作業そのものが行えないだろう。

思い出そうとする。

あたしが生きてる間には無理かもですけどね、と苦笑して。